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Q.一緒にお出掛けした際、隣立って歩いていたら彼女が後ろ背に服を掴んで付いてきました。

パターン:坂本龍馬の場合。


 すぐには言い出さないものの、暫くしても何も言わず離さない様子なのを見て、坂本さんはそっと控えめに理由を問うてきました。


「えっと…あの、マスター?どうかしたのかい…?」
「へ…?」
「いや、僕の服を掴んできたから、どうかしたのかと思ったのだけど…何か僕に用だった?」
「え…っ、いや、別に用とかは無いけど……」
「え………じゃ、じゃあ、どうして僕の服を掴んだのかな…?」
「え?あ……っ」


 改めて問うてみたら、無意識だったという風に手を離した彼女は、少し恥ずかしげに視線を横に逸らして言いました。


「ご、御免…っ。何か坂本さんの側は安心するから、其れで…つい」
「え…っ、」
「私、家族みたいに親しくて信頼を置けるような人と歩く時、よくその人の服とか鞄の紐とか掴んじゃう癖があるみたいで……その、嫌だったり迷惑だったなら、御免なさい…っ」
「あ、いや…っ、そういう事だったなら全然構わないよ…!」
「良かったな、リョーマ。リョーマの側は安心するだそうだぞ。まぁ、それは当然の事だろうな。このお竜さんも一緒に居るのだからな」


 ついやってしまった事でしたが、迷惑だっただろうかと思い込んだ須桜はシュンと一人落ち込んだように俯きました。
其れに対し、彼は真摯に向き合い、彼女へ再び声をかけると、彼女の目を真っ直ぐと見つめて言いました。


「マスター、顔を上げてくれないかい?」
「…うん?」
「僕はね、マスターが僕の事をそんな風に思ってくれていたんだって知れて凄く嬉しいよ。君にそこまで信頼されるまでに絆を深めれていたんだなって。だけど、後ろ背に服を掴まれてると何かあった時に対応出来ないと不味いし、マスターの事を守れないという事だって起こり得るかもしれないんだ。何より…そのままだと何かに躓いた時危ないからね、君さえ良ければ手を握っていてもらえると嬉しいな…?」
「え…っ。い、良いのかな?寧ろ…。お竜さん、怒っちゃったりしない?」
「え?あー…っと、それはどうだろ…?」
「うん…?そんな事でお竜さんは怒ったりなんかしないぞ。お竜さんは寛大だからな。マスターが相手なら許してやろう」
「――だ、そうだ。だから、安心して僕の手を握ると良いよ。はい、どうぞ」


 そう言ってにこりと柔らかな笑みを浮かべて片手を差し出してきた彼。
彼の相棒であるお竜さんからも了承を得たという事で、須桜は彼の手の方へそっと自分の手を伸ばしました。
その手をしっかりと掴んだ彼は、彼女をエスコートするように歩き出しました。

 坂本はその時、内心では彼女に頼られたと同時に兄のように思ってもらえて嬉しく思っていたのでした。


「これからは、僕とこうやって歩く時、掴むのは服じゃなくて手を掴んでね。僕は君のサーヴァントだし、遠慮はしなくて構わないから」
「…うん。有難う、坂本さん」
「どういたしまして」


 にこやかに笑い返した彼女の様子に、彼もにっこりです。

 そんな二人の様子に段々とつまらなくなってきてしまったお竜さんは、ちょっとだけ嫉妬してしまったようで。
少しだけ不機嫌そうな顔ですいーっとマスターである彼女の隣へ寄ると、自身の手を突き出して言いました。


「むぅ…っ、何だかリョーマだけ狡いぞ。お竜さんも混ぜろ!」
「ええ…っ!?」
「お竜さんもマスターと手を繋いでやる。だから、ほら、空いてる方の手を貸してみろ」
「え、えぇ…っ?そ、そんなに私と手ぇ繋ぎたいの…?」
「リョーマばかり良い顔はさせられないからな。偶には私だって頼られたいぞ」
「あれま…っ、あのお竜さんがやきもちを妬くとは…」
「という訳だから、今からお竜さんの手も繋いで良いぞ。寧ろ、積極的に繋いで欲しい。どんどん繋いでくれ!」
「で、でも、お竜さん宙に浮いてるから…手ぇ繋ぎづらくない?」
「む…っ、それもそうか…。なら、暫くの間だけはいつもより少し低めに浮くとしよう」
「彼女と手を繋ぐっていう事だけは譲りたくないんだね?お竜さん…」
「当たり前だろう。お前ばかりに良い気はさせないからな」
「ははは…っ、そりゃそうだね。それじゃあ、三人で仲良く手を繋いで帰るとしますかっ」


 最終的に、手荷物は二人が片方ずつ持ち、彼女の手は彼等の空いた側の手に繋がれる事となったのでした。


A.坂本さんとお竜さん二人と手を繋ぐ事になりました。

史実上末っ子である坂本さんがもし兄みたいにマスターに頼られたら、絶対嬉しそうにするし内心喜んでるだろうなぁ〜と想像した結果がこうなりました(笑)。坂本さんとお竜さんコンビの何気ない感じで仲良さげなところが好きです。


執筆日:2019.06.04
加筆修正日:2021.10.03