文化祭って…




「お、お帰りなさいませ。ご主人さ…」
「はーい!ダメ!ぜんっぜんダメ!!やり直し!!」

 日暮くるみ、ただいまメイド修行をさせられてます。
 それは何故かと言うと…明日ある文化祭に向けて
 私のクラスはメイド&執事喫茶が出し物になったからだ。

 クラスの女の子の監修の元、修行をさせられてるんだけど恥ずかしすぎてぎこちない動きをしている私に指摘が入る。

「佐藤さん、お願い…恥ずか死するから私、裏方に回して……」
「なーに言ってるの!日暮さん程の可愛い子が裏方なんてとんでもない!さあ!やるわよ!」

 私は羞恥で限界だったため監修者…佐藤さんにお願いをしたものの私の抗議は拒否されてしまいその後も扱かれたのだった。

「お疲れさん」
「はじめちゃーん…代わって」
「ふざけんな!」
「いたっ!」

 私は疲れて机にうつ伏せになると労りの言葉と共に私の好きないちごみるくの差し入れをくれた幼馴染…岩泉一。
 通称はじめちゃんに私は気だるそうに代わってとお願いを申し出したら軽く頭を叩かれ断られてしまった。

 はじめちゃんはずるいことに裏方。
 だから代わってとお願いをしたんだけどまあ、私と代わってと言ったら私が裏方ではじめちゃんがメイドになることを指してるので全力拒否されるよね。

「つーか、お前及川には言ったのか?」
「……………………言ってない」
「言わなくていいのかよ」

 私は頭を擦りながらはじめちゃんを見るとはじめちゃんはため息をついて私に問いかけてくる。その言葉に私は長い沈黙の後首を横に振って否定すると呆れた声で言葉を返された。

「分かってるんだけどさ…どっちのパターンも面倒だなぁって思うとね」
「どっちのパターン?」
「パターン@俺の彼女だもん!可愛いから絶対大丈夫!てか、見に行くからね!…パターンAダメダメダメ!俺以外の相手に笑顔振り向くなんで絶対ダメ!裏方やって!……って言う2パターンが今目の前に浮かんで憂鬱になってます」

 私は遠い目をしながらメイド喫茶のメイドを言った時の反応を想像してボソリと呟くと私の意図がわからなかったはじめちゃんは私に問いかけてくるので私は人差し指を上にさしてパターン1、中指を増やしてパターン2と説明するとああ、と納得した。

 及川徹はつい最近、幼馴染から彼氏になった人物のこと。

「兎に角、またこの間みたいにややこしくなるのだけは勘弁な」
「はあい」

 はじめちゃんは私の頭を撫でながら先に忠告したぞとばかりに先手を打ってくる。
 以前、私がバンドを組んでることを隠してたことによって徹との仲が気まずくなったりした件のことを言ってるのだ。
 私はその時ははじめちゃんには申し訳ないことしたなと思って反省していたため、素直に返事をする。

「そう言えばはじめちゃん、部活は?」
「文化祭優先でしばらく休み」
「あー…なるほど」

 放課後までクラスの文化祭準備をしているはじめちゃんに私はふと気になって部活のことを聞くと簡潔な答えが返ってきた。
 まあ、文化祭優先になるのかと納得して私は貰ったいちごミルクにストローを刺した。

「お前、バンドでは色々とやってんのにメイドは出来ないの?」
「あー、無理無理無理。バンドは歌だしRuiだからなりきれるけどメイドとか日暮くるみがやるから無理。」
「どっちもお前だろ」

 素朴な疑問を持ったはじめちゃんは私にふと問いかけてくると私は半目になって手のひらをパタパタと振って否定の言葉を口にしては理由を言うとごもっともなツッコミが返ってきた。
 分かってるけどそうそう簡単には出来ないのよ。

「はぁ…いつ言おうかな…徹に」

 私ははじめちゃんの言葉に耳を傾けながら空を見上げてそう呟いた。


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「「………」」

 はじめちゃんはまだ準備があるから先帰れと言われて帰ることにした私は下駄箱で徹にばったり会って一緒に帰ることになった。
 メイドのこと言わなきゃって思いながらも言い出せずに沈黙が続く。
 …と言うか、徹が黙ってるの珍しい。

「…徹、どうしたの?珍しく話さないね」
「えっ、そ、そうかな…あはは」

 私は徹の顔を覗き込むように問いかけると彼はピクっと肩を揺らして困ったように笑いながら答える姿に何か隠してることは明白だった。

「……明日、文化祭だね」
「う、うん」
「………一緒に回れたらいいなぁ」

 聞かれたくなさそうなので私はあえて突っ込んで聞いたりしない。これはいつものパターン。私は話をそらして文化祭の話をすると彼は頷いた。
 私はぽそりと本音を言葉にしていた。

「えっ」
「まあ、無理だと思うけどね」

 徹は驚いた顔をして私を見てくると私は眉を下げて笑いながら自分の吐いた言葉に否定の言葉を重ねた。

 彼は学校一のイケメン。女の子が放ってはおかない。
 一緒に回るなんて至難の業なのだ。

「そんなことないって!一緒に回ろ!」
「私出来ないことは約束しないんですー」
「じゃ、俺がくるみのクラスに遊びに行く」

 首をブンブン横に振って必死に一緒に回ろうなんて言ってくれて嬉しいのに素直になれない。
 だって、色んな女の子に捕まって結局一緒に回れなくなったら私はきっと傷付いてしまう…だったら、最初から期待しない方がいい。
 私は可愛くない言葉を口にすると彼はとんでもないことを言い始める。

「え、それは…」
「くるみのクラスってメイド&執事喫茶なんだよね?」
「うん…」

 私はまだメイドをやるなんて言ってなくて言葉に詰まっていたら彼がニコニコ笑いながら問い掛けてくる。
 私は彼が知ってたことに動揺しながら首を縦に振りながら肯定した。

「楽しみだなぁ…おすすめメニューとかあるの?」
「……あるにはあるけど…と言うか、怒ってる?」

 彼はまた空を見上げて笑いながら私に問いかけてくるけれどその彼の表情がぎこちなくて不思議に思って問いかけ返す。

「まっさか!怒ってないよ」
「……私がメイドやるの、嫌?」

 張り付いた笑顔はやっぱり怒っているようにしか見えなかったけど徹は私の言葉を否定した。
 嘘ついてるのくらい…分かるよ、もう。
 私は彼の顔を下から覗き込んで問いかけると彼はピタリと足を止めた。

「……ちょっと、妬きそう」
「じゃ、頑張っちゃおうかな」
「えっ………っ!」

 拗ねた顔をしてぽそりと呟いた徹にキュンっとなった私は少し意地悪しようと思ってやる気を見せると予想外の言葉が返ってきたのか彼は焦った顔をして声を上げた。
 そんな彼を見て私は思わず笑みが零れてそっと彼の手を繋ぐ。
 いわゆる恋人繋ぎ。

「嘘だよ…」
「……」
「機嫌直してよ、とお……っ!!」

 私は自分の言った言葉を否定すると徹は複雑そうな顔をして黙っていて機嫌直してほしいなと困った顔をしてた私に顔を近づけて不意に口付けをしてきたので私は思わず目を見開く。

「…とりあえずこれで許すね」
「………とりあえずって何よ、バカ」

 不意の出来事に私は顔を真っ赤にさせて固まっているとそんな私に満足したのか嬉しそうに笑って歩き出す彼に私は憎まれ口を叩くしかなかった。


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 文化祭当日。予想もしていないことが起きた。
 それは3年6組……つまり、徹のクラスの出し物がホスト喫茶だということを私は知った。

「ねぇ、はじめちゃん」
「……なんだ?」

 私は自身のメイド力の無さにひいひいと監修者もとい佐藤さんの元で修行していたから気づかなかったんだと思う。
 けれど、昨日帰る時に教えてくれても良かったと思うんだ、私。
 そんな思いから廊下の隣のクラスを見ていた私はいつもより低い声で隣にいるはじめちゃんに声を掛けると彼は頭をガシガシかきながら私に返事を返す。

「徹のクラスってホスト喫茶?なんだねー…」
「そうみたいだな」
「つまり、売上は徹のクラスの圧勝ってことだよね?だって、徹がいるんだもん。女の子なんて食いつくよねー…」

 私は怒りが心を支配しているなと思っても頭は冷静だったらしくその場の分析をし始めるとはじめちゃんは私の言葉に肯定してくれた。

「負けてたまるか」
「は?」
「はじめちゃん、私、メイドになりきる」

 私が最終的に出した答えはそれだった。
 私が言いたいことが分からずクエッションマークを浮かべていたはじめちゃんだったけど、私の次の言葉で納得したようで深いため息をついていた。

 なんで私ばっかヤキモチ妬かないといけないの?
 たまには私の気持ちを分かりなさい!バカ!

 そんな気持ちから私のやる気スイッチが入った。

「何でお前らはいつもそーなんだ…」

 そうぼやいたはじめちゃんの声は私の耳には届かなかった。

 やる気に満ちた私は当然メイド服を身に纏うと当初用意されていて嫌だから付けないと言っていたヘアエクステを付けた。
 元々ツインテールにしろと佐藤さんに言われていた髪型にエクステを付けて二次元の女の子のように髪が長くなり正直重かったけども徹への対抗心でそんなことは気にならなかった。

「お帰りなさいませっ、ご主人様!」
「お、おお…」
「日暮さん…完璧だわ!」

 私は満面の笑みでお客様を迎えては首を傾げるとお客様は恥じらいながら戸惑いながら声をこぼして私の後を付いてくる。
 私はそんなことを気にせずに席に案内するとメニューを渡していると私のその姿を見た監修者は私に太鼓判を推していた。

 そんなこんなで3年5組のメイド&執事喫茶は売上上々のようで、私の知らないところで『2次元メイドが2.5次元に現れた』と校内に噂が広がっていた。


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「ごめんね〜、休憩に行くからあとはよろしく〜」

 今朝から悪寒が走ってソワソワしていたけど、文化祭が始まると女の子達が俺のクラスの出し物…ホスト喫茶に押し寄せてくる。
 売上はまあ、俺がいるから当然上々だったけど優しい笑顔をずっと貼り付けているのは少し疲れるものがあった。

 何せNO.1ホストだからねっ!

 そんな中、接客をしているとたちまち聞こえてくる『3年5組のメイド喫茶に2次元から2.5次元メイドが現れた』なんて噂を耳にした。

 俺はこの噂を聞いた時、物凄い嫌な予感がした。
 そろそろ休憩の時間だと思ってクラスの奴に一声かけて女の子達には丁重に断って解放されて廊下に出てみると隣のクラス…つまりくるみのクラスは男で溢れ返っていた。

「何これ、」
「おお、クソ川」
「岩ちゃん!何!これ何!?」

 俺はただ呆然とその行列を見ていると看板を持った岩ちゃんが俺に気がついて声を掛けてくれたんだけど、俺は驚いて岩ちゃんに詰め寄って問い掛けた。

「あー…くるみが本気になった」
「何で!?あの子のやる気スイッチ押したの誰!?」
「お前が押したんだろ」

 岩ちゃんは面倒くさそうに言葉を伸ばしてから俺に答えてくれたけど意味がわからなくて昨日頑張る素振り見せなかったのにと思いながら更に問いかけると岩ちゃんから簡潔な答えを返されて俺はあんぐりとしてしまった。

「お前、くるみにホスト喫茶やるの言ってなかったんだろ」
「う、それは…」
「今日隣のクラスを見て知ったくるみは更に看板に『及川くんの甘い言葉 時価』の言葉を見て本気になった」

 岩ちゃんの言葉に否定出来なかった俺は言葉に詰まった。
 言わなかった…ヤキモチ妬いて欲しくて言わなかったんだけど俺が思っていたより甘くなくて逆にやる気スイッチを押してしまったらしい。

 俺は頭を抱えて深いため息をつくと岩ちゃんにため息つきたいのはこっちだと頭を叩かれてしまった。

「はいはい!3年5組おすすめメニュー!メイド&執事からの甘〜い一言!現在時価1000円!なんと日暮メイドの一言は1500円だよー!」
「……………はあ!?」

 3年5組の教室でメイド&執事喫茶の宣伝をしている生徒からそんな言葉を聞いた俺は一瞬固まったけど言葉の意味を理解した俺は怒りで声を上げた。
 俺の額には青筋が浮かんでると思う。

 何本気出してんの!?あいつ!!

 そう思ったらいても立ってもいられなくて俺は隣のクラスに乗り込んでいた。


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「ご主人様、ご一緒に!萌え萌え……」
「ねぇ、くるみちゃん。何してんの?」
「……へ?」

 私はなんか佐藤さんのよく分からないこだわりによりメイドが美味しくなる魔法をかけるということをやろうとしていたら後ろから優しいなのに何故か固い声音が聞こえてきてそれはしかもよく知ってる声だったものだからつい私も間抜けな声を出して振り返ってしまった。

「何してるのかなあ?」
「な、何ってご主人様のお出迎えです」

 笑顔が張り付いているけどめっちゃ怒ってることが手に取るようにわかる徹は私にもう一度問い掛けてくる。
 私は冷や汗をかきながら冷静に彼の問いに答えると周りはザワついて目立っている。

「ちょっと来て」
「え!ちょっと待って…」
「いいから!岩ちゃん、貰ってくから」

 彼は私の手を掴んでくるけど私はまだ接客終わる時間まであと少しあったので流石に焦って徹に言葉を掛けようとしたけどそれを被せて来いと言わんばかりに手を引っ張るとはじめちゃんに言葉をかけた。徹は私を引っ張って走り出すから私は黙ってついて行くしかなかった。
 最初はお客さんとかにも追いかけられたりしたけど何とか全てを巻いて辿り着いたのは屋上だった。

「っ、はぁ…はぁ…私、運動部じゃない、のに…」
「…………」

 私は唐突に連れてこられてしまったこともそうだけど徹に振り回されたのは事実なので嫌味ったらしく言葉にするけど彼から何も返事かなくて私に背を向けたまま息を整えていた。

「どうしたの、とお…」
「スカート短くない?その髪何?狙ってるの?声とか可愛い声出しちゃってさ!と言うか、俺以外の男に媚び売って何してんの?」
「………な、と、徹だってどうせ女の子にちやほやされてあまーい言葉吐いてたんでしょ!同じじゃない!」

 徹の返事かなくて私は戸惑いながら彼に声をかけようとしたら彼の声に遮られてとんでもない質問攻めにあった私は呆気に取られてしまったけど、自分のことを棚に上げてる彼に怒りがふつふつと湧いて言葉を言い返した。

「頑張らないって言った」
「…っ、それは……ヤキモチ…」
「は?」
「ヤキモチ妬いたから妬いて欲しかったの!!」

 昨日言った私の言葉を彼は責め道具として取り扱ってきたから私は言葉に詰まらせて彼の顔を見ると眉間に皺を寄せて真剣な顔でこっちを見ていたから白状するしかなくてぽそりと呟くと徹の耳に届いてなかったらしく問いかけるように短い言葉で返された私は恥を忍んで顔を赤くして大きな声で白状するとぷいっと徹の顔から私は顔を背けた。

 あー!もー!恥ずかしい!何やってんだろ、私…

 冷静になりつつある頭でそう自分を罵っていると彼は急に笑い出す。

「……何か面白いことでもあったのかな?徹くんは」
「ぷっ、くく…いやあ、考えてることは同じだったんだなと思って」

 急に笑い出す彼に私は苛立ちを覚えてちろっと横目で彼を見てトゲのある言葉を吐くと彼はやっと笑いが収まったのか言葉を紡いで嬉しそうに私を見た。

「…妬いてくれた?」
「相手を殴りそうな程には」
「……えへへ、じゃ、大成功だ」

 私は彼の言葉に同じことを考えてたんたとバカらしく思ったけど彼が妬いてくれてたのか確かめたくなって問いかけると困った顔して笑いながら返してくれた。
 その言葉を聞いた私は嬉しくなって頬を緩ませて微笑むと徹に抱きついた。

「もー…くるみは俺を妬かせるの上手すぎ」
「こちとら長年妬いてきたから沢山妬いた分妬いて欲しいんです」
「何それ、可愛すぎ」

 困った顔してため息をつく徹は私を抱き締め返してきながら文句を言ってきたけど私はムッと顔をして徹の顔を見上げて抗議すると頬を赤く染めていた。

「…でも、ごめんね」
「"ご主人様、ごめんなさい"って言ってキスしてくれたら許す」
「……徹も悪いのに…っ!」

 ヤキモチなんて苦しいだけなの分かってるのにそれをさせてしまったことに少しの罪悪感はあったから徹に眉下げて謝ると彼は調子に乗ってるのかふざけたことを真面目な顔をして言ってくる。
 私は拗ねた顔してぽそりと文句を言うと彼は私の唇に口付けを落とした。

「俺もごめん」
「………ズルい…"ご主人様、ごめんなさい"」
「っ!!」

 徹はそっと私の唇から離れると申し訳なさそうな顔をして謝罪の言葉を紡ぐ。

 彼は本当にいつもズルい。
 でも、それで許してしまう自分がいる。

 私は文句を言っては彼から言われた通りの言葉をメイドらしい声音で紡ぐと彼の首に腕を回して口付けた。
 本当に私がやると思ってなかったのか驚きで体を硬直させていた彼だけどすぐに私の背中に手を回して何度も角度を変えて口付けをしてきた。
 どちらともなく唇が離れると徹はくるみ#の方こそズルいよねと困ったように笑った。

 その後、お互いのクラスメイトに説教されて結局文化祭売上1位を取り逃したけど、文化祭特有の甘い時間は得られた気がした。


文化祭って…

―不思議な魔法があるかもしれない―


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