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美味しいは正義!/一郎

 鍵の開く音がしたのに、入ってくる気配がないのが気になった。
 一郎が玄関を覗くと、確かに彼女の背中が見えた――けれど、動き出す気配はない。沈んでいるように、見える。
「お帰り」
「……ただいま」
「ん。お疲れ」
 ぽんぽんと頭を撫でると、彼女の瞳がぐしゃりと歪んだ。今にも涙を零しそうなのが辛くて、一郎はぐっと体を引き寄せた。
「今日も一日、よく頑張ったな。めちゃくちゃえらいじゃねぇか」
「えらく、ない……」
「えらいに決まってんだろ。今日の晩飯がただのハンバーグからチーハンに変わるくらいな!」
「ち、チーハン……! やった……!」
 さっきよりも随分明るくなった声音に、ほっと胸を撫で下ろす。一郎は彼女を解放すると、もう一度だけ頭を撫でた。
「そんじゃ、準備してくるから手ぇ洗ってこい。メシにするぞ」

2021,Feb,24


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