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酷い男/ちろなな

 七緒先輩、と呼ぶ声。明るく、元気で、それでいて愛おしげに聞こえる、声。
「なぁ太子太子太子〜!」
「うるさい、連呼するな」
 ――本当は判っている。彼の声に違いはないことを。僕が勝手に意味をつけているだけだということを。
「酷い男ですよ、君は」
 そうやって、今日も彼に一方的な罪を負わせる。

2022,Sep,6

冬の日、帰り道、階段の真ん中/ちろなな

 ――夕暮れ時。
 白い頬が沈みゆく陽と寒さに晒され、赤くなっていた。その姿が普段より少しだけ子供っぽく見えて、堪らない気持ちになる。
 迷って迷って、迷った挙句にそろ、と手を繋いでみせると、彼の頬に別の赤がほわりと広がったのが判った。

2022,Jul,27

君が一番似合ってる/ちろなな

 昼ご飯でも作ろうと台所に立った時、ふと今日の服が白いシャツなのに気づいた。シミになったらまずいのは確かだが、生憎自分のエプロンは洗濯機の中である。
「……一六くん、お借りしますね」
 朝出勤していった道後にそっと断りを入れてから、エプロンをさっとつけた。少し丈の短いピンク色を眺め、似合わなさに苦笑する。やっぱり、これは道後の色だ。
 帰ってくるなりいそいそとエプロンを着ける姿を思い出し、和倉はそっと瞳をゆるめた。

2021,Nov,15

期待されて嬉しい、とか/ななたい

 嫌いになれたら良かった。
「そうですね……、では太子くんにお願いしましょうか」
「なんで私に」
「そーっすよ! 七緒先輩っ、俺頑張りますよ!」
「一六くんは何となく予想がつくので今回はいいです」
「がーん……」
 しおしおと落ち込む道後をテキトーに宥めながら、和倉は万座に向かって微笑む。愉しそうに。信頼しているような顔で。
「期待していますよ、太子くん」
 万座は手のひらをぐっと握り締め、僅かに俯いた。
 微笑まれる度、心が【あの冬】に戻ってしまうような、そんな感覚に襲われる。いっそ嫌いになれたらと色々回り道もしたけれど、結局嫌いになんかなれずじまいだ。
「判りました。……目に物見せてやりますよ」
「おや、それは楽しみですね」
 ささやかな反抗を見せても和倉は揺らぎやしなくて、嗚呼今日も勝てねぇのかとぐったりしている。

2020,Dec,2

魔法、或いは言霊/ちろなな

 七緒先輩の「大丈夫」は魔法だ。

「大丈夫ですよ、一六くん。努力は案外報われるものです」

 そう言いながら俺の頭をぽんぽんしてくれるだけで、そんな気がしちゃうから。


 一六くんの「大丈夫」は魔法だ。

「七緒先輩っ、大丈夫です。先輩がすげーってこと、俺がいっちばん知ってるんで!」

 君がそう言って笑うだけで、全ての苦労が報われるように思えるから。

2020,Nov,15

あまりの寒さにコタツから出られず、どちらが新しいお茶を淹れてくるかで本気のじゃんけんを始めるうなたい

「こういう時は『いいよ』って言わないんですね」
 じとっとした目を向けられ、宇奈月はそりゃねと笑った。温かいお茶のおかわりがほしいのも、温かいお茶で温めてあげたいのも事実だけど、自分が寒い思いをしたくないのもまた事実だから。
「よし、じゃあいくよ、」
 右手同士の勝敗は、果たして。

2019,Aug,29

あまりに暇すぎて適当にしりとりを始めるも、すぐに「ん」を出してしまいやり直し→また「ん」が出てやり直し、を繰り返した結果、何だか笑えてきて最終的に爆笑に包まれるちろなな

 しりとりなんて何年ぶりだろう、と思いながら「しりとり」と始めてあげることにした。わくわくした顔の道後は、元気よく「林間学園!」と返して……ってちょっと待て。
「はい、おしまい」
「えっ、あっちょっ、もう一回だけ! えっとえっとえっと……リングイン! ……あーー!」
「……くくっ……」

2019,Aug,29

物仕掛けと色仕掛け/ちろなな

 寄木細工の箱を差し出すと、道後は予想通りに首を傾げた。
「これ、決まった位置を動かすと開くんです」
「へー!」
 箱を眺める道後に微笑むと、和倉は背中から腕を回した。跳ねた肩には気づかないふりをして仕掛けを動かしていく。
「あと君の指の下」
「!」
 指に触れると、判りやすく耳が染まった。

2019,May,19

「はらはらと落ちた」で始まり、「秘密を分け合った」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば8ツイート(1120字程度)でお願いします。/ちろなな

はらはらと落ちた葉が、道後の視界を一瞬だけ奪った。反射的に目を瞑ってから、怖々と開く。
「えっ」
さっきまで誰もいなかったその場所に和倉が立っていて、思わず妙な反応をしてしまった。が、すぐに嬉しさが全身を巡って、飛びつかんばかりの勢いで近寄った。
「七緒先輩っ! 何してんすか?」

「いちろ、くん」
大きく見開いた瞳から、きらきらと涙が零れているのが見えて、道後の頭に衝撃が奔った。それは和倉も同じだったようで、ばっと腕で顔を覆った。普段ならやらないような、あまり冷静ではなさそうな動作だった。
「七緒先輩っ、何で!」
「見ないでください! 大丈夫、ですから」

珍しい大声に含まれた拒絶に、道後は一瞬だけ怯んだ。七緒先輩が大丈夫って言うなら大丈夫なんだ。目にゴミが入ったとか、そういうことなんだ。――そう思おうとすれば、そうも考えられるんだろうけど。
道後は制止を聞かずに、和倉へ一歩近づく。昔、母親からやってもらった「魔法」を思い出した。

「来ないで、」
「ごめんなさい、無理です」
だって七緒先輩、泣いてるじゃないですか。
そう言うと、自分より高い位置にある頭に、そっと触れた。宥めるように撫でると、和倉がびくりと震えた。
「……何があったかとか聞いていいか判らないですけど、でも、俺、七緒先輩が泣いてるのやです」

このくらいの力加減でいいのか、少しだけ迷いながら撫でていると、和倉が諦めたように息をついた。徐々に美しい瞳の縁に雫が集まって、やがて堪えきれずに落ちた。あとからあとから落ちてくる雨を拭わない彼と、拭うこともできないまま、傍にいる自分が、世界から切り離されたような錯覚に陥った。

どれくらいそうしていただろう。顔をあげた和倉は、まだ赤みの残る目で微笑んだ。
「すみません、格好悪いところをお見せして」
「全然! カッコ悪くなんてなかったです! 寧ろ何かすげー、きれーで……」
「綺麗、ですか?」
ふ、とからかうような響きを感じて、道後は自分が何を口走ったか理解した。

「あの、別にそういう意味じゃなくて! 七緒先輩きれーだなっていうのは割といつも思ってて、きらきらーってしててカッコいいというか!」
「……そう、ですか……くくっ」
「……あ、あれあれあれ!?」
何の弁解にも誤魔化しにもなっていないことに漸く気づいて、顔中にぼぼっと火が点く。

でも和倉が笑っているのを見て、嬉しさが勝ってきた。思わずにこにこしていたら「照れたり笑ったり忙しいですね」と笑われた。
「あぁ、僕が泣いていたことは、……二人の秘密、ですからね?」
「は、はいっ!」
そっと囁かれ、胸がどきどきした。目と目を交わすと二人で、秘密を分け合った。

2018,Aug,13

ちろに「和倉七緒」であいうえお作文してもらった/ちろ

ちろ〜、「和倉七緒」であいうえお作文して〜

「えっ!?

わ……和傘似合ってて
く……空気感もかっこよくて
ら……楽になんでもやっちゃうとこ
な……何か憧れます
な……七緒先輩かっこいいです!
お……俺のこといつまでも見ててください!

どうだ! ……あれ、七緒先輩、いつからそこいたんすか!?」

2018,Jul,11


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