わらび餅@−Zoro−




「それで後輩女子の運転する車乗ったんだけど、恥ずかしくてずっと屈んでたってワケ」
「へー、エースってそういうの気にするんだね」
「普通気にするだろ」
「ねえ、サボは女の子の運転する車に乗るのダメなタイプ?」
「あー…俺は正直どっちでもいい」
「おいおいマジか」
「ゾロは嫌がりそうだねー」
「わかってんじゃねえか」
「なー、やっぱそうだよな!」

次の日のスペース、みんなが帰ってくる前の時間。

「ねぇゾロ」
「あ?」
「次の土曜日あいてる?」
「あァ、用事はねえな」
「大会のお祝いにいいとこ連れてってあげる」
「イイとこ?」
「ふふふ、行ってからのお楽しみ」

本当は私の運転で連れて行くことを想定してたけど、電車移動にした。
ここは相手のプライドを立てよう。

ゾロを連れてきたのは足湯だった。

「いいでしょ、ここ」
「こんなとこあったんだな」
「あんまり知られてないんだよね」



「マナさん」
「お久しぶりです、支配人さん」

支配人が声をかけてきた。

「いつ以来でしょうか」
「そうですね、3年ぶりくらいかもしれません」
「…大人の女性になられましたね」
「さあ、どうでしょうか」

髪の色が変わっていることに、時の流れを思い知る。

「そちらの方は?」
「…友人です」
「そうですか、こんにちは」
「…どうも」

ここの足湯は、料金はさほど高くはないのだが、紹介がないと利用できない仕組みになっている。
そのせいか、他の利用客も穏やかで静かに利用している人が多い。
軽食やお菓子も用意してあって、とくに支配人の作るわらび餅は絶品だった。
足湯をひとしきり堪能したあとに。

「ゾロ、おなかすかない?」
「あァ、結構空いてきた」
「実はお弁当を持ってきましたー」
「お、マジか」

ゾロは口の端を上げただけだったけど、たぶん見た目より喜んでいると思う。
私がローにお弁当を作っているのを、ものすごく意識しているのには気づいていた。
絶対に本人からは言い出さなかったけれど。

「ん、うまい」
「ふふ、ありがと」

あのお弁当は食事のお礼で、今は雇用契約みたいなものだよ、
ローと私の関係性がどうこうしたわけじゃないんだよって、説明しておきたいのだけど。
でも自分から言うのもはばかられるし、ゾロも聞いては来ないから。
なんとなく、なあなあのまま今まで来てしまった。



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