命じられた罰は陰湿なイジメだと言える。 天女様が幸村様へ耳打ちすると、幸村様は恐らくその言葉そのままを発言されたのだろう。 その紡がれた言葉には感情的な抑揚が全く感じられず、前に小百合さんが言っていた、まるで操られているかのようだという言葉が頭を過った。 それに、私の記憶が知っている真田幸村という彼がこんな仕打ちをするなんて到底思えない。 もしこれがゲームの裏側だと言うならば仕方ないけれど、常に冷静であり武田と真田のためならば手を汚すことを厭わないだろう猿飛佐助が、その罰を実行したがらない。 真田に仕える忠実な忍長である猿飛佐助が、命令を実行しなくて済むような言動をしているのだ。 「真田の旦那、魚くらいなら見逃してあげていいんじゃないの」 「・・・しかし華姫様が」 「そうよっ佐助!悪いことしたのは女中よ?」 「天女様が魚食べれば良いだけじゃん?」 「嫌いなのよ!食べたくないんだから仕方ないじゃん!幸村、佐助があたしをいじめるっ」 「・・・佐助」 「真田の旦那・・・・・・頼むよ・・・」 猿飛佐助が何となく、泣くのを堪えるような悲しそうな顔をした気がした。 それでも、私たちへ視線を向けた時には無表情で。 いつの間にか周りを囲むように立っていた、顔を隠した忍らしき人たちに合図を送った、瞬間。 「きゃああああっ・・・ああ!」 私たちは煮え切っていたらしい熱湯を浴びせられた。 「っ、いた、い・・・・・・」 「つぅ・・・、名無し、さんっ!?」 皮膚が、身体が焼けたように熱くて痛くて、意識を手放すことができたら手放したいのに全身が心臓になったみたいにけたたましく鳴り響いて、やけに意識がクリアだ。 でも、辛うじてぼやけながらも見えた先には無傷の梅ちゃんがいて、安心した。 「名無しさんっ!な、なんで庇う、の」 「身体が、ね、動いちゃったんです、」 泣きそうな梅ちゃんの周りには、庇いきれなかった下女中や下男が横たわっている。 ただ、胸が上下しているのも見えたから死んではいない。 雪さんは熱湯が足にかかったようで、必死に押さえて痛みに耐えている。 「何よ、庇うなんてつまんないこと!超シラケるんだけど!」 「・・・華姫様」 「幸村ほら!庇ってもらって罰を受けてない女中がいるじゃない!佐助もう一度よ!」 「・・・佐助、もう一度やれ」 「旦那そんなこと・・・・・・って、あんた起き上がっちゃ駄目だ!」 「名無しさんっ!?」 どうしてか分からない、けれど。 「な、何よその目は!私は天女よ!」 「ふざけるのも大概にしなさい!」 私は身体の痛みなんてなくなったのかというくらい、頭に血が上ってしまっていた。