君との将来を思い描く
WBCの試合が行われる中、各所では物凄い盛り上がりを見せていた。
其れは、各企業や各家庭内などでも例外ではなく。世の中の盛り上がり様に倣うように、特別好きという訳ではなくとも、周りの波に乗っかって一緒に盛り上がりたいニワカ勢も揃ってお祭り騒ぎである。
まぁ、此処日本という国は、総じてお祭り好きな性分が昔からDNAに組み込まれたかのような印象を受ける。故に、誰も彼も関係無く、夢中になってテレビの向こうの選手達を応援していた。
周囲の盛り上がりの波に乗るのは、此方も同様らしく。試合の様子をライブ中継しているのをテレビで一緒に観戦しながら御飯を食べていた、仲良し兄妹の金属バットとその妹・ゼンコ。其処に混じるは、二人と仲の良い、レオである。
偶々、夕飯の買い出し中に遭遇し、此れも何かの縁だと“夕飯を共にしないか?”と誘われたのが切っ掛けだ。兄妹と知り合って以来、何かと縁のある彼女は、此れを断らず、素直にお宅へお邪魔する事を選んだ。
三人仲良く食卓を囲みながら、今しがたまで見ていたテレビの試合の様子を交えて、レオが話題を投げる。
「テレビ見てて思ったんだけど……バッド君なら、プロ野球選手に負けないくらいの力でフルスイング一発かまして、怪人の一匹や二匹余裕で撃退しちゃうよね。其れ思うと、今画面の向こうで騒がれてる著名な選手達よりも、バッド君のが断然つよつよなんじゃないかって思わない?」
此れに、名を挙げられた本人は、御飯を掻き込んでいた手を止めて返した。
「いや……流石に其れは買い被り過ぎっつーか、そもそもが話のジャンル自体が違うっつーかなぁ……っ。端から立つ土俵が違ェから、比べるのも烏滸がましいって言った方が分かりやすいのか? 俺は飽く迄、最も使いやすくて手に馴染む武器として金属バットを選んでるだけであって、プロの野球選手等と比べんのは、ちと話が違うってもんだろ……っ」
「でも、実際お兄ちゃんの方が強いでしょ?」
「まぁ、なぁ……っ」
思わぬ妹からの追随に、兄である彼は複雑そうに濁すような返事を零した。
そんな様子に、ゼンコの隣で眺めていたレオは、微笑ましげに口を開く。
「ゼンコちゃんが認めるくらいなんだから、自信持ちなよ
「んなっ!? どさくさ紛れてお前ェまでゼンコみたく“お兄ちゃん”とか呼ぶんじゃねーよ!!」
「あら、駄目だったかしら……?」
「そっ、そんなの当ったり前ェーだろうが……ッ」
「いや、だから何でさ??」
揶揄いを含んだ物言いに、此れまたはっきりと動揺する様を見せた彼は、あからさま照れの滲む様子で突っ返してきた。曖昧な言葉で話を区切ろうとする彼に、純粋に意図が伝わっていないらしき彼女は首を傾げて問う。
此れに、今度は妹の方が察したらしく、ハッとしたみたいな顔を浮かべたゼンコが口を開いた。
「あ、私分かっちゃったかも……っ」
「えっ、何々、教えてゼンコちゃん!!」
「お兄ちゃんは素直じゃないから、私がこっそり教えてあげるね……っ!」
「あっ、おい! ゼンコ……!?」
兄には直接聞かれたくないのか、女子同士の内緒話に耳を貸してくれとジェスチャーを送った。その意図を正しく理解したレオが、妹のゼンコへと顔を寄せて耳をそばだてる。すると、ゼンコは前置きをしてから、こう囁いた。
「たぶんね、お兄ちゃんが言いたかったのはこういう事だと思うよ……! ――妹=身内だったら、結婚出来なくなっちゃうから、レオお姉さんには“お兄ちゃん”扱いされたくないんだと思う。バッドお兄ちゃん……お姉さんの事、異性の対象として見てるっぽいから。お兄ちゃん、ああ見えて結構単純だから、落とすのは簡単だよ! 女の武器使えばコロッと落ちると思うから、頑張ってね……っ!!」
女同士の秘密の内緒話から除け者にされた男は、何処か悔しげなオーラを纏って悲しい遠吠えを発するのだった。
「ゼンコーッ!!」
「お兄ちゃん、うるっさい!!」
「う゛っ、ご、御免て悪かったって……。だから、俺だけ仲間外れになんてするなよゼンコ〜っ」
「ふふっ……相変わらず仲の良い兄妹だこと!」
そんな彼と家族になったら、こんなに可愛い
公開日:2023.03.18