どうしようもない彼に寄り添う
或るところに、飛んでもなくお人好しの奴が居た。
ソイツは、善も悪も区別無く人を愛するような奴だった。
けれど、その分、何かが欠けた、何とも哀しい奴でもあった。
誰よりも誰かを助けたくて、救いの手を伸ばしたくて、だけども、掬い取るべく伸ばした手からは何もかも擦り抜け落ちていって。最終的には、悲しみと後悔と虚しさだけが残った。
お人好し故に、分け隔て無く伸ばした救いの手の先に善も悪も無いのだ。
随分と寂し気な空気を纏った背中だった。しかし、己は、其れを慰める手立ても術も持ち得ていない。否、始めから、そんなものの宛てなど何処にも無いのだ。
其れでも、何でも良い。一言でも投げ掛けてやりたかった。何の救いにすらも成り得なくとも。己の心の内で、自分の自己満足感を埋める為だけだと建前を立てて。
「オニーサン達のやってる事って……
砂漠のど真ん中に放棄された巨大な廃棄物の内の一つに、何とはなしに腰掛け項垂れた背中を見せる彼の背に、投げ掛けてやった。
所詮、自己満足に過ぎない。たかが、偶々出逢っただけの通りすがりの縁を繋いだ程度の人間に、こんな事を言われる筋合いなど無いであろう事は分かり切っていたけれども。投げ掛けずには居られなかったのだ。あまりにも寂し気を曝す背中に。
「――ハハッ…………“世界規模の兄弟喧嘩”か……。ただの喧嘩で終われてたなら、どんなに良かっただろうね……っ」
返答が返って来る事など無いだろうと思っていたら、まさかの返事が返ってきて、其れに従って彼の方を顧みてみる。彼はというと、未だ項垂れた姿勢から変わっていなかった。けれど、返ってきた声には、思ったよりも生気の色が音として乗せられていたようだ。
先に腰を上げてゆるりと近寄れば、其れまでずっと地面を見つめ続けていたであろう
己の立場は、先と何も変わらない。ただ、
「他の奴等が何と言おうが、私は私の目で見たものを信じる性分なんでね。……私は、オニーサンの事、心の底から嫌いにはなれないと思うよ。例え、600万
何とはなしと、去り際に、猫背に曲げられたままの彼の背を二回程軽く叩く。慰めにもならない元気を分けるつもりで、ポンポンッと。ついでに、なるべく空気を暗くさせないように口角は僅かに上目に吊り上げといて。後ろ手に緩く手を振ってその場を後にする。彼の負担が少しでも軽くなれば良いなと、そう願いながら。
……さて、その後、彼はどう思っただろうか。偶々通りすがりに出逢ったに過ぎない女に、半ば一方的な言葉を投げ掛けられて。
たぶん、何事も無かったかのようにその場を去るのだ。再び逢うとも知れぬ人間の事など、記憶の片隅に眠らせて、その内、指の隙間から滑り落ちていく砂の如く忘れ去っていくのだ。
全部、勝手な事。自分と彼との関係性など、其れだけなのだ。
何とも、物悲しい空気漂う廃墟での話だった。
二人はそれぞれの
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