ぶりの照り焼き−Zoro−
引きこもりたい。
部屋で一人で悶々としていたい。
でも、自分が作ったシステムがそれを許さない。
「紀土に合う魚。2品」
昨日の今日でまだサボともローともまともに顔を合わせていない。
スペースに居たら会ってしまう。
でも、変に避けるほうが後々面倒なことになりそうだとも感じる。
…いつも通り、キッチンに立とう。
私にできることはそれだけ。
今日の家事代行は料理中心のクライアントだった。
普段ならまずしない、具材を細かく刻む料理を選んだのは、たぶん何も考えたくなかったからだ。
刻んだ野菜は味付けの違う2種のスープと五目ごはんにしておいた。
部屋の感じから、クライアントも疲労がたまっている気がしたし、汁物が多いのはちょうどよかったと思う。
でも、今日はもっと作業に没頭したい気分。
明日の朝ごはん用に、同じようにスープを作ろう。
リクエストは定番、ブリの照り焼き。
会わない日本酒なんてたぶんない。
あとは小松菜のナムルをつけよう。
で、料理しながら一緒に野菜を刻む。
スペースに帰ると、珍しくゾロが先に帰宅していた。
「あれ?早いね」
「あァ、今日半休でよ」
「へー、めずらしい」
「この前外で仕事した分の振替だかなんだか」
「ふーん。今から作るから30分くらいかかるけど」
「構わねぇ」
まずは魚の下ごしらえに塩を振って、その間に小松菜をレンチン、ごま油とジャコと塩で和える。
「これで飲んでて」
「おうサンキュ」
私の分も注いでくれようとするのを手で制して。
「今日はやめとく」
「珍しいな」
「この後たくさん包丁使うから危ないかなって」
ほんとうは、今日飲んだら、どうなるかわからないっていうのが大きいんだけど。
ぶりはお酒で洗ってから焼くのがおいしく仕上がるコツ。
焼き色を付けて、たれをかけながら煮詰めて、10分も煮れば完成。
ここまで20分、タイムは上々。
「300円と材料代お願いします!」
「あァ」
料理分の300円は豚の貯金箱へ。
1カ月も経てば福沢氏一人分くらいの重量になったりする。
「さ、明日の朝の準備をしましょうか」
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