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次の日。なんというか、こいつら付き合えば良いのにって思った。

「丸井」

「真田じゃん何?」

俺を訪ねてきたのは、珍しい客で真田だ。目線はあちこちに飛び何やら言いづらそうにしているので、ああ、なまえのことか、とすぐにわかった。でも俺から話すのもおかしなもんで彼が発するのをじっと待った。

「その、なんだ、彼女は元気かと思ってだな」

「彼女って誰だよぃ」

これは意地悪ではない、はずだ。いや、だってこれに「あーあいつね」って返す方がおかしいよな?

「その、みょうじのことなんだが……」

顔真っ赤にして恥ずかしそうに呼んだ名前はやっぱりなまえだった。

「あーうん元気、てか昨日あいつも真田元気してんのかって聞いてきたぞ」

えっという顔で見てきたので流れ的に聞いた。

「ケンカでもしたのか?」

「誤解されて迷惑をかけてはいけないと思ってだな」

なんて墓穴をほろうとしていく。おい真田、悪いことは言わないから俺以外になまえの話すんなよ、一瞬でバレるぞ。と助言できたらどれだけ良いか。なんとなく察しはつくけど一応聞いておく。

「誤解ってなんだよ」

「いや、良いんだ」

すまなかったと出ていく真田を見送って席へ戻ると、そこには仁王が座っていた。

「真田が来るとは珍しいのう」

「俺も思った」

「部活の事か?」

「プライベート」

その話を終わらせようとしている俺に気がついているだろうにじんわり探ってくる。いっそ何を話していたんだと聞かれた方がマシだ。

「ブンちゃん」

猫背の仁王が俺を見上げるようにじっと見てくる。

こいつは状況や感情を探る時にじっと見る癖がある。前はこんなことにも気がつかなかったのに、俺の中で仁王の存在が主張してくるようになった。

「なんだよ。それよりどけ、俺も座りたい」

しぶしぶ席をあけたかと思うとそのまま俺の机に座った。

「そこ机だから。それより何か用じゃねーの?」

「用がないとあかんのか、俺らの仲じゃろ」

「いや、どんな仲だよ!」

ここになまえがいたら絶対に楽しがっただろうな。でも今の仁王は想像したなまえより楽しそうで、ちょっと嬉しくなった。




「……何してんの」

「お帰りー」

帰れば今日もなまえが部屋にいてこれから始まる話が想像できてしまった。


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