オランジェット−Zoro−
今日は珍しく、ゾロが飲んでいる間に眠ってしまった。
いつもと逆のパターンで驚く。
「ゾロ、起きて」
「…あァ?」
「私じゃ部屋に連れていけないよ」
「…寝ちまってたか」
「疲れてる?」
「いや、そうじゃねェが」
一つ大きなあくび。
「大会が近いんでな」
「剣道の?」
「ほかに何があんだよ」
「それもそうか」
どうりで帰ってくるのも遅いと思った。
「いつあるの?」
「来週の土日だ」
「へー、見てみたい!」
いつもスペースでお酒飲んでるゾロしか知らないから、興味がある。
というか、出来ればみんなの職場を見て回りたいくらいだ。
ローとかサンジくんならわりと容易に見に行けるかもしれないけど。
ロビンも聴講とかできれば可能かも。
「確か一般客も見に来られるはずだ」
「あっじゃあチケットとかあったら確保しておいてほしいな」
「わかった」
*
「この間、どうだった?」
オランジェットを口に運びながら、ビビが首をかしげる。
「なにが?」
「ミスターブシドーの大会、見に行ったんでしょ?」
「ああ、それね」
…かっこよかった。
ピリピリした会場の空気も、選手たちの奇声も、異世界だった。
その中で、ゾロが光って見えた。
「ゾロってすごいんだなーって思ったよ」
「ふふふ、そう」
「当たり前みたいに勝ち進むからびっくりしちゃった」
決勝で勝った後、面をとって、こっちを見上げたゾロと目が合った。
すごいね、と思いながら笑いかけたら、ゾロもいつもみたいに口の端を上げた。
たったそれだけの瞬間だったのだけど、あの空気の中ではものすごく濃密な記憶として刻印された。
「日本で一番剣道が強い人ってことよね」
「そうだね、毎日訓練してるだけあるんだなって」
「そんな人が近くに住んでくれてるなら安心だわ」
「ふふ、そうだね」
「それで、どうなの?」
「…え?」
「大会を見に行くくらいなんだから、もしかして?」
「…うーん、」
他の人にキスされちゃったりしていますけど。
でも。
もし、ゾロとずっと一緒に居たら。
ああいう瞬間がいくつもできるんだろうか。
行き過ぎた妄想に軽く頭を振る。
私はどうしてサボと付き合うのはイメージできないのに、
ゾロと向き合うのはこんなに簡単にイメージしているんだろう。
思えばかなり最初のうちから、もしこの人と付き合ったらって想像していたように思う。
自分の自意識過剰さに心の中で苦笑いを浮かべていた。
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