「はらはらと落ちた」で始まり、「秘密を分け合った」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば8ツイート(1120字程度)でお願いします。/ちろなな
はらはらと落ちた葉が、道後の視界を一瞬だけ奪った。反射的に目を瞑ってから、怖々と開く。
「えっ」
さっきまで誰もいなかったその場所に和倉が立っていて、思わず妙な反応をしてしまった。が、すぐに嬉しさが全身を巡って、飛びつかんばかりの勢いで近寄った。
「七緒先輩っ! 何してんすか?」
「いちろ、くん」
大きく見開いた瞳から、きらきらと涙が零れているのが見えて、道後の頭に衝撃が奔った。それは和倉も同じだったようで、ばっと腕で顔を覆った。普段ならやらないような、あまり冷静ではなさそうな動作だった。
「七緒先輩っ、何で!」
「見ないでください! 大丈夫、ですから」
珍しい大声に含まれた拒絶に、道後は一瞬だけ怯んだ。七緒先輩が大丈夫って言うなら大丈夫なんだ。目にゴミが入ったとか、そういうことなんだ。――そう思おうとすれば、そうも考えられるんだろうけど。
道後は制止を聞かずに、和倉へ一歩近づく。昔、母親からやってもらった「魔法」を思い出した。
「来ないで、」
「ごめんなさい、無理です」
だって七緒先輩、泣いてるじゃないですか。
そう言うと、自分より高い位置にある頭に、そっと触れた。宥めるように撫でると、和倉がびくりと震えた。
「……何があったかとか聞いていいか判らないですけど、でも、俺、七緒先輩が泣いてるのやです」
このくらいの力加減でいいのか、少しだけ迷いながら撫でていると、和倉が諦めたように息をついた。徐々に美しい瞳の縁に雫が集まって、やがて堪えきれずに落ちた。あとからあとから落ちてくる雨を拭わない彼と、拭うこともできないまま、傍にいる自分が、世界から切り離されたような錯覚に陥った。
どれくらいそうしていただろう。顔をあげた和倉は、まだ赤みの残る目で微笑んだ。
「すみません、格好悪いところをお見せして」
「全然! カッコ悪くなんてなかったです! 寧ろ何かすげー、きれーで……」
「綺麗、ですか?」
ふ、とからかうような響きを感じて、道後は自分が何を口走ったか理解した。
「あの、別にそういう意味じゃなくて! 七緒先輩きれーだなっていうのは割といつも思ってて、きらきらーってしててカッコいいというか!」
「……そう、ですか……くくっ」
「……あ、あれあれあれ!?」
何の弁解にも誤魔化しにもなっていないことに漸く気づいて、顔中にぼぼっと火が点く。
でも和倉が笑っているのを見て、嬉しさが勝ってきた。思わずにこにこしていたら「照れたり笑ったり忙しいですね」と笑われた。
「あぁ、僕が泣いていたことは、……二人の秘密、ですからね?」
「は、はいっ!」
そっと囁かれ、胸がどきどきした。目と目を交わすと二人で、秘密を分け合った。
2018,Aug,13