2話






「もしもし、カエデ?」
『あ、刹那!出た出た!』


 出かける準備をしている女性はスマホから着信音が鳴り響く電話を取ると電話に出電話主のの名前を呼ぶ。
 刹那と呼んだ電話主…茅野カエデは嬉しそうに声を掛けた。


「人のことめったに出ないやつみたいな言い方しないでよ」
『だって、その通りじゃん』
「まあ、そうだけど…それでどうしたの?天下の女優さんが私になんの用?」


 刹那ははぁとため息をついてカエデに文句を言うとその通りだとカエデは彼女に言葉を返す。否定出来ないのか刹那は言葉を濁して話題を変えてカエデに問いかけた。


『撮影が急遽ばらしになったから、お茶でもしたいなーと思って!刹那空いてる?』
「ちょーど今から行きつけの喫茶店に行くところだった」
『良かったー!じゃ、そこに集合ね!何てお店なの?』


 用件を聞かれたカエデは明るい声で刹那をお茶に誘うと彼女は必需品をカバンに入れて肩にかけると玄関に向かいながらカエデの問いかけに言葉を返した。
 その言葉の意味を理解したカエデは嬉しほうな声でどんどん話を進めていき、刹那の行きつけの店の名前を聞く。


「ポアロっていう店。律、案内してあげて」
「はいっ!分かりました!」
『あ、律もありがと〜!それじゃ、あとでね!』


 刹那はスニーカーを履きながら店の名前を言うとスマホにいるであろう律を呼び出してカエデに案内するよう頼むと元気な声が聞こえてくる。
 そして、了承した律にカエデもお礼を言って電話を切った。


「あの人使い荒い人のおかげで久々の自由だよ」
(おかげで本業の納期遅延発生しそうだったじゃない)


 2週間前に依頼された情報を3日で調べきり、情報提供した後に刹那はそのまま本業の仕事を更に3徹してなんとか納品すると倒れ込むように眠っていた。
 その時のことを思い出して彼女は文句を言いながら家を出て鍵を閉めると鍵を鞄に閉まって彼女は歩き出した。


(刹那って名前だから音写でシャナって付けた…我ながら簡単なコードネームを付けたもんだな)


 彼女の本名は本郷刹那。
 しかし、降谷の協力者となった時はシャナと呼ばれている。
 それは彼の協力者が彼女の裏の顔だからだ。


(まあ…降谷さんの協力者になった時のきっかけがきっかけだしな…)


 遠い過去を思い出しては遠い目をして諦めた顔をした刹那はため息をつく。


(まあ、正直関わりたくないけど刹那の時に会わなければいい話だし)


 無理やりポジティブ思考に持っていっているとポケットに入っているスマホがバイブで揺れる。
 手に取り、確認するとこれから会う人物からLANEが来ていた。


"現場から近かったからもう着いたよ!"
(早っ…と言っても私ももうすぐ着くんだけどねー)


 刹那は中身を確認するとカエデから待ってるよーというクマのスタンプ付きのメッセージを見てはふっと笑って彼女もLANEの返事をしてもう見えている喫茶店ポアロに向かった。


「いらっしゃいませー…!?」
「…………」


 刹那はポアロの店の扉を開けるとそこにはとびきりの笑顔の色黒のミルクティ色の髪をした青年が出迎えの挨拶をするが訪れた人物を見て少し動揺したのか目を見開く。
 彼女も目の前でとびきりの笑顔を見せている人物が見知った人であることに思わず固まってしまった。


((何でここに…!?))
「あっ!刹那さん!いらっしゃい!」
「ああ…梓さん、お久しぶりです」


 目を合わせた2人はお互い同じことを思っているが言葉には出さず黙っていると彼の後ろから黒髪の女性が刹那の存在に気が付き、彼女に声をかける。
 梓の声ではっと我に返った2人は彼女を見て刹那は梓に挨拶をした。


「梓さん、お知り合いですか?」
「刹那さんはここの常連さんなんですよ」
「そうだったんですか…」


 初めて見る人物を装い彼は梓に刹那のことを問い掛けると梓は笑顔で男の問いかけに答えると納得した顔をする。


「最近来られてなかったから寂しかったんですよ?」
「すみません、私も来たかったんですけど仕事が溜まりに溜まってて…あははは」
「いつも忙しそうですもんね…」


 少し寂しかったようで眉下げて刹那に言葉をかけると困ったように笑いながら彼女の言葉に言葉を返すと心配そうに梓は#刹那を見つめる。


「まあ、普通ですよ…ところでこちらの方は新しいバイトさん、ですか?」
「安室透です。1週間前にバイトで入りました」
「しかも、あの毛利小五郎さんのお弟子さんなんですよ!」


 刹那は誤魔化すように笑って言葉を返すと男の方をちらっと見て梓に問い掛けると彼女の問いかけには男自ら返答という名の自己紹介をし始める。
 安室透…と名乗る男が自己紹介を終えると隣にいる梓から刹那はまた1つ情報を手に入れた。


「へぇ、探偵の弟子ですか…凄いですね」
(だから、調べさせたのか…?何のために…?)
「あはは、毛利先生から学ぶことが多くて勉強になりますよ」
(参ったな…シャナがここに来ることは想定外だ)


 刹那は目を見開いて驚いた顔をしてはにこやかに笑って安室を褒めるが内心では疑問が飛び交っている。
 彼女の褒め言葉に笑顔で毛利小五郎のことを褒めて会話を成りたせているが彼もまた内心、刹那がここに来ることは予想外だったようで戸惑っていた。


「お客さんも増えたんです!と・く・に・女子高生が!!」
「あー…イケメンですもんね…」
「あはは…ありがとうございます」
(嘘くさい笑顔ではあるけどね…)


 嬉しそうに微笑みながら梓は客層が増えたことを喜び、その客層の大半が女子高生だということを刹那に情報を漏らすと刹那は安室の顔をじっと見て率直に褒めると彼は居心地悪いのか眉を下げてお礼を言うが、刹那は余計な一言を自分の心に止めた。


「刹那!」
「あ、友人がもう居るのでそちらに行きますね」
「やだ、立ち話してしまってすみません」


 刹那の存在に気がついたカエデは彼女の名前を呼んで手を上げるとそれに気が付いた刹那は梓と安室に声をかけてカエデのいる席に目をやる。
 梓は口に手を当てて申し訳なさそうに謝った。


「梓さんと話すのは好きなので気にしないで下さい」
「ありがとうございます…いつものでいいですか?」
「はい、お願いします」


 刹那はふわっと笑って梓に気にするなと言葉をかけると梓はほっとした表情を見せてお礼を言い、メニューを問いかける。
 刹那は笑顔で頷くと丁寧にお願いをしてカエデのいる席へ向かった。


「…彼女のいつものってなんですか?」
「オリジナルブランドコーヒーとアップルパイですよ」
「へぇ…」
(……意外だな)


 安室は彼女が立ち去るのを確認してから梓に刹那のいつものメニューは何かを問い掛けると梓はニコッと笑いながら彼の問い掛けに答える。
 その答えに一言言葉を漏らすとシャナの時のイメージにないのか意外だと思ったようだ。


((…というか、))
(刹那って…どういうことだ!?)
(安室透って…どういうこと!?)


 厨房に入る安室と席に着いた刹那。
 笑顔を保ちつつも二人とも自分の知らない相手の名前に動揺していた。




お互いに

 ―驚くことがいっぱいで―




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