1話






(ったく……何でこんなことしなきゃいけないのよ)


 暗闇の中、PCを弄っている女性はブラインドタッチしながらキーボードで何やら調べ物をしているようだ。しかし、機嫌が悪いのか指に余計な力が入っており、キーボードに八つ当たりしているようにも見える。
 そんな中、静かな部屋にピピピピピッという電子音が鳴り響くとデスクに出ていた携帯が鳴っていた。


「…………もしもし」


 発信主の名前を見た彼女は嫌そうな顔をしながら不機嫌な声を出しながら電話に出た。


『僕だ』
「分かってるから、要件」


 電話主は一言第一人称を発すると女性はため息をついては電話主の男に要件を催促する。


『毛利小五郎を知っているな』
「知らない人いたら外国人ね」
『彼の情報を集めて欲しい』


 男は早速要件に入る内容としてある人物の名を上げ、女性が知っている前提で言葉を紡ぐと彼女は淡々と彼の言葉に言葉を返す。つまり、遠回しに知っていると言っているようなものだ。
 彼は彼女の言葉に余計な言葉はかけず、淡々と要件を述べた。


「……期間は」
『3日だ』
「はぁ……、OK」


 彼女は断言的な問い掛けをすると彼は一言返答する。その返答された期間の短さに先程より深いため息をついて承諾した。


『君なら1日で出来そうだがな』
「協力者を殺す気?降谷さん」
『ふっ……そんなつもりは毛頭ないさ』


 電話主の男は彼女にとって恐ろしい言葉を紡いだ為に女性は呆れた顔をして問い掛けるとわざとらしく電話主…降谷零の名を呼ぶ。
 そのわざとらしいさに降谷は思わずふっと笑って彼女の言葉を否定した。


「どーだか…ああ、この間頼まれたブツ、完了したからよろしく」
『シャナは本当に仕事が早いな』
「褒めても何も出ないわよ」


 降谷の言葉をイマイチ信じていないシャナと呼ばれる彼女は思い出したかのように以前頼まれていた依頼を完了したことを伝えると降谷の口から珍しく賞賛の言葉が出る。
 彼女は喜びもせずあしらうかの様に降谷に言葉を返した。


『事実を言ったまでだ』
「本業は別なんだからあんまり頼らないでよね」
『……ところで、君の本業は何なんだ?』


 降谷は心外だとばかりに言葉を返すと振り払うようにシャナは彼に言い放つと降谷は疑問を彼女にぶつける。


「企業秘密……協力する代わりにプライベートに踏み込まないって約束忘れてないでしょうね?」
『忘れてはいないさ』


 シャナは目を閉じてピシャリと彼の問い掛けに答えないという意思を見せる。
 そして、威圧的な声で協力者になった条件を再確認すると降谷は肯定した。


「だったら、聞かないで」
『……また例の件、3日後に情報揃えておけ』
「OK」


 シャナは素っ気ない態度で言葉を返すと降谷はこれ以上踏み込まないと決めたのか話を戻して彼女に命令する。
 そして、その命令にシャナは一言返して電話を切った。


「はぁ……人使い荒いんだから」


 電話をデスクに置くと彼女は深いため息をついて椅子の背もたれに寄り掛かり愚痴を零す。


(にしても、まさかこんなことになろうとはね)


 目を閉じて額に手を当て自身がまさか公安警察の協力者になったことを未だ信じられないのか心の中でも愚痴を零す。


「世の中何があるか分からないわ」


 目を開けて深呼吸すると一言ぼやく。


「……殺せんせーは今の私を見て、何て言うのかな…怒るかな」


 シャナは天井を見上げて恩師はどう思うだろうかと不安そうに瞳を揺らしてまた言葉を零す。


「君らしいって言ってくれたらいいな……」

 願望を口にすると彼女は椅子の背もたれから起き上がってPCに向かい、またキーボードを叩く。
 先程依頼された情報をかき集めるために。




私の依頼主は
 
 ―加減を知らない人使いの荒い人―




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