1

「どんな子がタイプ?」
「付き合ったらどこ行きたい?」
そんなありきたりな話で盛り上がっていたところ、「でも中学校生活、とうとう彼女できそうにないなあ」なんて言うもんだから冗談混じりで断られても大丈夫なように聞いたのに、


「ほな俺と付き合うか?」

「それええなあ!白石なら楽しく過ごせそうや!」


思いがけないOKをもらってしまった。しまった、と言えば聞こえが悪いが内心、ほんまか?ほんまにええんか?と激しく動揺していた。叶うはずないと思っていた恋心が嘘でも実ったのだ。



「謙也」
「なんや?」

付き合っているのはなんとなく誰にも話していなくて、暗黙の了解で秘密のお付き合いをしている。

中学も終わりと言ってもエスカレーター式のせいか、特に部活の引退という決まりもなく受験モードもないためというか、まあ言い訳を並べたところでデートをしていないことには変わりはない。

つまりは、初デートをしたいのだ。

「次の日曜日暇か?」
「日曜日…おん、あいてんで!」
「ほな、デートせーへん?」
「せ、せやな」

デートという単語を出すと少し笑えるくらいに恥じらう彼が可愛くて、はよ日曜日にならんかなあと、うきうき気分でデートスポットの雑誌を買って帰った。

ヨガをして晩御飯を食べお風呂に入り宿題を終えてから雑誌をようやくめくる。
ユニバ絶対に楽しいけど、初デートはやっぱりちょっとオシャレなカフェでランチしたい。
付箋を貼ったり計画を立てていたものだからすっかり時間は遅くて「蔵ノ介はよ寝えや〜」と母から声がかかる。一通り読み終えると電気を消し、読んだばかりの内容を思い出しながら想像という名の妄想に胸を高まらせながらベッドへ入った。

新しいシューズ欲しい言うてたからショッピングモールに行って、最近できたちょっとレトロな雰囲気のサンドイッチが有名な店でランチして、それから…俺の家か謙也の家かな。
そこまで考えて思い出す。イグアナを飼っていて、それがまたべっぴんさんなんやーって自慢していたっけ。イグアナの名前はその時教えてもらえなかったが、これを口実に部屋に入れてもらえるかもしれない。

デートコースはこれで決まりや!

まさに完璧な初デートやと自画自賛したところで眠りについた。


next