とても短い話
1000文字に満たない話、ネタなどを置いています。
名前変換はありません。

僕の世界と君の世界は、全くの別物なんだよ。*郭嘉
一目見た時、体の中心が激しく熱を持った。あれほどの体験は後にも先にもなく、日を重ねるにつれて残熱は一向に引かず、まるで火傷したみたいだった。思い出すだけでぶり返す激情を恋と呼ぶなら、まさしく自分は彼に恋していた。父の顔と伝手を辿り、再会に漕ぎ着けた際。
「あなたは可愛らしい女性だね。夢に抱かれているような、ささやかな無垢を秘めた方だ」
綻ぶような笑みで、優しい眼差しで、彼は言外に線を引いてみせた。どうすれば同じ目線に立てるのかを考えて考えて、出した答えが彼の政敵に与することだった。ちょうど哥哥と父が今後のことで揉めていたし、哥哥が手を組もうとしていた相手だったので同盟を持ちかけるに違和感はなく、立て板に水を流すように話は進み、婚姻を終える。大丈夫、体を渡してもこの心は彼だけのためにある。そう言い聞かせてついにこの日が来た。
「私たちの出会いを覚えておいででしょうか、郭嘉様。私は片時も忘れたことはございません。あなたのお声、お顔、立ち居振る舞い、僅かな仕草さえも珠玉のように抱え込んでおりました。あなたは唯一無二の方。あなたに見初められるがため、そしてその胸襟に秘めたる想いを理解せんがため、私は行動を起こしました。ねえ、郭嘉様。今ならあの時と違うお言葉をくださいますか?」
雪のように白いかんばせは、初めて苦しげに歪められた。
アンケのお返しです。
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