とても短い話
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獣の懐*孫堅
夢主の友人視点
飛び込むのは業火のごとき赤。鮮烈で、見る者の目を焼かんとするほどに強く、眩く、それを羽織る者の稚さとは到底不釣り合いな赤。綾織の衣には大胆にも金糸の牡丹と獅子、竹と虎が刺繍されており、髪を白い真珠の簪で彩る彼女は、くるくると表情を変えて楽しげな笑みを転がしている。
「それ、どうしたの?」
竹で作られた包みの上には、今しがた持ってこられた蓮蓉包が幾つか乗っている。白い湯気が良い香りと共に立ち上り、鼻先を掠めて食欲をくすぐる。手のひらに収まる程度の大きさに作られたそれに伸ばされた指がぴたりと止まり、磨かれた水晶のごとき瞳がくるりと上がる。丸められた瞳が喜色を浮かべて細められ、頬がうっすら上気した。
「文台様からいただいたの。お前に似合うからってわざわざ織らせたんですって」
幸福を包んで微笑む彼女は、果たして真髄まで見通せているのか。胸中に湧いた疑念はけれど音にせず潰した。白天の陽光を受けて煌びやかに輝く美しき衣。一つ動く度に小石が擦れる音が立ち、髪を彩る数々の石たちが揺れている。紅く塗られた口唇へと蓮蓉包が運ばれ、白い歯を突き立てる。今居る茶屋の有様と変容を、彼女は気づいているのだろうか。市井の民たちがゆくりなく立ち寄り、談笑に花を咲かせて酒を呷る素朴な店だったのが、今や立派な朱色の門構えを設け、通うのは身なりを正した官吏や役人ばかり。彼女が食べている蓮蓉包もそうだ。以前はこうも頻繁に出されなかった品。それが、足を向ける都度に用意されている。―――牡丹と獅子、竹と虎。獣の歯牙にかけられる前に摘み取るが吉か、と一時は思いもした。しかし時は遅かった。美しき華は、既に獣の懐に抱え込まれてしまっていたのだ。
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