既視感。
鳥居の先に見ゆる者。
いよいよ以て審神者が神格化するとなった時、政府からの依頼で別のブラック本丸の解体作業へ派遣されるが、トラブルが起こり、一時的に彼女が昏睡状態に陥る事となる。
その際、意識は眠っていたけど、彼女の魂というか精神は燭台切光忠の本霊の神域にお呼ばれされていたり…という感じのネタ。
実は、彼の神域に呼ばれたのは今回が初めてじゃない。
補完枠としてぶっちゃけるが、彼と初めて逢ったのは、彼女の初期刀となる光忠を顕現させる直前の夢の時。
夢で出逢う猫神様達とは区別する為に、容姿とかの表現で差を付けたつもり。
一応、この時のお話の時点で、顕現するのは光忠という伏線を張ってた。
まぁ、何となく分からんでもないと思う。
取り敢えず、展開としてはこの長編物語の終盤に位置するお話だった。
▼以下、頑張って書いてたけど力尽きた本文なる。
その眼を開いた時には、何処か見知らぬ場所に居た。
また夢の中に入り込んだのか、はたまた、白昼堂々と見る白昼夢か。
恐らく、また夢の中であると思われるが。
気が付いた時には、知らぬ間に大きな鳥居が幾つも立っている場所に来ていた。
其処は、自身は知らない処のようだった。
しかし、感覚…五感的な部分では“知っている”と訴えていた。
何故だ。
自分は知らない筈なのに、脳は知っているという。
どういう事なのか。
其れを含めて、或る場所に来てしまった理由を探るべく、律子は一歩足を踏み出した。
慎重に、何処の土地なのかも分からない地を踏みしめ、歩き進める。
夢の中といえども、何が起きるか分からない。
故に、神経を尖らせ、警戒心を以て緊張した面持ちで鳥居を潜っていく。
気付かぬ間というか、其処まで意識を向ける事が出来ていなかった彼女は、神様が通るべき真ん中を通っていた。
幾つもの鳥居を抜けた先で、ふと、まだ先は続いているが、結界か何かを通り抜けた感覚を感じ、ザッと後ろを振り向く。
だが、後ろには今自身が通ってきた道が在るだけだった。
しかし、今の感覚は、間違いないものだ。
少し戸惑ったような表情を浮かべて正面へ向き直れば、其処は、先程まで見ていた先の道ではなかった。
大きな鳥居の続く道が、終わりを告げている。
恐る恐る、律子は足を踏み出し、最後の最も大きな鳥居の下を潜った。
すると、その先に何処かで見た人の姿をした誰かが立っていた。
一瞬感じた既視感。
思わず、瞬きを数回繰り返し、その者を下から上へと凝視していく。
脳が訴えていたのは、この事だったのか。
明らかに、自分は、彼を知っていると胸の中で落ち着いた。
見覚えのあるシルエットだ。
濃い紺色をした羽織は羽織っていないにしろ、その身が纏う黒い着物には見覚えがあった。
いつの日か夢に見た、彼だ。
確か、アレは…自身の初期刀とも呼べる燭台切光忠を顕現させる前に見た夢だった。
目の先に居る、彼がゆっくりと口を開いた。
「―君と直接逢うのは…此れで二度目かな…?」
耳に心地好い、聞き慣れた低音が鼓膜を通して聞こえた。
とても優しげな声音だった。
『光…忠……?』
困惑した色の目で彼を見遣る。
すると、総てを黒と基調する彼が小さく微笑んだ。
「…いつも僕の分霊達を大事にしてくれて、有難う。君の優しさは、彼を通してよく伝わっていたよ。」
静かに響いた言葉に、彼女は目を見開く。
『もしかして…っ、光忠…――否、燭台切光忠という刀の本霊そのもの……っ!?』
驚きの反応を見せる彼女に、彼はかの者を思わせる悪戯めいた表情を見せてこう言った。
「正解さ、僕等の愛しい栗原律子ちゃん…?」
その瞬間、薄暗かった辺り一面に明かりが灯ったのだった。
『ど…うして…、私の真名を……?』
「君が、彼に預けた時点で、僕等は共有してしまった…ただ其れだけの事だよ。僕は“燭台切光忠”という刀の本元だからね。水面下で全ての意識と繋がってるんだ…。だから、君の本当の名前も知っていた。」
『え……でも、其れじゃあ此処へは、どうして…?』
「僕が招いたからさ。此処は、僕以外の者は誰も知り得ず、また僕に招かれた者以外立ち入れぬ場所……つまりは、僕が作り出した、僕の神域。君の魂が堕ちてしまうのを救う為の処置さ。君はいつも無茶をするからね…目が離せなくて困ってしまうよ。」
『其れって、どういう………、』
加筆修正日:2022.01.11