あの時以来真田となまえの二人は顔を合わすことも少なくなったらしい。でもなまえはそんなこと気にしてない様子だ。今も目の前で寛いでいやがる。
「噂聞いたせいかな」
漫画を読んでいたと思ったらぽつりと漏らした。
「あ?」
「ブン太って仁王に愛されてるなって思う」
「はあ?!」
「自分でも思うでしょ?」
「…例えばそうだとして俺にどうしろって言うんだよ」
またその話かと思えば今度は愛されてるかよ。
「んー、そうだね。私はブン太が幸せなら良いと思う」
「お前はどうなんだよ」
「え?」
「気になる奴とかさ」
「私は今ブン太と仁王の行く末が気になってるよ」
「そうじゃなくて。てか何でそんなに仁王とくっつけたがるんだよぃ」
こいつって男同士の恋愛とか好きだっけ、と考えるが少女漫画大好きっ子だもんなと思い出す。じゃあなんでそんなに俺と仁王のことが気になってるんだ。
「目、かな」
「なに?」
「仁王の、ブン太を見る目が、愛しそうで、でもすごく寂しそうだから、かな」
「なんだよ、それ」
「仁王は、良い人だよ」
「そんなの…」
わかってる。仁王はああだから変な噂も多いし掴みどころない感じしてるけど、表にあまりださないだけで良い奴なのはわかっている。それは俺だけじゃなくてテニス部のみんながそうだ。
「真田君」
「え?」
「真田君は最近どうしてる?」
「どうって普通だけど」
ショックで落ち込んでいる、とは言えない。あいつが心配してたぞ、なんて伝えれたら少しは元気もでるかもしれない。でも真田はあれで隠してるつもりだろうし、いきなりそんな話をすれば動揺するかも。ちょっと見てみたい気もする。
「そっか、会う機会減ったからどうしてるかなと思ってね」
「気になるなら会いに行けば良いじゃん」
「会いに行くほどではないというか今思い出しただけというか」
俺はお前と真田の行く末が気になるわ。
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