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手に取れる幸福/独歩

 クリスマスイブ。聖夜だったらしい。弊社には、俺には関係ないけど。
 繰り返される残業は勿論今日も繰り返され、気づけばクリスマス当日に突入していた。疲労困憊を通り越し生ける屍になりながらも、独歩はどうにか帰宅した。玄関から見える部屋は暗く、恋人が既に眠っていることは一目瞭然だった。吐く気はなくとも零れ漏れていくため息を吐きながら、リビングを通過する。
「……ん?」
 途中、テーブルに何か置かれているのに気づいた。可愛らしくラッピングされたそれを拾い上げると、括られたメッセージカードが目に止まる。
《メリークリスマス!
 頑張り屋さんの独歩くんには、サンタさんからプレゼントじゃ!》
「……っ、ははっ……。なんだよ、『じゃ』って。おじいさんのつもりか。そうか、サンタのおじさんだもんな。……ははっ」
 おじいさんの割に可愛らしい字を眺め、独歩は自然と笑っていた。プレゼントを開けるのが楽しみで、でも開けるのが勿体なくて、そんなことを悩めるのが幸せで。ふ、と吐いた息に、さっきまで漂っていた陰鬱さは消えていた。

2022,Jan,5


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