#1




「またフラレたー!」

 そう言って勝手に部屋に上がりこんでくるこのバカは隣の家の息子・及川徹。
 私の幼馴染に当たる。
 ついでに言うと学校も同じだ。
 クラスは違えどここまで来ると腐れ縁。
 
 というか、せめてノックしてよ。
 一応乙女の部屋なんだけども。

 私は本を読みつつも心の中で彼にツッコミを入れた。

「あーそー、勝手に上がりこんでこないでくださーい」
「ちょ、冷たくない!?」

 もはや毎度の恒例になりつつあるので"フラレた”という言葉には反応を示しません。
 失礼極まりないこの男に私は本を読み続けながら常識を訴えると私の反応が冷たいと抗議の声を上げてくる。

「どーせ、“及川君ってイメージと違うね”とか“バレーと私どっちが大事なの!?”とか言われてフラレたんでしょ」
「何で分かるの!?エスパー!?」
「もはやテンプレだね」

 今まで振られた傾向を見て言われそうな言葉を言うとまさしく言われた言葉がそれだったようで驚いたようで目を見開いて大げさに言うが、こちとら何万回も同じような話を聞いてる訳なので驚く必要もないと思う。

「何で俺、フラレるんだろ…かっこいいのに!」
「……そういうところじゃん?」

  こいつ、本気で悩んでるのか?と思いたくなるほど振られる理由に納得してない彼に私は思ったことをそのまま伝えるとショックを受けたらしく私のベッドに顔を埋めていた。

「くるみが冷たい……」
「はあ…今回の元カノちゃんはどんな子だったの?」
「綺麗な子」

 しつこい徹に私はため息を付いて本を閉じるとどんな子だったのかを聞くと端的に彼は答えた。
 …それだけなの?
 
「見た目じゃなくてどんな性格だった?趣味は?」
「………わかんない」
「ねえ、本当に好きだったの?」

 彼の答えに私はひどくめまいを起こしそうになりながらも見た目以外の印象を聞くと彼は少し考えてはポツリと言葉を返した。
 その言葉に“またか”と思いつつも更に問い掛ける。

「ちゃんと好きだったよ」
「“ちゃんと”、ね…」

 彼から返ってきた言葉は毎度振られた時に言う言葉。だけど、いつも私はその言葉に引っかかって不思議に思う。
 何、ちゃんとって。いらなくない!?

「…何?」
「元カノってさあ、告られてOKした子だよねぇ…」
「そーだけど?」

 私が徹の言葉に引っかかってるのに気づいたのか首を傾げて私に問い掛けてくる彼に私はもうひとつ独り言のように言葉を漏らすと彼は肯定する。
 彼の態度はそれがどうしたの?いった態度に深いため息が出た。
 
「あんたさ…彼女作んない方がいいよ。これ以上あんたの被害者を生産すると思うと不憫でならない」
「待って、フラレて傷ついてるの俺なんだけど!?」
「かっこいい俺に彼女居ないとかありえない!…とかふざけた理由で告られてOKしてるだけでしょ。しかも、バレー優先でいいからとか言われた尚更。でも、実際付き合ってみるとどっちが大事なのって言われて振られるパターンの繰り返し」
「うぐ……」

 げんなりした顔をしているだろう私は彼のことももちろん思ってるが、尚且つこれから彼女になるであろう彼女たちのことを思っていった言葉だった。
 私の言葉に自分が慰められていないと思ったのか彼は不憫なのは俺でしょ!?とばかりに抗議の声を上げる。
 その言葉を聞いた私は彼の行動パターンをみてそれをただの情報として彼に提供をすると何も言葉が出ないのか言葉に詰まっている。

「じゃ、質問です。“ちゃんと”好きという割に何故元カノちゃんたちのことを知らないのでしょうか?」
「それは…あまり話す時間がないからでしょ」
「限られた時間の中で作ろうと思えば作れたんじゃない?好きだったんなら」
「………」

 こいつ、見た目だけ育っただけで本当に恋愛0歳児だな。おい。
 そんな事を心の中で毒付いた私は彼に優しく質問をすると彼は私の質問に回答する。
 確かにそれはあながち間違ってない。
 でも、工夫をしようと思えば出来たはずだ。
 たとえ彼のファンに囲まれようとも会えないことがあろうとも今のご時勢メールとか電話とか手段はある。
 私の言葉に思い当たる節があるのか徹は黙って考え始めると私のスマホが鳴る。
表示された名前はクラスメイトの中島敦君だ。

「…もしもし?……あ。ごめん。忘れてた。今行く!」
「……どこに行くの?」

 珍しく電話が来たと思って電話に出ると電話の相手は怒ってる声で記憶を探ると私は電話主と約束していたことを思い出した。
 血の気が引けるのを感じながら謝罪の言葉を口にしては電話を切って仕度を始めると徹はぽつりと言葉を溢したので徹のほうを向くと下を向いていて表情が見えない。

「先約あるの忘れてた…途中まででごめん。また聞くから…」
「ねえ、電話の相手、中島だよね?何で?」
「何でって今言ったでしょ、約束してたんだってば…」

 結構説教じみたことを言った後に途中で抜け出すのは申し訳ないと思いながらも徹に分かってもらおうと謝罪の言葉と言い訳を言うといつもより低い声で問い掛けてくる。
 いつもと様子が違う相手に私は困りつつも彼の問いかけに答える。
 
「へー…ふーん…」
「話が途中になってごめんってば!……問題です。好きの反対は嫌いですが、愛してるの反対はなんでしょう?」
「何、急に…」

 無気力な返事に私はまずいなと思いながらまた謝罪の言葉を口にすると少し考えてから彼が気づかないといけないことを問題に出すと徹は力なく笑って言葉を返してくる。

「それが分かればきっと徹は次から彼女と別れなくてすむと思うよ……それじゃまた明日ね」
 
 大分今回は傷つける言い方したかな…と力なく笑う彼に罪悪感を感じながら軽いアドバイスをすると私は自分の部屋を出て階段を駆け下りると母親に遭遇したので“いつもので出かける”と声を掛けて家を飛び出した。
 夜道を自転車で目的地へと向った私は徹の落ち込んだ顔を見て言い過ぎたかなと少し反省をした。
 でも、そうしなければ彼は自分も他人も傷付け続けて前に進まない。

「はあ、…何であんな奴、好きになったんだろう」

 そんなことを思いながら恋愛0歳児の徹が前に進もうが進まないだろうがきっと関係なく私はこの今の関係を壊すくらいなら"幼馴染兼相談役"からは絶対動かないだろう。


私の幼馴染は

―彼女欲しい願望の強い恋愛0歳児ー


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