オランジェット−Zoro−




今日は珍しく、ゾロが飲んでいる間に眠ってしまった。
いつもと逆のパターンで驚く。

「ゾロ、起きて」
「…あァ?」
「私じゃ部屋に連れていけないよ」
「…寝ちまってたか」
「疲れてる?」
「いや、そうじゃねェが」

一つ大きなあくび。

「大会が近いんでな」
「剣道の?」
「ほかに何があんだよ」
「それもそうか」

どうりで帰ってくるのも遅いと思った。

「いつあるの?」
「来週の土日だ」
「へー、見てみたい!」

いつもスペースでお酒飲んでるゾロしか知らないから、興味がある。

というか、出来ればみんなの職場を見て回りたいくらいだ。
ローとかサンジくんならわりと容易に見に行けるかもしれないけど。
ロビンも聴講とかできれば可能かも。

「確か一般客も見に来られるはずだ」
「あっじゃあチケットとかあったら確保しておいてほしいな」
「わかった」



「この間、どうだった?」

オランジェットを口に運びながら、ビビが首をかしげる。

「なにが?」
「ミスターブシドーの大会、見に行ったんでしょ?」
「ああ、それね」

…かっこよかった。

ピリピリした会場の空気も、選手たちの奇声も、異世界だった。
その中で、ゾロが光って見えた。

「ゾロってすごいんだなーって思ったよ」
「ふふふ、そう」
「当たり前みたいに勝ち進むからびっくりしちゃった」

決勝で勝った後、面をとって、こっちを見上げたゾロと目が合った。
すごいね、と思いながら笑いかけたら、ゾロもいつもみたいに口の端を上げた。

たったそれだけの瞬間だったのだけど、あの空気の中ではものすごく濃密な記憶として刻印された。

「日本で一番剣道が強い人ってことよね」
「そうだね、毎日訓練してるだけあるんだなって」
「そんな人が近くに住んでくれてるなら安心だわ」
「ふふ、そうだね」
「それで、どうなの?」
「…え?」
「大会を見に行くくらいなんだから、もしかして?」
「…うーん、」

他の人にキスされちゃったりしていますけど。


でも。


もし、ゾロとずっと一緒に居たら。
ああいう瞬間がいくつもできるんだろうか。

行き過ぎた妄想に軽く頭を振る。
私はどうしてサボと付き合うのはイメージできないのに、
ゾロと向き合うのはこんなに簡単にイメージしているんだろう。

思えばかなり最初のうちから、もしこの人と付き合ったらって想像していたように思う。
自分の自意識過剰さに心の中で苦笑いを浮かべていた。




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