サイダーの逢瀬

 2限目と3限目の間にある少しだけ長い休み時間。茜は友人である真白と共に渡り廊下にある自販機コーナーにいた。
「アカネちゃん、最近彼女ちゃんとどう〜?」
「...別に普通だけど」
「つまんない!もっとこうあるじゃん!キスした〜とか...あ!もしかして...もうヤっ「ノーコメント」早っ!ねえどっち?!」
「それより自分の心配した方がいいんじゃねぇの、泣かされたって3組の山田さん泣いてたぞ」
「いや、あの子は自分で勝手に言ってるだけ」
 こないだは山田さん可愛いって言ってたくせに。

 友人の遊び具合に少し呆れながら自販機に小銭を入れる。ガコン、と危うい音を立てながら入口から手に取った飲み物は自分が欲しかった物とは違っていた。
「は?」
「ん?どったのアカネちゃん...あれ?お前いつもそれ飲んでたっけ?」
「いや...間違えた」
「へ〜、珍し」
 茜の手には茶色い、いかにも人工です!っていう甘さが特徴の世界的に有名な炭酸飲料のペットボトルが握られていた。どうやらボタンを押し間違えたらしい。ちなみにこの飲み物は、茜ではなく茜の彼女であるつぐみの好きな飲み物である。よく彼女と自販機に来ると買ってとねだられて買ってやるのを茜は思い出した。
 ちなみにそのつぐみとはここ2週間程顔を合わせていない。会おうと思えば会えるはずなのだが、バタバタしていて1つ下の階にすら寄れていない。

 これどうすっかな...と手にしたペットボトルを見ながら思っていれば、遠くから話し声。やがてそれらが近づいて来ると、聞き慣れた愛しい彼女の声が聞こえた。
「うわ、なんでいんの」
「あれ〜つぐみちゃんじゃん」
「あ、真白さんもいたんだ」
「居たよ、目立つっしょ俺!」
「チャラすぎてやばいですね」
「ちょ、雲雀くん辛辣すぎない?!」
 お気に入りのピンク色のベストと短いスカート。最近はルーズソックスにハマっているらしく、よく履いて来ては先生に怒られているようだ。隣には彼女の友人である雲雀が立っていた。2人でどうやら飲み物を買いに来たようだ。なんで男と二人で来ているのか、と少しだけ茜は腹立たしく思った。
「アンタもコーラ飲むの?」
「いや、飲まねぇけど」
「じゃあなんで手に持ってんの」
 変な奴、と言いながら彼女は自販機に小銭を入れてどれにするか悩んでいた。
 久々(たかが2週間、されど2週間)に見た彼女はやはり可愛いし愛しいし、ここが人前じゃなければ今すぐ思いっきり抱きしめたい衝動に茜は駆られていた。
 小さい背中の後ろから自販機を覗き込み、自分が欲しかった飲み物のボタンを押す。目の前からは抗議の声が聞こえるため、間違えて手に取ってしまった彼女の好物を頭の上に乗せてやった。
「やる」
「はぁ?!」
「交換、ってことで」
「...じゃあ仕方なく貰ってやる!」
「ドーゾ」
 茜は彼女の横に並び、ほんの数秒だけ彼女の腰に腕を回す。寄り添った小さい体の体温が暖かく、思わず少し強めに腰を抱き寄せる。
「...茜」
「なに」
「今日家遊び行っていい?」
「誘ってんの?」
「〜〜〜っ!このバカ!アホ!スケベ!変態!」
「嘘だって」
「もう行かない」
「来て」
「...コンビニスイーツ」
「好きなのなんでも買ってやる」
「え!じゃあ行く」
「...チョロ」
 少しだけのつもりが結構抱きしめていたらしい。友人の「人前でいちゃつくのやめてもらえますー?!」の声で我に返った。
「放課後、迎えに行くから」
「...分かった」
 じゃあな、と茜は自分よりもうんと小さい彼女の頭を優しく触った。つぐみは髪が崩れる!と怒っていたが、耳がすこしだけ赤いのを彼は見逃さなかった。

「はやく放課後になればいいのに」
「あんま無理させんなよ」
「...善処シマス」
「アカネちゃんのえっち〜!」