「…なぁ。アンタの事、神隠しする程好きだって言ったら…困らせるか?」


そう、何の前触れも無く、いきなり突然言われた。

私は塞がらない口を開けたまま、取り敢えず意味が解らないとの返事を返す為、「は……?」との言葉だけを返した。

いきなりどうしたんだ。

そんな意図も含めて、私は彼を見遣る。

今、私と彼は、適度な感覚と距離を置いて二人同じ縁側に並んで腰掛け、夕餉の手伝いで野菜の皮剥きをしているところだった。

畑で取れた大量のじゃがいもの皮を剥きつつ、芽を繰り貫いておくだけの簡単な作業。

しかし、其れもこうも数が多くては大変だから、何人かで分担してこなしているのだった。

丁度日課のお仕事も終えて暇をしている時だったから、其処に厨当番だった者がやって来て「暇で手が空いてるようなら手伝ってくれ。」と言って、大量のじゃがいもの入った籠を手渡してきたのである。

素直に頷いた私達は、こうして揃って縁側に腰掛けたまま、黙々と皮剥き作業を行っていたのだが…。

何を思ったのか、唐突にそんな事を言い出した彼に、私は平時と変わらぬ態度を返した。

言われた意味がよく解んなかったから訊き返したのだが、訊き返されたのは話がよく聞き取れなかったのだと勘違いした様子の彼が、また同じ文言を口にするのだった。


「だからさ…アンタの事、神隠しする程好きだって言ったら困らせるか?って言ったんだ。」
『え…神隠し?』
「嗚呼…引くか?」
『…いや、そりゃまぁ、いきなり言われたら、なぁ……。引くっつーよりは驚くけど…。』
「…そうか。」


料理下手で不器用な私は、ド素人でも安全なピーラーを使ってショリショリと皮を剥く。

私が剥いたそのじゃがいも達の芽を、刃物の扱いに慣れた彼が小型の包丁を使って繰り貫いていく。

そんな感じで作業を分担して、大量のじゃがいもを捌いていた。

たぶん、今夜の献立はカレーかな…。

彼に吹っ掛けられたよく解らない告白染みた会話をしながら、その他所で頭ではそんな下らない思考を繰り広げていた。

私、あんま辛いの得意じゃないから、出来れば甘口…もしくは中辛でお願いしたいな。

スパイス辛いのも苦手だけど、ただひたすらに辛いだけなのも苦手だから。

短刀達も居るから、たぶん二種類くらい辛さを分けた物を用意してくれると思うけども。

ショリショリ地味に作業を続けながら思った事を口にした。


『…さっきの話だけど…好きって言ってもらえた事に関しては、別に迷惑だとか思ってないからね。好意を持たれる事自体は、純粋に嬉しいし。嫌われたり存在を拒絶されるよかは、好きだって思ってもらえてる方が嬉しいしね。』
「…ふぅん…。なら、やっぱりいきなり神隠しってのはまずいんだな。」
『まずいっていうか…いきなり過ぎて戸惑うっていうか?んー…、流石にいきなり其れだと、ちょっと怖いかな、って思っちゃう感じかなぁ〜。』
「…成程な。参考になった。ありがとな。」
『うん。…………うん?』


取り敢えず、彼の事を否定した訳ではない旨を伝えると、何やら自己完結的に納得した様子の言葉が返ってきた。

…何だったんだろ、今の。

剥き終わったじゃがいもを彼の担当籠に転がし入れる。

其れを彼が受け取って、慣れた手付きで芽を取っていく。

そんな感じで、静かに流れ作業は終わっていった。

剥き終わったじゃがいも達を厨当番の者達の元へ届け終えた後に、先程の会話の件でふと思った事を、部屋へと戻る最中の廊下でぽつり、問うてみた。


『…ところでさっき神隠しがどうとかって言ってきたけど、何で神隠しなんて言葉出てきたの…?』
「嗚呼…ソイツは、俺達も曲がりなりにも神の位だろ?だったら、やろうと思えば出来んじゃねぇかなァ…、と思って言ってみただけだ…。一応、末席ではあるけど、付喪神だからな、俺も。」
『成程ねぇ〜…。……ん?という事は、何かやる予定でもあるとか…?』
「…いや、今すぐどうこうするって気はねぇから安心しろよ。…其れに、神隠しすんなら、アンタの真名知っとかなきゃ出来ねぇ事だろうしな。力ある神さん程俺達は力無ェから、たぶんアンタの真名を聞いとかねぇ限りは実行不可能だ…。」
『……其れって…遠回しに私の本名教えろ的なアレですかい…?』
「…いや…まだその気は無ェから、言わなくても良い。……真名は命と同じくらい大事なモンだ。そう簡単に差し出すモンでもねぇよ…。俺がその気になったら訊くから、その時アンタにその覚悟が出来てたら教えてくれりゃ良いさ。」
『…じゃあ、まだ言わなくても良いって事かいな?』
「…嗚呼。まだ、その時じゃねぇからなァ…。」
『…はぁ。』


よく解らない回答を貰ってしまった。

しかし、まぁいっかとお気楽に考え、のほほんと構える私を、ちらり隣を歩く彼が横目で意味深に見つめてきていたとは知らない。


―其れから数日が経つ。

政府集まりの定期的報告会な審神者会議に出席し、本丸に帰ってきて一番に自身の部屋へと戻ると、部屋の中が飛んでもない状況になっていた。


『うわっ、何じゃこりゃあ………ッ!?』


何故か、部屋中溢れんばかりの赤色の薔薇で埋め尽くされていた。

其れも、足の踏み場も無いくらいに…。

帰宅して早々の飛んでも状況に、私は思わず大きな声で盛大に叫んでしまった。

此れ、一体何本あるんだ…?

何がどうなったらこんな惨状になるんだ、と思わざるを得ない部屋と化していた。

部屋の入口で混乱したまま突っ立っていたら、今しがた叫んだ私の声に聞き付けて来たんだろう。

先日、唐突に変な会話を投げかけてきた彼が、私の元にやって来た。


「どうした?何か叫んだっぽい声が聞こえたが…。何かあったのか?」
『いや、何かあったのレベルじゃねーよ…!部屋!執務室、私の仕事部屋…っ!見てよ、この惨状!?どうしたらこんな事になんのよって並に凄い事になってんるんすけど…ッ!?足の踏み場もねぇんだけど…っ!!此れ、もしかして鶴さんの仕業か!?あの吃驚爺の仕業か…!?』


悪戯大好き驚き大好きの何処ぞの鶴が仕掛けた吃驚だろうか。

この惨状を見て、真っ先に思い浮かんだ事と其れをやらかし兼ねない対象の人物の名を思い浮かべ、そう口にした。

そしたら、思わぬ回答が彼の口から返された。


「いや…此れやったの俺で、彼奴じゃねぇけど。」
『え…っ!?鶴さんじゃなくて、お前がやったの…!?』
「おう…。この間、神隠しはねぇだろって言われたから、花なら良いかなって思って買ってきた。…ちなみに、鶴丸の奴が言う“驚き”の為にやったんじゃねぇからな。」
『………マジか…。いや、にしてもこの量はねぇよ……。何本あんの?此れ…。』
「適当に百万本。」
『ひゃっ、百ま…ッ!?……幾ら何でも度が過ぎるってモンだろうよ…。よくんな数の薔薇買おうと思ったな……つか、よくその量が運良く花屋に揃ってな…。その花屋の薔薇の在庫、根こそぎ全部買い取った勢いなんじゃねぇの…?大丈夫かな、その花屋……まぁ、売り上げ良けりゃ、店側としちゃ助かるのか?…と、まぁーソイツは置いといてだな。花束にするにしても、コイツァないだろうよ…。最早、此れ、部屋ん中薔薇風呂になってるんすけど。片付けどうすんのよ………。』
「…花でも駄目だったか?」
『いや…駄目っていうか、量が半端無さ過ぎて突っ込みにも困るっていうかな…。こういうの、多けりゃ良いってモンじゃないのよ?確かに、薔薇は花束として贈る時、その本数によって花言葉の意味が異なったりするらしいけどもさ…。』
「…ちなみに、俺もその考えでこの花用意したんだけどさァ…意味、伝わってるか?」
『……………え。』


まさかの回答がぶっ飛んできて、思わず思考が一瞬フリーズした。

あの花とは無縁そうな戦馬鹿の、脳筋質実剛健なたぬさんが、まさかの…?

何か言いたげだが、しかし、此方の反応を待っている様子の彼を見て、一先ず我に返り、頭を抱えた。

マジかよ…嘘だろ?

吃驚爺が何時も仕出かす驚きより驚いたんだけど…。

というか、ぶっちゃけ物凄い衝撃受けたんだけど。

どうすりゃ良いのよ、この状況…。

取り敢えず、一通り考えて思考が一周したので、反応を待っている彼に返事を返した。


『………確認の為、一応訊くけど…どの意味のつもりでこの量にしたのかな…?』
「えっと…アンタに好きが溢れて堪んねぇから、其れが少しでも伝わってくんねぇかな、と…。本で調べて見た時、三六五本だと“毎日あなたの事を想っています”って意味だったから、其れならもっと多くしてやれば、アンタに俺の気持ちが伝わるかな…って思ってさァ。」
『……………おぅふ…っ。』


思考が、此れ以上はキャパオーバーだと訴えてきた。

心なしか、頭痛がしてきたような気がする…。

「ウチの子の頭は大丈夫かな?」と少し心配になった。


『………取り敢えず、礼だけは言っとくね…。有難う。』
「ん…。次は、また別の方法を考えとく。」
『……そうっすか…。まぁ、此れだけは言っとくと…部屋中埋め尽くす程の量用意すんのはどうかと思うし、流石に引く…。あと、些か恐怖味を感じざるを得ない気もするから…あまりお勧めはしない。物事には限度ってモンがあるからね…其れを忘れないようにしようね?』
「…解った。」
『…うん……。じゃ、此れ、どうやって片すか一緒に考えよっか…。全部をいきなり即捨てちゃうのは流石に勿体ない上に可哀想なので…この中の数本は花瓶にでも挿して部屋に飾ったりして、欲しい子が居れば、その子等に好きなだけあげて…。一、二本は押し花にでもして記念に取っておこうか。他で余った一部は、歌仙とか雅ーズの部屋の生け花として提供して…其れでも余っちゃう残りの分は、風呂にでも持ってって浮かべる用に使っちゃおう……!うん、此れで良し…っ!!』


大量発生した薔薇の処理法が決まったところで、早速その処理に二人一緒になって取り掛かる。

後から騒ぎを聞き付けた鶴さんに、入口付近のみ何とか片付け終わらせただけの部屋の惨状を見せてみたら、予想以上に驚かれた。

おまけに、あの鶴さんでも流石にしないと言われた。

うん…まぁ、常識の範囲を逸してるのだけは解るよね。

お花は嫌いじゃないけど、あんまりたくさんの量貰っても処理の仕様に困るから気を付けようね、とだけは伝えた。

彼が其れを理解し切れたかどうかは知らない…。


―そんな珍事件から、また数日が経った日の事。

日課の仕事を終えて、まったりのんびりお茶を飲んで過ごしていたら、何やらとことこと部屋へとやって来たたぬさん。

今度は何を言い出し、何を仕出かすのかなと、一瞬だけ身構えるようにして見てしまった。

其れに気付いたのか気付いていなかったのかは解らないが、彼は徐に手に持っていた一枚の紙を私に寄越してきた。

何なんだろうと疑問に思いながら、私は其れを受け取る。

見ると、彼に渡された紙は、なんと婚姻届なる代物だった。

実物を目にするのは初めてだなぁ〜、なんて思考が、宇宙を広げる脳内に浮かんだ。

何でこんな物持ってんの…。

というか、どっから手に入れたの。

何故か、斜め上な思考がこの紙の入手ルートは何処だという事を疑問として掲示した。

俺の頭もバグって来てるのかな…?

首を傾げつつ記入済みの婚姻届を見遣っていると、ずっと無言で此方を見つめていた彼が漸く口を開いた。


「…其れなら、この間までのヤツよりかは意味、ストレートに伝わるだろ…?」
『……えーっと…、此れは…つまり、その………っ。』
「…俺は、アンタの事が好きだ。此れから先もずっと、叶うならアンタの側に居続けたいと思ってる…。俺のこの言葉の意味を正しく理解した上で受け取ってくれんのなら…その紙の空白欄を埋めて欲しい。仮のモンでも、審神者としての名前のままでも良いからよ…。アンタが俺の事を好いてくれてるって証を、俺に見せてくれ…。」
『……………。』


叱られて悄気てしまった犬みたいな表情だった。

何を其処まで気にしてしまったのかは解らないが、別に私は本気で彼の事を拒むつもりはないし、否定をした事も邪険に扱った事も無かった。

だけども、彼は、まるで私の反応を伺うように色々な事を試しては私の反応を見ていた。

…此れは、たぶん、きっとそういう事なんだと思う。

そう、思う事にする。

というか、もうそう決めた。

だから…私も、彼に応えてあげようと思う。

なかなか思うように言葉を言えない、態度に出せない、臆病者な私を想ってくれた彼へ。

私は感謝の気持ちも込めて、彼に渡された婚姻届の空白欄を埋める為に、筆を取った。

彼が、その様子の流れに目敏く反応を示す。

“本当に良いのか…?”と不安に揺れる金の瞳が、そう言っているようだった。

私は、其れさえも受け入れるように微笑みを返して、自分の分を記入した婚姻届を一度彼の手元へと手渡した。


『…ハイ、書き終わりました。後は、私の印鑑と証人になってくれる人の欄を埋めれば完成だよ。』
「……良いのか?本当に…。本気で俺が相手で良いのか…?」
『だって、そういう意味で渡してきた物でしょう?其れって。』
「そう、だけどよ……こんなあっさりと了承されるとは思わなくてよ…。」
『あんだけアピールしときながら…今更なんじゃないの?』
「でも…っ、…アンタは、俺がアンタの番の相手で良いと、本気で思ってんのか……?」
『…じゃなきゃ、その紙の空白欄埋めるどころか、受け取りもしてないと思うけど…?』


そう意地らしく返してやれば、彼にしては珍しく表情を歪めて見つめてきた。

私は、出来得る限りの優しい笑みを浮かべて、努めて柔らかな口調で想いを口にした。


『……待たせちゃってごめんね。其れと、こんな臆病で引っ込み思案な私を好いてくれて有難う。此れからは、たぬさんから貰った気持ち、少しずつでも返していくから…。不束な者ですが、どうぞ宜しくお願いします…!』


想いを告げ終えた途端、彼から飛び付く勢いの熱い抱擁を貰った。

勢い余って後ろに倒れ、畳に背中を打ち付ける羽目になったけど、此れはきっと幸せな痛みの一つだと思って受け入れる事にした。

彼が至極幸せそうに笑ってくれるのなら、こんな小さな痛みは痛みの内に入らないだろう。

私が彼の想いに応えたからなのか、彼は凄く嬉しそうな顔をして笑った。

その如何にも嬉しさが弾けて漏れ出たみたいな照れ笑いが、今の私にダイレクトに響いて、内心悶え転がる。

二人一緒に笑い合えてるなら、其れ以上の幸福は無いと私は思った。


―後に、漸くくっ付いたよの報告を初期の頃から居た面子の方々へ告げると、貰った反応が此方…。


「え…っ、漸く……?」
「寧ろ、まだくっ付いてなかったんだね、という事に驚きだよ…。」
「おーおー、ようやっと納まるところに納まったかよ…?おっせぇなぁ〜。」
「うんうん。思ってたよりも遅かったよね。」
「もう…っ、おふたりともおそすぎます…!これいじょうじれるのでしたら、ぼくがちょちょいといけんして、せなかをおしてやろうかとおもってたんですよ!!まったくもうっ、おふたりとも、みためにはんしておとなしすぎるうえに、おくてすぎてこまっちゃいます…っ!!」
「お、おめでとう、ございます…!主様、同田貫さん…っ!お二人が、晴れてこ、恋人同士になられて…僕、とっても嬉しいです……っ!」
『……ねぇ、まともに祝福してくれんのが五虎ちゃんしか居ないんだけど…どういう事よ?』
「いやぁ〜、そりゃ仕方ねぇってモンだな。だって、旦那等…随分と手こずってるみてぇだったから、俺達皆やきもきしてたんだぜ?早くくっ付いてくれないモンかね、と。」
「…マジかよ。」
「大マジだ。」
『…ほぁ…っ。な、何か色々とご迷惑をおかけしたみたいで、すんませんっした……っ。』
「本当其れなぁ〜?全く、見てる此方が焦れったかったっつーの。」
『あぅ…っ、変なとこで尻込みしてしまい申し訳ございませんでした…。』
「其れは、たぬきの旦那に言ってやれよ。大将に対して一番苦労してたのは、頑張ってアピールし続けてたたぬきの旦那の方なんだからさ。大将、鈍過ぎる程に鈍かったからなぁ…だいぶ苦労したんじゃねぇか?」
『…す、すまねぇ、たぬさんや…っ。そ、そんなに想われてただなんて露知らず…曖昧な態度ばっかり返してごめんよ……!』
「いや…もう其れについては解決したっつーか、報われたから良いよ。ずっと思ってた事は叶ったんだし…。後は、アンタがもうちょい素直になってくれたら良いなァと思ってるくらいか…?」
『…………そんなに私、たぬさんの事迷わせてたのかな……?』
「全てを解ってくれた上で受け入れてもらえて良かったですね、主君…!」
『………Oh……ッ。』


祝福の言葉と同時に、愛ある罵倒も交えたご指摘のお言葉を貰い、何だか凄く居た堪れなくなってしまった。

次いで、こんな事まで聞かされちゃったから、私の脳内では大波乱の幕開けとなってしまうのである。


「おまんがあんまりにも告るの遅いき…焦れてわしが先に主に告っちゃろうちや思うちょったんぞ?感謝せえよ…わし、主の事思うて我慢しちょったんじゃきにゃ。」
「は……?」
『え……っ?』
「あ、そうそう。主の事、そういう風に思って見てたの、此奴以外にも何人か居るからね〜。」
「例えば…長谷部とか長谷部とか、曽祢さんとか山伏さんとか、あと燭台切さんとか、巴形さんとか…意外にも、まんばとか蜻蛉切さんとかもそうだったかな?」
「実は兼さんも初めはその内の一人だったんだよね!ねっ、兼さん?」
「お、おおおおお前国広…ッ、本人が居る前でバラす奴があるかよ……ッッッ!!」
『…そ、そんな皆に想われてたの?私って…。全然気付かなかったんだが………っ。』
「……今聞いた奴等全員、一発かましてくる…。」
『ちょ…っ!?ぼ、暴力は駄目だってぇ…!!平和に解決しよ!ねっ!?頼むから、流血沙汰だけは避けてぇ〜………ッ!!』


気に食わない奴全員血祭りに上げようとする勢いで部屋を出て行こうとしたたぬさんを、私は必死で止めた。

結局殴りには行かなかったものの、暫く拗ねて機嫌が悪かったので、宥め甘やかして軟化させるのに苦労した…という事は皆には内緒にしておこうと思う。


「ところで…主がたぬきと結婚するって決めた決め手って何だったの?」
『え…?えーっと…既に記入済みだった婚姻届を手渡された時、かな…。』
「え。其れ………ってどうなの?普通、プロポーズを受けた時とか、甘い言葉囁かれた時だとか、何か主だけにプレゼントくれた時とかじゃないの…?っていうか、記入済みの婚姻届って…其処はせめて指輪じゃない?つか、いきなり其れだとちょっと怖くない…?」
『……まぁ〜、此れまでの珍事を思うと、一番マシかな?って思ったからねぇ〜……。』
「あ゙ー、そういう…ね………。」


微妙な笑みを浮かべ、呆れた空気を匂わせる、本丸始まって以来付き添ってきた我が初期刀様な清光だった。

…本当、最後のが一番マシだったんだよ、という事は本人には言わないでおく。


執筆日:2019.10.24

【後書き】
シチュエーション固定なお話ではありましたが、テーマ故に一見「不穏な感じになるか?」と見せかけて、かなりのドタバタわちゃわちゃとした楽しい雰囲気の結婚騒動話と相成りました。
夢主に対して、内心どんな事でも許してくれるだろうと思ってるたぬさんですが、しかし実際は奥手且つ不器用にしか接せれない感じに仕上がってますね。個人的、自分の中で彼は器用なんだけども変なとこで不器用なイメージを持っていて、そんなイメージを表立って出した感じのお話になりました。
ぶっちゃけ、書いててめちゃくちゃ楽しかったです。
凄いテンション高めにざっかざっか書き進めていった記憶しか無いですね(笑)。
暗めの雰囲気なお話が続くと、こういうほんわか明るめで和む感じのお話を書きたくなる事が一定期間であります。今回がたぶん其れです。
取り敢えず、不器用だけども審神者の事を恋い慕ってくれてるたぬさんが書きたかっただけです。
素敵な企画をご用意してくださった中禅寺様には大変感謝なのです。
この場をお借りして、改めて御礼申し上げたいと思います。
この度は、素晴らしき企画にて私の書いた稚作を並べてくださり、誠に有難うございました。
※尚、当作品は、診断メーカーの(518676)(539268)(577880)を参考元に執筆しております(規約確認済み、企画サイト様側にも許可・確認済みです)。