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ほしかったもの/一郎

「ん」
「ん?」
 荷物の詰まった段ボール箱を置き、一郎は差し出された何かを受け取った。包装紙をいつもより少しだけ丁寧に開くと、そこには赤色のエプロンが納まっていた。
 思わず目をぱちぱちさせる一郎に、彼女はふはっと笑みを零した。
「そんな訳判らないって顔しなくても。普通に引っ越し祝いだよ」
「普通にって何だよ」
「いいでしょ。それ着けてさ、二郎と三郎くんに沢山ご飯作ってあげてほしいなぁって」
 軽く渡された言葉に、胸がじん、と熱を帯びた。そうか、これからは俺があいつらのメシ作んのか。作って、やれるのか――。
「……ありがとな。使わしてもらうわ」
 目元にぐっと力を込めて笑うと、彼女は見透かしたように「ん」と頷いた。

2021,Nov,15


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