If-パイロットだったら-

※降谷さん、景光さんはパイロットさんです
※松田さんは整備士です
※景光さんと松田さんの口調が不明瞭です
※苦手な方は推奨致しません
※飛行機乗り要素会話に余りありません

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「お疲れ、ゼロ」
「……ヒロ、お疲れ」


 屋上デッキの手すりに背を向けて寄り掛かってはある人物をじっと見つめている褐色の肌に金の髪色を靡かせた青年の元へ黒髪の青年は彼を名前を呼びながら近寄ると“ゼロ”と呼ばれた青年…降谷零は視線だけ彼に向けて言葉を返す。


「ここにいたのか…ほら、コーヒー」
「……」


 ヒロと呼ばれた青年はふっと笑いながらコーヒーを降谷に渡すと彼は無言でコーヒーを受け取った。


「またあそこの看板娘を見てたんだろ」
「っ!?」


 ヒロは降谷と同じように手すりに背を向けて寄り掛かってコーヒーを飲んでは彼が見ている人物の話をし始めるとまさかその話題に触れられると思ってなかったのか彼は驚きで飲もうとしていたコーヒーを思わず噴出しそうになり、景光の方を見る。

 
「付き合いが長いんだ。お前のことは分かる」
「……あの子、いつも笑顔だな」


 彼の反応にヒロはふっと笑って彼が何を言いたいのか分かっているかのように言葉を返すと降谷ははあとため息を付いて自身が見つめていたカフェの店員の方へと目を向けてはヒロに言葉を返した。


「まあ、それが評判を呼んでるらしいからな」
「そうなのか」


 降谷の言葉にヒロは肯定して言葉を返すとその評判を知らなかった降谷はへぇと感心するように返事を返してはコーヒーを口にした。


「今度、行ってみるか?あの子のいる店に」
「……いや、やめとく」

 
 ヒロは突然思いついたかのようににっと笑ってとある提案をするが彼の言葉に降谷は言葉を詰まらせていたが、目を閉じて首を横に振って彼の提案を断る。

 
「お前、いつもここで見ているだけじゃないか」
「……ほっといてくれ」


 中々動き出そうとしない降谷にヤキモキしているのかヒロは彼に呆れたように言葉を返すと降谷は眉間に皺を少し寄せてはぶっきらぼうに言葉を返した。


「そういえば整備士の松田の幼馴染だって言ってたぞ」
「……なんでこうも幼馴染が集まるんだ、こんな場所で」


 ヒロは思い出したかのようによくミーティングで一緒になる整備士の松田の情報を降谷に提供すると彼は呆れた顔をしながら言葉を零す。


「さあな。松田と彼女もお互い知らなくてここで会った時は相当驚いたらしい」
「へぇ…」


 ヒロは目を閉じて言葉を返すと松田から聞いた話なのか更に松田と彼女が会った時の話を降谷に提供をすると興味がないのか話題の人物を見ながら適当な言葉を返していた。


「ありがとうございましたー!」


 噂されている当の本人はそんなことも知らずにカフェに来店されたお客様を笑顔で見送ってお辞儀をしていた。


(ふぅ…そろそろお店も落ち着いてきたな……あ、あの人だ)


 顔を上げて時計を見ると丁度時間は14時過ぎとなっており、客足は落ち着き始めていた。

 時計から目を離してふと目の前を見るとパイロットの格好をした良く見かける人物が目に入った。


「なまえちゃん、何してるのー……あ、いい人いた!?」
「ふふ、違うよ〜…偶々休憩中のパイロットさんを見かけただけ」
「え、何処何処?」


 カフェの中から同僚がなまえに声を掛けるとはっとした表情をして勢い良く問い掛けると彼女はその問いに思わず笑って否定すると同僚に言葉を返す。

 同僚は何処にいるのか分からなかったのか首を傾げて彼女に問い掛けた。


「ほら、あそこ」
「あ、本当だ〜…って、あれ噂の機長さんじゃない?」


 なまえはくるっと降谷たちの方に背を向けて自分の型に指差して同僚にパイロットのいる方を教えると彼女は彼らの存在に気が付くと彼らが誰なのかを知っているのか疑問系で言葉を口にする。

 
「え、そうなの?」
「そうそう、最年少機長でイケメンなんだって!ちなみにその隣の人副操縦士さんで幼馴染タックらしいよ」


 噂の機長さんを知らなかったなまえは首を傾げて問い掛けると彼女の同僚は首を縦に振って興奮気味で情報を彼女に提供する。


「あはは、流石情報通だね」
「でも、何であそこにいるんだろうね?」


 興奮している同僚になまえは思わず笑って彼女を褒めると同僚は素朴な疑問に至ったようで首を傾げていた。


「んー…わかんないけど、良くあそこで隣の人と話してる所見かけるよ」
「え、そうなの!?」


 なまえは同僚の問い掛けに考えるように首を傾げるが答えは出なかったのか眉下げて首を横に振ると降谷たちのいる方をちらっと見ては言葉を零すと同僚は驚いて目を見開いて彼女に問い掛ける。

 
「うん…なんかたまに機長さんと目が合うし……あ、」


 少し声を上げて問い掛けてくる同僚に驚きながらなまえはちらっと降谷たちの方を見ると目が合ってしまったようで思わず声を上げてにっこりと笑顔を向ける。


「っ!」


 偶々目が合ったのだろうが目が合って内心焦っていた降谷は笑顔を向けられて目を見開くが彼もまた同じように笑顔を返した。


「ど、どうしたの?」
「え、あ…目が合った気がしたからとりあえず笑顔返してみた?」


 わけも分からず急に声を上げて笑顔を見せているなまえに同僚は戸惑ったように彼女に問い掛けると同僚の言葉に少し照れくさそうに言葉を返す。


「はーっ!流石看板娘!」
「え…?」


 彼女の表情に同僚は大きなため息を付いて突然彼女を賞賛する言葉を投げかけるため、なまえはきょとんとした顔をして首を傾げた。


「でも、誰彼構わず笑顔振り向くのはダメよ!ストーカー被害にあうかもしれないんだから気をつけて!!」
「大げさだなぁ…機長さんたちだってそんな挨拶だって思ってるよ」
「わっかんないじゃない!」


 同僚はなまえの両肩をガシッと掴んで子供にへんな人について言っちゃだめよと注意するかのように彼女に忠告をするとなまえは困ったように眉を下げて笑いながら同僚に言葉を返すが、彼女はなまえの言葉を完全否定する。


「こーら、二人とも何楽しそうな話をしてるのかな?」
「あ、店長」
「ご、ごめんなさい」


 そんな二人のやり取りに割って入った凛とした声をした女性はにこにこ微笑みながら二人に問い掛けると同僚ははっとしてその女性のことを気まずそうに店長と呼ぶとなまえは慌てて店長に仕事を少しほっぽいて話していたことを謝罪をした。


「ふふ、なんてね…さ、客足も減ったから今のうちに賄い食べなさい」
「はーい!おなか空いたー!」
「ふふ…」


 店長はあまり怒っていなく柔らかく微笑んでは賄いを食べるよう二人に勧めると同僚は元気良く返事をして店長の後ろを付いていく。

 その様子がひな鳥が親鳥についていくように見えたなまえは二人の後姿を見て微笑む。


(でも、あんな優しい笑顔向けてくれる人が悪い人だって思えないなぁ…あの人の名前、なんて言うんだろう……まっつんに聞けば分かるかなぁ)
 

 同僚に注意しろと言われたなまえだが、ただ見かけるだけのパイロット…しかも目が合ったらお互い笑顔を見せるだけの関係の人が悪い人に見えなかったのか心の中で言葉を零しては彼女の幼馴染である人物を思い浮かべていた。


「……良かったな、笑顔貰えて」
「…………ああ」


 なまえがカフェの中に入っていく後姿を見ていたヒロと降谷。

 ヒロは降谷の肩に手をぽんと置いて言葉を掛けると降谷はなまえがいなくなった今でもカフェの入口をじっと見つめながら言葉を返す。

 
「お前さ…このやり取り何回目?」
「……5,6回」


 ぼーっとしている降谷にヒロは彼の顔を覗き込むように問い掛けると彼は未だ目線をそらさずにしながらヒロの問い掛けにポツリと言葉を零す。
 

「……まあ、癒してもらえて良かったな」
「……ああ」


 彼女のいた場所に目をそらさない降谷を見たヒロは呆れたようにため息をついては彼に言葉を掛けると降谷は手の中にある少し冷えたコーヒーを見つめて柔らかく微笑んで頷きながら言葉を返した。



◇◇◇

 

「よぉ、お前ら」
「松田か」


 定時後、帰宅しようとヒロと降谷は歩いていると目の前からサングラスをかけた人物から手を上げて声を掛けられるとヒロはサングラスをかけた人物…松田の名を呼ぶ。


「今日飲みに行かねーか」
「断る」

 
 松田はニッと笑いながら飲みに二人を誘おうとして声を掛けるが、降谷は即答で断りの言葉を言い放った。


「そんなこと言うなよ…」
「あれ、まっつん?」


 あまりの即答の断りに松田は眉下げて言葉を言いかけていると彼の後から“まっつん”と恐らく松田を呼んでいる女性の声がした。


「あ?ああ、なまえ。今帰りか?」
「うん、そうだよ……あれ?もしかして機長さん?」


 松田は眉間に皺を寄せて振り返るとそこには見知った幼馴染の姿があり、彼女に問い掛ける。

 彼女は彼の問いに肯定すると松田の後にいる人物が目に入り、松田の後からひょこりと顔を覗かせるようにして降谷たちに声を掛けた。


「お前ら知り合い?」
「ううん、私が勝手に見かけてる人」


 意外な接触に松田が驚いてなまえに問い掛けると彼女は首を横に振って松田に言葉を返す。


(君をこいつは見にいってるんだけどね)
「初めまして、みょうじなまえです。いつも笑顔をありがとうございます」


 彼女の言葉にヒロは少し口角を上げて心の中で言葉を紡ぐとなまえは笑顔を向けて自己紹介をし始めると予想外の言葉と共に会釈をした。


「ぶっ!!」
「は?笑顔??」


 彼女の唐突な言葉にヒロは顔を背けて思い切り吹いて笑うと話についていけていない松田は眉間に皺を寄せて首を傾げて言葉を零す。


「ふふっ…僕は降谷零です。こちらこそいつもありがとうございます」
「良かったら今度、カフェに来てくださいね!…ああ!時間!急がなきゃ!では失礼します!まっつん、またね!」


 降谷もヒロと同じようにおかしくなり笑みを零すと笑みを浮かべて自己紹介をして同じように彼女にお礼を言うとなまえはふわりと微笑みながらカフェへのお誘いの言葉を掛ける。

 降谷の斜め後にあった時計を見ると彼女は慌しくしながら3人に挨拶をして急いで走り去っていった。


「…良かったな、ゼロ」
「……ああ」
 

 なまえと会話が初めて出来た降谷にヒロはふっと笑って彼に言葉を掛けると降谷はチラッとヒロの方へ視線を向けては短い言葉を返す。


「おいこら、俺を置いていくな。じっくり話聞かせてもらおうじゃねーか」
(…またあの笑顔が見れた)
「おい、聞いてんのか?」
 

 状況が追いついていない松田は二人の間に割って入って二人の方を組んでは逃げられないようにしてヒロと降谷に言葉を掛けると降谷は彼の言葉が耳に入っていないのか先ほどなまえが見せた笑顔を思い出しては目を細めていた。

 自分の話を聞いていない降谷に松田はじと目をしながら降谷の顔を覗き込んでいた。


―その後、降谷とヒロは松田による事情聴取という名の飲み会に連行されることになる。


(はっ!降谷さんの幼馴染さんの名前聞き忘れた!超失礼だ…!!)


 一方、慌しく去って行ったなまえはヒロに対して名前を聞き忘れて去ってしまったことに落ち込んでいたのだった。

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