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【Chapter.1_Class:Chaldean Master_Guda's twins(ぐだーず姉弟)】


 ここ最近の中では、最もゆったりとした時間の流れていた、人理修復機関カルデア。其処で過ごしていた少年少女は、久し振りに出来た暇な時間を持て余したのか、唐突な思い付きを発揮した。
「ねぇ、我が弟よ……暇だね」
「あぁ……暇だねぇ〜」
「……何か面白い事やらない?」
「例えば……?」
「ゲームとか」
「何のゲームするの?」
「ん〜……折角せっかくやるなら、カルデアに居る皆を巻き込んだ感じの楽しいゲームがしたいよね」
「皆を巻き込むって事は……つまり、サーヴァントの皆も巻き込んでのゲームって事?」
「そう」
「まぁ、楽しそうだから、俺は乗るけども……具体的にどんなゲームするか決めないとだね!」
「其れはもう決まってるから大丈夫」
「えっ。何? どんなゲームに決めたの?」
 共にマイルームのベッドに寝転んで駄弁っていた二人の内、片割れの姉がむくりと起き上がってこう言う。
「その名も、“愛してるゲーム”」
「はっ? 嘘だろ、正気か……??」
 おのが姉の発言に驚きを隠せずに、双子の片割れな弟は勢い良く体を起こして姉を見返す。しかし、姉の立香は悪い笑みを浮かべて肯定した。
「ふっ……一度は誰しもがやってみたいと思う事でしょう?」
「最悪、戦争が起きない……? 大丈夫?」
「其処んとこは大丈夫……っ。何たって、我等が同士須桜さんも巻き込むからね!」
「マジか!! 勇者かよ!?」
「真なる勇者は、東方の大英雄たるアーラシュだけよ、我が弟よ」
 謎に決め顔をキメて言い放った立香だが、言っている内容はぺらっぺらであるが故、非常に残念な様子である。しかし、藤丸からしてみれば、奮起するには十分だったのか、自信を取り戻したかのような表情で以てこう返した。
何時いつでも頼りになる須桜さんも一緒なら、何とかなりそうだね!」
「そう、我等が同士たる須桜さんも居れば、最早百人力よ……っ!!」
「そうと決まれば、食堂へGOだ!!」
「応ともよーっ!!」
 斯くして、発案者立香による、愉快で楽しいゲームの幕は上がったのであった。
 その名も、『愛してるゲームfestival!!』という名の、告白大会ゲームである。まんまかな……。
 食堂へ向かった一行は、カウンター席で飲み物を手にブレイクタイムを過ごしていたマスター仲間へと突撃した。其れも、無謀とも言えよう計画を吹っ掛ける為に。
「こんにちは、須桜さん!! 今暇かな!?」
「やぁ、ぐだちゃん達。凄く元気の良い挨拶だね。今日はどうしたの?」
「もし今暇なら、ちょっと付き合ってもらえないかな〜と思いまして!」
「うん? 何だかよく分かんないけども、手が空いてるのは事実だし、特に今遣る事も無いから、暇潰しに付き合ってあげなくもないよ?」
「有難う、須桜さん!! 大好き!!」
「おぉうっ……ソイツはどうも??」
 全く状況を掴めていない彼女は、頭に大量の疑問符を浮かべつつも、双子の勢いを受け止めながら笑顔で受け答えた。優しいかな。そんな優しさに付け込むが如く、双子の少年少女は期待に満ちた顔で悪魔の誘いを持ち掛ける。
「じゃあさじゃあさ……っ、“愛してるゲーム”やらない?」
「えっ、私とかい?」
「そっ! 一回やってみたかったのー!」
「須桜さんは、“愛してるゲーム”やった事ある?」
「うんにゃ、一度も無いかなぁ。そもが、私相手にやろうとする人自体が早々居ないからね。ネタとしてなら、一応知識はあるけど」
「じゃあ、やろう! 折角せっかくだし!!」
「はははっ、君達からのお誘いとあらば受けない訳には行かないなぁ〜。良いよ、その勝負受けて立とう……っ!」
「ヨッシャア!! 網に掛かったぜぇ!!」
「計画通り、ってヤツだね!!」
「う〜ん、今日も相変わらず元気がよろしいようで何よりだわーっ」
 頼もしく強い味方を付けた事で有頂天な二人は、そのままのテンションで無謀なまでの闘いを挑むのである。
「じゃあっ、先攻は私からね! 飛びっきりの愛を込めて口説いてみせるから、覚悟しといてよ! 須桜さん……っ!!」
「ふふっ……さて、勝敗はどうなるかな? とりま、立香ちゃんの方が先攻って事で、どうぞ〜」
「言ったね〜? じゃあ、マジで落としに行くから……惚れちゃっても知らないんだぞ!」
 須桜の促しに一度咳払いを挟んで改まると、盛大にイケ顔をキメて渾身の口説き文句を叩き付けに行った。
「須桜さん……愛してる。だから、この後、良かったら私と逃避行ランデブーしに行かない?」
「お〜っ」
「どうよ?」
「中々やるねぇ。でも、私も年下相手に負けてらんないなァ〜。ふふっ……じゃあ、今度は後攻という事で、私の番だね。心しといてね?」
 妖しく微笑み返したと思った途端、立香の顎をクッと上向けると同時に顔を近寄せ、こう返す。
「いつも元気な君が好きだよ……。ねぇ、もっと君の笑った顔を見せて? 嗚呼……そうやって照れちゃう君も可愛いよ、立香。……愛してる」
 先程の仕返しとばかりに、口説き台詞の最後に耳元でのリップ音付きでオチを付けた須桜。自身の番が終わるなり、余裕そうな笑みを浮かべて離れて言った。
「ハイッ! 私からの“愛してる”は以上となりまぁーっす! ふふふっ、どうだった……?」
「ッ……負け、ましたァ……!!」
「わぁーい、やったぁ〜! 私の勝ちだ〜っ!」
「クッ……ぐやぢぃッ〜!! というか、須桜さん狡くない!? 私の方は、ただ口説き文句喋っただけだったのに……っ! シチュエーション付きとか聞いてない!! 反則だぁッ!!」
 完膚無きまでに叩きのめされた立香は、大層悔しげにカウンターテーブルへ華麗な台パンを決めると、キッと目付きを変えて指差しで訴えた。だが、此れにも彼女は涼しげに返してみせるのである。
「最初にルール決めしてなかったから、反則にはならないよ? 飽く迄このゲームは、“互いに愛してると言い合って、何方かが先に照れた方が負け”っていう流れの勝負だからね。形は何であれ、勝負事であらば真剣にお相手するのが筋ってモンでしょ? じゃないと、相手に失礼だからね。故に、勝つ気で臨みました、という訳! この勝負、私の勝ちだぜ、立香ちゃんや」
「う゛〜っ! 仇取りは任せたぞ、弟よ!!」
「え゛え゛っ!! この流れで俺の番来るの!? 無理ゲー過ぎない!? 勝てる気全くしないんだけど……っ!!」
「まぁまぁ、言い出しっぺは君達なんだから、言い出しっぺの責任は取ってもらうぞ〜?」
「うぅっ……やるだけやってみるけども……っ、既にやる前から泣きしか見なさそうで何かなぁ〜」
「が、頑張ってください先輩……っ!」
「ま、マシュ……ッ!! うんっ、やれるだけ頑張ってみる……!」
「おーおー、見せ付けてくれおるのぉ〜っ」
 いつの間にやら野次馬が集まっており、その中に居た一人であったマシュが健気にも藤丸に対してエールを送った。此れを受けた藤丸は、奮い立ったようで、やる気を見せた顔付きで立香と場所を入れ替わる。そんな流れをゆるゆると眺めつつ、茶化しを投げるのは、大人の余裕だ。
 さて、勝負や如何に。
「じゃあ、えっと……順番は俺からでも良い? でないと、たぶん勝ち目無さそうだから……っ」
「構わないよ。さぁ、藤丸君の口説き文句を聞かせてご覧なさいな……?」
 余裕な笑みを崩さず待ち構える彼女に向かって、意を決した風の藤丸が口を開いた。
「ずっと前から須桜さんの事が好きでした! 心より愛しています! 結婚を前提にお付き合いしてください……っ!! …………駄目、かなぁ?」
「ははぁ〜っ、にゃる程にゃる程、そう来たかぁ〜……。ふむ、方向性的にはアリだと思うよ?」
「グッと来た!?」
「恥じらいながらも真剣に告白する雰囲気は素敵で非常に良かったと思う! もし、此れがゲームではなくガチの本気の告白だったとしたら、年下とか関係無しにコロッと落ちたかもね……!」
「じゃ、じゃあ……っ!」
「王道な感じで攻めた事に対しては、素直に評価しよう」
「やったぁー!」
「ちょっとぉ!! 私の時は、評価とか何にも無かったと思うんですけど、此れ如何に!?」
「まぁまぁっ! まだ、勝敗は着いてないんだから、焦らない焦らない……っ! じゃあ、私の番という事で……覚悟は良いかい、藤丸君?」
 先攻の番が終われば、お次は後攻の番が回ってくる。率直に心の準備は出来たかを問うてきた彼女の言葉に、藤丸はゴクリと生唾を飲み込んで緊張した面持ちで頷いた。其れを確認した須桜は、一呼吸分の間を挟んで態度を改まると、慈愛に満ちた笑みを浮かべて言った。
「私なんかが言うのは烏滸がましいって分かってるけど……せめて、此れだけは言わせてね。藤丸……私は貴方の事を愛してるわ。例え報われないと分かっていても、どうかこの言葉だけは覚えていて……大好きよ、藤丸。愛してる」
「ッ〜〜〜!!」
 ほんのちょっぴり寂しそうで儚げな雰囲気を滲ませての“愛してる”に、心を打ち砕かれた様子の藤丸は悶えるように顔を覆い隠してテーブルへと突っ伏した。そんな少年の様子に、勝利を確信している須桜は打って変わってニヨニヨとした笑みを隠さずに告げる。
「さぁ、勝ち負けの判定をどうぞ……!」
「こんなん勝てる訳が無いぢゃんか、ドチクショウッッッ!! 俺の負けですよ、もぉ……ッ!!」
 「わぁッッッ!!」と感情を露わに負けを認めた彼の言葉に、須桜は連勝を誇るように両拳を突き上げて盛大なガッツポーズを決めた。大人気無い事この上無いが、勝負事を前に大人も子供も関係無いのである。その証拠に、彼女は一切手を抜く事は無く、相手に応じた最大限のパフォーマンスを行ってみせた。故に、負けた事は悔しいものの、舐めて掛かったが故の当然の結果として受け入れたのである。
 其れにしても、たかがゲーム如きに本気を見せるとは、大人気無さ過ぎやしないだろうか……。しかも、相手は一回り程も年下の少年少女達だ。このままでは終われないと思ったのだろう双子達は、顔を見合わせるなり、当初の計画へ移る事にした。
「何か、このまま負けっ放しなのは面白くないから、須桜さんに勝てる猛者を募集しよう」
「出来る事なら、確実に須桜さんが落ちるであろう人達を味方に付けよう。うん、そうしよう」
「君達が考えた事なんだし、私は別に構わないよ? 私を落とせるか否か、見物じゃないか……っ。喜んで受けて立とうじゃねーの?」
「よしっ。じゃあ、手短な相手に頼むとして……誰が適任か……」
「此処に居るだけでも、かなりの大人数の人達が居るから、誰にしようか迷うね?」
「いやぁ〜次のお相手は誰かなぁ〜? 楽しみで仕方ないね!」
「そうやって高を括ってられんのも今の内だからね! 今にその余裕崩してやる……っ!!」
 そんなこんな、双子の突発的思い付きに巻き込まれ、餌食とされる哀れな子羊は一体誰なのか――?
 答えは、Next soon☆

さてさて始まりました、推しキャラ×愛してるゲーム……!開幕初手のお相手として、一度は絡ませたかったくだーずを選出させて頂きました!全ては俺が読みたいが為のお話を生み出す為……!!次回もお楽しみに――☆


執筆日:2023.05.28
加筆修正日:2024.01.29
公開日:2024.01.29