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ドンの元へ向かったレイヴンと別れ、ハルカ達はフレンに事情を話すべく騎士団の元へ向かう。皇帝候補のひとりであるエステルが居るにも拘わらず、騎士団はフレンへの接触をさせてはくれなかった。ハルカが、会わせて貰えないのならばせめて彼の妹が危機的状況にある事を伝えるよう言うと、ひとりの騎士が不愉快そうに彼女に尋ねた。何者か、と。
するとハルカは堂々と言ってのけた。
「フレン・シーフォの恋人で彼の妹の親友ですが、何か問題でも?」
今そんな事は関係ないだろう、とでも告げるような態度にエステル達も騎士達も驚きつつ絶句している。ひとり冷めた態度で急かす事でひとり騎士がフレンの元へ向かった。遠目で確認出来る彼は向かった騎士と話をしながらこちらを見ている。
エステル達は「フレン・シーフォの恋人」とはっきり言ってのけたハルカに話を聞きたいようでソワソワしていてわかり易い。しかし、ハルカ本人がイライラしているのも見るだけでわかり、尋ねられないでいた。
数名の騎士に指示を出し終えたフレンが走ってこちらへ来る。顔を緊張で染めた彼は、酷く焦った声色でハルカに言う。
「アイナに何かあったのか!?」
「ごめん、フレン。アイナが眠ってた所を連れて行かれた。紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)の連中だと思う」
「ハルカ、君に怪我は?」
「あったけど、エステルが治してくれたし今はそれ心配してる場合じゃない」
「そうだな。アイナを助けに行かないと……ユーリは?」
「無駄に格好付けながら先に行った。でもどこに向かったかわからなくて困ってるんだ」
「それなら心当たりがある。調査済みだ」
「助かる」
「いや、アイナのためだ。礼を言われるような事じゃないよ。すぐに向かう」
「騎士団の方はいいの?」
「指示はひと通り出した。それに、ドンが真相を伝えたから、みんな落ち着きを取り戻した。もう衝突の心配はないよ。ラゴウの身柄は部下が確保し、街の傭兵たちもユニオンが制圧した。後はバルボスだけだ。危険だからハルカはエステリーゼ様とここに居てくれ」
「嫌だね。少なくてもあたしは行くよ。ユーリにもそう約束した」
ふたりの会話に入っていいのか悩んでいる間に、ハルカはまるで自分だけでも行くみたいな言い方をする。それに慌てたエステルが利き手を高々と上げて宣言した。
「私も嫌です!それにひとりで行くなんて危険です!私達も一緒に行きます!ですよね、リタ」
「当たり前よ。アイナに手を出すようなやつ、けちょんけちょんにしてやるんだから!」
「ボ、ボクだって怒ってるんだから!アイナが心配だし、早く助けに行かないと!」
両手で拳を握りながらカロルも言う。一様に意志は固いし、行く行かないで議論している時間も惜しい。だが、フレンが騎士団の小隊長としてエステルを連れて行く事に難色を示している間に、レイヴンが合流して来た。
「おっさんも行くわ〜。ドンが、何がなんでもアイナちゃん助けて来ないとしばくって」
「どうせレイヴンだって最初っから一緒にくるつもりだったんでしょ。アイナの事心配してたもんね」
「いやん、少年にもバレてる。おっさん恥ずかしい」
そのやり取りに、ハルカは少し笑う。心が少し解れた気がして、そこでやっと自分が必要以上に焦り緊張していたのがわかった。
過度な焦りと緊張はよくない。急いては事を仕損じると昔の人は言った。その通りだとハルカは思う。だから焦らない。冷静に、冷静に。しかし急いで先に行ったユーリを追って、アイナを助けに行かなければ。
剣戟の音で耳が痛い。何度目かの銃声を響かせながら、ハルカは眉を寄せた。
ここは敵の本拠地と言える。紅の絆傭兵団の連中は、ハルカ達が倒しても次々と現れ、建物内に突入する事も未だ出来ずにいた。
こんな所にアイナが捕らわれていると思うと、ユーリがひとりで先に突入していると思うと、気が気ではなかった。ふたり共強いのはよく知っている。けれど多勢相手では体力が底を尽きてしまうのではないか。脳裏を横切る不安は消えてくれない。だが、あちらも無限に存在している訳ではないし、数には限りがある。
「はい、これで最後!」
リタが得意のファイアボールを放って吹き飛んだ敵の方向から、ユーリがいつもの調子でひょっこりと顔を出した。
「おっ、やってるな」
「じゃないよ、こんのイケメンロン毛!ひとりで格好付けやがって!」
思わずユーリに向かって一発銃を放ったのは悪くないのではないかとハルカは考えた。余裕な表情で避けられてしまったし。
「ユーリ、大丈夫ですか!?怪我はしてません?」
「なんともないって、心配しすぎ。お前らも、おとなしくしてろって言ったのに……フレン、仮にも小隊長が何やってんだ。止めろよ」
「行くか行かないかで議論する時間も惜しくてね。その方が安全だろう」
「そもそもお前達、どっから入ってきたんだよ」
「しょうがないじゃん、表の扉閉まってんだから」
「だからってなぁ……」
そう、カロルの言う通り表側の扉は硬く閉ざされていた。その上見張りなども居らず、開けようにもびくともしなかったので今居るこの場所まで回ってきたのだ。ユーリだけではない、アイナの事もある。選択肢はなかった。
するりと。突然ユーリが出てきたのと同じ場所から美女が現れた。長くとがった耳と、その後ろから延びる房状の長い髪のような何かが印象的な彼女は、白と青が基調の服で露出が多く、豊かな胸を惜し気もなく強調している。切れ長の目を細めてハルカ達ひとりひとりを確認していた。
そんな彼女の登場に気付いたレイヴンは酷く興奮した様子でユーリに掴みかかる。
「だ、誰だ、そのクリティアッ娘は?どこの姫様だ?」
「オレと一緒に捕まってたジュディス」
「こんにちは」
淑やかに微笑んだジュディスと呼ばれた女性に、カロルが元気に名乗ろうとしたその時だった。
上空から誰かが襲いかかってくる。あまりにも唐突で動けなかったハルカをフレンが庇いながら避けた。エステルも一緒だ。見るとカロルとリタはユーリが、レイヴンとジュディスは自力でなんとかしている。
立ち込める砂埃で姿がよく見えない。こちらが構えるよりも素早く、影は動いて再び襲いかかってきた。武器と武器がぶつかる音がする。視界が晴れてきた。
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ほたるび