期待されて嬉しい、とか/ななたい
嫌いになれたら良かった。
「そうですね……、では太子くんにお願いしましょうか」
「なんで私に」
「そーっすよ! 七緒先輩っ、俺頑張りますよ!」
「一六くんは何となく予想がつくので今回はいいです」
「がーん……」
しおしおと落ち込む道後をテキトーに宥めながら、和倉は万座に向かって微笑む。愉しそうに。信頼しているような顔で。
「期待していますよ、太子くん」
万座は手のひらをぐっと握り締め、僅かに俯いた。
微笑まれる度、心が【あの冬】に戻ってしまうような、そんな感覚に襲われる。いっそ嫌いになれたらと色々回り道もしたけれど、結局嫌いになんかなれずじまいだ。
「判りました。……目に物見せてやりますよ」
「おや、それは楽しみですね」
ささやかな反抗を見せても和倉は揺らぎやしなくて、嗚呼今日も勝てねぇのかとぐったりしている。
2020,Dec,2