「どうしよっ・・・どう、したらっ・・・」 「大丈夫よ、きっと大丈夫よ・・・」 天女様の嫌いな魚を膳に上げた話は、瞬く間に城中を駆け巡り騒ぎとなっている。 あの後、何故かあの場所にいなかったはずの厨を任されていた下女中たちが事情を知ったらしく、天女様の好物が並べられた膳を持ってきた。 しかし、それでも天女様のお怒りは収まらずその場にいた全員が罰を受けることになってしまい、庭に集まっている。 地べたに裸足のまま正座を命ぜられて。 庭に面した廊下では、幸村様と腕を絡めて勝ち誇った笑みを浮かべる天女様が文字通り、私たちを卑下するように見下していた。 「ねぇ幸村ぁ?あたしが嫌がることをしたこの人たちに、人が嫌がることはしちゃいけませんって教えてあげよ?ね?」 「・・・うむ」 「じゃ、佐助呼んで」 「・・・うむ」 正座をする前から私は気付いていた。 というか、やっと自分がどこにいるのかが理解できた。 私は、ただ過去に生まれ変わったんじゃない。 記憶の中に、戦国をモチーフにしたゲームが爆発的人気となり戦国ブームを巻き起こした、とあるのだ。 そのゲームの熱血漢キャラは今、目の前に立っている。 そして天女様は先程はっきりとトリップと仰っていた。 私は転生トリップというものをしてしまったに違いない。 まさか、そのゲームがどんな内容か興味本位で検索して呼んでハマった夢小説とやらを体験するとは、運が良いのか悪いのか。 今のこの状況では悪いとしか言いようがない。 「え〜?魚出されたくらいで俺様なの?それくらい我慢しなよ、天女様」 黒い影と共に現れたのは、やはり記憶の中にいた猿飛佐助その人だった。