小ネタ帳
此処は、お話に昇華出来なかった小ネタや、これからお話に昇華するかもしれないネタ達を書き留めた、所謂ネタ置き場です。主に、管理人の覚え書き処。名前変換物は*で表記。鍵付きについてはインフォページ参照。
▽吹き荒ぶ風鳴りの音は劈く。
元は、丸ごと没ネタ中編の「ひよっこ審神者と妹審神者。」の拾壱話目として掲載する予定だった物。サイト内改装に伴って各小説ページも新しくしたので、その際に「書き上げ切れずの中途半端のまんま上げてんのは流石にアカンやろ…。」と思って此方に移動する事に。
↓以下、本文(途中で終わる)。
【本文】
政府の役人であろう男に呼び止められた時点で、嫌な予感はしていたのだ。
会議室を出て真っ直ぐエントランスの方へと向かう予定だった足を、そのまま男の後を追うように進むべくそちら側へ向ける。
男は、近くの空いていた会議室に案内すると、私を中へ入るよう促した。
私は軽く頭を下げながら、従いつつ部屋の中へと入っていく。
私の後ろを付いてきていた鳴狐も其れに続こうとすると、前触れも無く制されたのだった。
訳が解らず疑問系の顔を浮かべて見つめると、男は不気味な気持ち悪い笑みを浮かべてこう述べてきたのだ。
「申し訳ないですが…此処から先は、審神者殿お一人でお願いしても宜しいですかな?」
『私一人…ですか?』
「ええ。此処から先でお話する事は、本丸をまとめ統治する指揮者の審神者殿に纏わるお話になります故…なるべくなら、審神者殿だけとお話したいと考えております。余計な諍(イサカ)いは避けた方が、両者の為にもなるとも思いますしね…?」
つまり、其れは、一種の機密事項に触れる話だという事だろうか。
それか…単に、彼等より刃を向けられる事を恐れた故の台詞だろうか。
どちらにせよ、彼等刀剣男士達が側に居ては話せない内容、という事なのであろう。
幸いにも、服の内に隠した今剣には気付かれていない。
という事は、恐らくこの男は“目に見える形で顕現している刀しか目に付いていない”という事なのだろう。
能力は然程高くなさそうだ。
ならば、このまま懐に隠した今剣には触れず、もう一人の護衛を連れてきている事を悟らせないよう口にしないままにしておくか。
此方としても、完全に護りが無くなってしまう事は避けたい。
少し逡巡しているように見せかけ、勿体ぶった後に口を開く。
『そういう事なのでしたら…解りました。では、近侍の鳴狐には扉の外で待機しておくように伝えましょう。其れで宜しいですか…?』
「ええ、ええ。ご協力、誠に感謝致しまする。」
『では、少々失礼…。』
一度男の前で背を向け、後ろに居た鳴狐の方へ振り向き、小さく短く言葉を伝える。
『…そういう事だ。悪いが、私が出てくるまで外で待機していてくれないか?但し、何かあっても、私の許可あるまでは中には入らない事。…良いね?』
「………解った。」
『良い子だ…。万が一、何かあろうとも私は大丈夫だ。もう一人の御守りが付いているからね。』
少し自分より高い位置にある頭を撫でて、彼の心配を減らそうとする。
その手を下ろす際に、するり取られてやんわりと握られる。
そして、彼のお供が小さく口を開いた。
「それでは、我々は部屋の外よりお護りしております故…何卒お気を付けて。」
『うん…ありがとう。』
お供の頭も一撫でしてから、一度の別れを告げる。
大人しく話を聞き入れた彼は、静かに扉の外へ行き、会釈して扉の横へ付いた。
その様子に、男は満足げに笑みを浮かべ頷き、会議室の扉を閉めた。
「話が解るような方で良かった…。貴女に付き従う刀も、さぞかし聞き分けが宜しいのでしょうな?いやはや、きちんと己の刀達を手懐けておられるようで安心致しました。」
『いえいえ…。』
謙遜の意を見せつつ、警戒と不審の気持ちは内にひた隠して、上辺だけの笑みを貼り付けた。
其れ程広くはない会議室の中、マンツーマンの楽しくもないお話が始まる。
男に促され、空いていた内の一つ席へ腰を下ろす。
相変わらず気持ちの悪い薄ら笑みを浮かべたままの男は、会議を執り行う長の如く机に肘を付いて手を組み、此方を見据えた。
「この度は、突然のお声がけに応じてくださり、誠に感謝致します。私、各所属国の下請け担当をしております、一役人の者でございます。都合上、名は伏せさせて頂きますので、此処ではただの黒服の男と思ってください。早速お話に入ろうと思うのですが…宜しいですかな?」
『はい…構いません。』
「では、お話に入る上で、一つ確認を…。相方、陸奥国所属の審神者殿、狛殿でお間違いないですかな?」
『はい。その通りですが…。』
「では、単刀直入に申し上げさせて頂きます。近頃、貴女の処の戦績は良くありませんねぇ…。始めて、もう直一年近く経つようですが、少し保守的過ぎるというか、進みが遅いように見て取れるのですよ。他の本丸ともあまり交流なさっていないのか、演練への参加は最低限といったところか…ここ最近は積極的にご参加なされていないようですね?演練での戦績にあまり進退が無いのが、何よりの証拠ですな。おまけに、相手方と手合せしての結果が、勝利した数より敗北した数の方が多い。此れは、自軍の隊への育成が不十分である事の表れではないですかな…?」
『その点につきましては、大変お恥ずかしゅう事と存じております…。私の采配が至らぬ事、誠に申し訳ございません。』
「別に、謝罪なんて求めていないのですよ。我々は、ただお手をお貸している分、遣る事は遣って頂きたいだけの事ですから。要は、きっちり成績は上げて欲しいだけです。でないと、強さを増すばかりの敵情勢に太刀打ち出来なくなりますからね。此方も手を子招いているのですよ。なかなか進展を見せぬ情勢にねぇ…。審神者の数は増えゆく一方ですが、その裏目で減りゆく手もあります。まぁ、こういう役職ですから…苦に思い辞めていく方は大勢居ます。ですから、今正に役目を続けてくださっている貴女方のような方には、きちんと成すべき事はこなしてもらいたいのですよ。嗚呼、勘違いされては困るので言っておきますけど、何も仕事をしていないとは言ってはいないので、悪しからずで。もし、言葉のあやでそう聞こえてしまったのでしたら申し訳ない。」
『…、いえ…大丈夫です。問題ありませんよ。』
予想はしていたが、ひたすらにネチネチと罵倒を食らうというのは、意外と精神に来る。
まぁ、忍耐力はある方だから、堪えられない事はないとは思うが。
無駄に男の怒りを買わないよう、目は一点を見つめて逸らさないように努める。
※了・続かない。
2020/03/16(22:43)
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