チーズオムレツA


コーヒーを淹れ忘れたことに気づいた瞬間に、お父さんが自分でコーヒーを淹れ始めた。

「コーヒー忘れてた」
「いいんだ、たまに自分で入れると色々発見がある」

私はまだカフェオレにしないと飲めないけど、甘くして飲むのは好き。
テーブルに出したワンプレートに手を付けながらお父さんが話しかけてくる。

「学校どうだ」
「なにもないよ。あ、でも、こないだクーラー壊れてすごい暑い日あった」
「そうか、今週暑かったもんな」
「うん、男子たくさん汗かいて大変そうだったよ」
「それは臭かっただろう」
「んーん、男子たちも汗拭きシートとか使ってるもん、ミントの香りとか」
「…男がか」
「うん」
「俺達の時代とは変わったんだなァ」

お父さんが時計を見上げて、コーヒーを飲み切って、お皿を下げてくる。
この人社長なのに、ちゃんとお皿は下げるんだよなあ、すごいよなあ、と考える。
それに比べて。

「…はよー」
「おおシャンクス、起きてたのか」
「奇跡的な早起きだね」
「やー今日あっちーなー」
「先に行くから、今日は10時の会議遅れるなよ」
「おう、りょーかい」

お父さんを玄関まで見送って、振り返る。

「シャンクス、昨日ウイスキー飲んだでしょ」
「あ?あァ」
「片づけ忘れてたよ」
「お?しまってなかったか?」
「でも夕飯は忘れてなかったから70点!」
「合格点だな」
「そうじゃないけど」

出来立てのオムレツのほうをシャンクスに。
でも、すんなりと交換させられる。
なんだかんだ、私は家族に甘やかされてる。

「で?あの件どうなった?」
「あの件?」
「告られたやつ」
「え、振っておしまい」
「後日談とかねえの」
「ないない」
「試しに付き合ってみれば良かったんじゃねえの」
「好きになれそうにない人と付き合うのって時間の無駄じゃない?」
「…急に大人の女みたいなこと言うな」
「大人だもーん、もう結婚できますよーだ」
「あーはいはいそうですか」

私から見るとだらしない兄だけど、
このだらしない兄が世のお姉さん方に人気があるのも知っている。

「ねえ、シャンクスは?」
「あ?」
「告られたりするでしょ?試しに付き合わないの?」
「あァ…時間の無駄だから」
「ぷっ、あはは、だよね」

誰か好きな人でもいるんだろうか。

「いつかシャンクスが結婚するってなったら、私にお姉さんができるんだねえ」
「…まあそうなるな」
「そのころには一人暮らししてるかもだけど」

そしたらこのおうちの家事はその人がするのかな。
前みたいにお手伝いさん雇う方がありそうだけど。

「ま、オレはたぶん結婚しねえよ」
「なんで?」

シャンクスは何にも言わないで、に、と笑った。


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