秋独特の香りが鼻孔を擽って、「嗚呼、またこの季節が巡ってきたのだな」と思った。
 黄金色の小さな花弁を付ける樹木を脳裏に描いて、くふくふとした笑みが口元に浮かぶ。
 そんな様子を偶々視界に収めたらしき大きな体躯をした男が、ひょこひょこと近寄ってきて、わざわざ此方を怖がらせないようにの意図で身を屈めて問うてきた。
「どうした、主ぃ? 何か嬉しい事でもあったのか?」
「ふふ。なんて事はない、ただの日常から溢れた平和で断片的な話だよ」
「主ぃが嬉しいのなら、俺も嬉しい。良ければ、俺にもその断片的な話とやらを共有してくれないか?」
「本当に大した話ではないのだけれど、其れでも良いのかい……?」
「主ぃの話なら喜んで聞くし、知りたいと思うのは、主ぃの刀剣であるならば当然の事だと思うが?」
「ふふっ。静さんは大っきな見た目に反して可愛い事を言うね」
「主ぃに可愛がってもらえるのなら何だって嬉しいぞ。俺は、銘も無く逸話も無い静形薙刀の集合体故、戦事以外にはあまり向かんタチで、身も本体も主ぃの手には余る程大きいが……。そのお陰で、主ぃの手の届かない高い処などの手助けが出来るのは僥倖だと思っている。修行に出るまでは、小さく脆い人の子に触れては呆気なく壊しかねんと怯えてまともに近寄れも出来なんだが、力加減を覚えた今や逆に其れを勿体なく思う程、主ぃの側に居れる事が嬉しいのだ」
「静さんも成長したねぇ。折角せっかくだから、この機会に頭撫でちゃおうね〜っ。ほら、もっと頭屈めて?」
「俺が屈むより、俺が主ぃを抱え上げた方が早かろう」
 そう言って、鋭い爪先が肌を傷付けないよう繊細に慎重な手付きで触れてきた大きな手に、またくふくふとした微笑みが口元を衝いて出てしまった。己の武器たる者達が日々成長を遂げてくれて喜ばしいのだ。今の笑みは、そういった意味での笑みだった。
 成人女性を抱き上げたとは思えない程身軽そうにひょいっ、とあっさり胸元の高さまで抱き上げてしまった静形薙刀に内心でのみ驚きを露わにする。まるで幼子の頃にでも戻ったような感覚であった。
「ほら、こうした方が主ぃの手が俺の頭に届きやすいだろう? 巴形ではないが、存分に愛でてくれて構わんぞ」
 此方を抱き上げるなり、そんな事を言い出した彼に、再び擽ったさを覚えて笑みが口元へと浮かぶ。
「ふふふっ、静さんも可愛い事を言えるようになったモンだねぇ?」
「此れでも、俺とて妬いているのだぞ。主ぃは図体のデカイ奴等を構う時、いつも槍ばかり構うではないか……。この本丸の顕現序列的には、確かに槍の方が先だったかもしれんが……主ぃのような女人が振るうのならば、槍よりも我等薙刀の方が向いているのだぞ。初薙刀として顕現した巴形を構うのなら、対なる俺も構ってくれんと寂しいぞ」
「あらまぁ。独占欲まで覚えちゃいましたか。何とも可愛いこって」
「主ぃの可愛がりの対象に、見た目の大きさは関係無いのだろう? ならば、俺の事も可愛がってくれ。俺は槍共よりも主ぃの事を考えているぞ。何故ならば、主ぃが居てこそ、我等銘無き逸話も無き物達は存在し得るのだからな」
 修行に出るまでは、あんなにも此方へと近寄る事さえ出来ずに間接的に接する事が多かったのに。修行を経た上で帰ってきた時には、甘えたを覚えて、人の子に触れる力加減も心得てしまったようだ。お陰様で、隙あらば、槍に対する対抗心を以前にも増して剥き出しにしながら吼えている様子もしばしば。
 彼の鋭き爪は、武器としての誇り高さ故の表れなのである。静形薙刀とは、戦向きの薙刀であるからして、同じく銘も無く逸話も無くする巴形の集合体として顕現した巴形薙刀とは対称的な姿形をしている。けれど、そんな事は審神者にとっては些事だ。戦向きの武器は、幾らあったところで困りはしないのだから。そもが、本丸という場所こそ、特殊な空間なれど、歴史修正主義者共から正史を守るべくして作られた、戦における前線基地だ。どのような姿形をしていようとも、戦う為の武器は多いに越した事はない。
 おのが本丸で顕現した刀剣達は、皆等しく愛しい我が子も同然である。可愛がる対象に、一振りとて欠ける事など有りはしないのだ。
 そんなこんな思いつつ、幼子の如く腕に抱きかかえられた状態で“よしよし”と頭を撫でて、言外に「可愛い可愛い」と愛でていると、大人しく可愛がりを甘受していたしていた静形が思い出したかのように口を開く。
「そういえば、先程話しかけた、日常から溢れた断片的な話とやらをまだ聞けていないが……?」
「あぁ、其れね。本当に大した話ではないのだけれど……個人的に嬉しい事があったから、思わず笑みが零れてしまったというだけだよ」
「何だ、その嬉しい事というのは? 具体的にもっと聞かせてくれ」
「ふふ、静さんも欲しがりになったねぇ」
「主ぃ〜」
「ふふっ。御免御免。焦らすつもりはなかったんだが、意図せずそうなってしまったね。気を悪くしないでおくれ」
 なかなか本題を話し出そうとしない事に焦れたのか、少しばかり拗ねたような声音で先を促されてしまった。其れをまた擽ったく思いつつも、今度こそ話の本題を語ってやろうと言葉を紡ぐ。
「秋の匂い……とでも表せば良いのかね? 其れが、風に運ばれて辺りを漂っている事に気付いて、また一つ季節が巡ったのだなぁ〜と感慨深く思っていたってだけの話だよ。大して面白くも何ともない、ありふれた日常の断片的話だったろう?」
「確かに、顕現して暫く経つ故に、季節それぞれに異なった匂いがある事は記憶しているぞ。だが、主ぃの思う……その秋の匂いとやらは、何処からやって来る匂いで、どんな匂いをしているのだ?」
「ふふふっ。匂いの正体は、この時季になると決まって花を付ける樹木から漂う、花の香りさ」
「花か! 其れは、一体どんな花だ?」
「黄色くて小さな花でね、秋になるととても良い香りをさせる木があるんだよ」
「本丸の敷地内にもある木か?」
「敷地内も何も、庭先に植わってるものだよ。秋の景趣の一つ、二十四節気の寒露だ。花の名前は、金木犀。偶に、匂い袋や練り香水なんかでも見掛ける香りだよね。でも、個人的には、人工的に作ったものなんかよりも、本物の方が一等素敵な香りがして好きだな」
「あぁ、アレか! ついこの間、短刀の奴等がはしゃいでいたものだな。主ぃもアレが好きか?」
「金木犀の花は、昔から好きだよ。実は、実家の近所に在るお家の庭にも植わっていてね。この時季に側の道を通ると、いつも良い香りがして、子供の頃からその香りを嗅ぐ度に“今年もこの季節がやって来たんだなぁ〜”って嬉しくなっていたんだ。余談ついでに話すと、そのお家には他にも花を付ける木が植わっていてね。季節毎に異なる花を咲かせては季節の彩りや香りで見る人を楽しませてくれるんだよ。屹度きっと、それぞれの樹木や花々を植えたのには、そうやって季節の移ろいを感じたいが為もあるんじゃないかと俺は思ってる。じゃないと、毎年綺麗に花を付けないだろうし、手入れや水遣りを欠かさず愛情を注がないと彼処まで立派には育たないだろうからね。そういう意味では、園芸を趣味にしている人は尊敬するなぁ〜。自分は、植物を育てたりするのには不向きな性格だからさ。三日坊主に終わっちゃうというか、すぐに枯らしちゃうのよ。だから、見るだけで十分なのさね」
「植物を育てるのは不向きと言うが、花木を眺めて季節の移ろいや彩りに香りまで楽しむ心は持っているではないか。歌仙兼定の言葉を借りるならば、其れは風情があって雅を解せる良い事なのだと俺は思うぞ? 植物を育てる事には不向きなれど、主ぃは俺達武器を育て扱う事には長けている。そういった意味では、主ぃは俺達の主ぃに相応しく成るべくして成ったと言っても過言ではないのではないか?」
「おやまぁ。嬉しい事を言ってくれるじゃないか」
「俺達武器を愛でて側に置く事は、審神者なる者として当然であり必然であろう?」
「ふふふっ……! 此れは一本取られたな! はははははっ!」
 思いもしなかった事を告げられ、愉快極まりないと声を出して笑った。すれば、此方が愉しげであるのに釣られたのだろう。静形も愉しげな笑みを浮かべて口角を吊り上げた。
「どうせなら、このまま木の側まで運んで行ってやろう。その方が、主ぃもすぐ近くで花の香りを楽しめる上に、花見も出来て一石二鳥だろう?」
「木の側まで運んでってくれるのは有難いが、何も其処までしてくれなくったっても良いんだよ?」
「俺がしたいからするだけだ。主ぃが喜ぶなら、幾らでも運んで連れ回してやろう」
「はははっ! いや、こりゃ参った。誰ぞに見付かったら何かしら言われそうだ」
「その時は俺が訳を話して解決してやるから、そう構えずとも良いぞ」
「ふふふ、頼りになる薙刀です事……!」
「ふふんっ、当然だろう! 何たって、俺は主ぃの薙刀なのだからな!」
 そう言って誇らしげに胸を張った彼の眩しい事眩しい事。そんな風に言われる程にまで慕ってもらえるのは、幸せ以外の何物でもないだろう。
 履き物を履く間もなく、そのまま縁側から庭先まで抱えられたまま運ばれて、くだんの木の側までやって来る。途端、普段よりも頭の高さが高い位置にある所為か、いつもよりも強く花の香りを感じる事が出来た。目線の先には、間近という近さに黄金色をした花がある。手を伸ばせば、簡単に指先が触れる程にまで近い。
 何時いつにない新鮮な距離感に目をぱちぱちとまたたかせていたら、少し下の位置にある静形の頭が此方を見上げた様子で口を開いた。
「どうだ、主ぃ? 楽しいか? 嬉しいか?」
「うんっ……こんなにもすぐ近くで眺めたのは初めてだし、距離が縮まった分香りも強くて何だか不思議な心地がする」
「其れは何よりだ。俺の事は気にせず、好きなだけ楽しむと良い。俺は、主ぃが楽しそうにしているだけで嬉しいからな」
「ふふっ。もっと欲張っても良いのよ、静さんや」
「こうして主ぃと触れ合えている時点で、既に俺は十分に満たされているし、欲を出している方だと思うが?」
「あらまぁ、何とも可愛い事だわね。其れなら、俺からちょっとした驚きを提供してあげよう」
 すぐ側という位置にあった金木犀の花を少しばかり失敬して、両手いっぱいになる程摘んだら、其れを彼の頭の上へと降らせる形でぱっと両手を広げた。瞬間、彼の視界は審神者と黄金色の小さな花弁で埋め尽くされた。突然の其れに驚いた様子の静形は、ぱちくりと目をしばたたかせてポカン……ッ、と口を開けた。
 審神者の奇行など今に始まった事ではないが、予想だにしない行動に翻弄される様を眺めるのは面白くて愉快だ。
 完全に呆けてしまった彼の様子を面白がりつつ、更なる追撃を加えんと言葉を紡ぐ。
「ほら、やっぱり静さんには黄金色がよく似合うね」
「あ、主ぃ……っ」
「ふふふっ、困らせちゃった? 御免ね、戯れに付き合わせちゃって。でも、黄金色がよく似合うってのは本当。静さんの黒地の服に映える紅葉色のもふもふに、黄金色の小さな花が沢山散らばって凄く綺麗だもの」
「そ、そういうのは、別の刀達のが向いているだろう……っ」
「あら、そんな事ないわ。貴方だって、立派な俺の武器であり大事な宝物なんですもの。例え、貴方が戦道具であろうとなかろうと、俺の物に変わりはないんだから、嫌でないのならそのまま素直に俺の愛情を受け取っておきなさいな」
 突然の愛の告白紛いの言葉に戸惑う様子を見せる彼にクスリと微笑んで、黄金色の小さな花をくっつけた頭を抱き込むように包んで言う。
「お前は俺の大事な宝物の一つなんだ。命にも代え難い、大切な大切な我が子も同然のね。どうか、これからも俺と一緒に居て、こうして季節の移ろいや季節毎の匂いなんかも記憶に刻み込んで覚えていて。この先、俺が忘れてしまう事があっても、俺が死んで居なくなってしまう事があっても、俺の代わりに忘れずに覚えていて」
「主ぃ……?」
「……ふふ。ちょっと重た過ぎたかな。御免ね。でも、俺は今みたいな風でしか愛情を伝える事が出来ないから許してね」
 そう告げた上で、せめてもの詫びにと、この先の彼に降りかかるは幸多からん事をの祈りを込めた口付けを頭頂部へ贈った。此れを、彼はその名の通り静かに受け取って、目を細めて眦を和らげた。
「覚えていてやるとも……。其れが、俺の出来る事であり、主ぃより託された事ならばな」
「頼もしい事この上ないね」
「そうだろうとも。俺は槍共にも負けぬ、主ぃの為に在る薙刀だからな。主ぃの願いを叶える事など容易いものだ」
 そう言って、にやりと不敵に笑んだ彼は、いつも通りの彼であった。
 直後、此方の様子に気付いた巴形が血相を変えて慌てて駆け寄って来た。
「静形よ! 主に履き物も履かせずしてそんな処で何をしている……っ!?」
「おぉ、巴形か。主ぃが金木犀が好きだと聞いたんでな。ならば、もっと近くで見せてやろうと抱えて運んだだけだが、何か問題でもあったか?」
「運ぶのは別に構わんが、外に出るならば、せめて履き物くらいは履かせてからにしろ。主が何かの拍子に落ちて足を怪我でもしたらどうするつもりだったのだ……!」
「おっと。確かに其れはまずい。すっかり頭からすっぽ抜けておったな。すまん、巴形。感謝するぞ」
「主の履き物なら俺が持ってきてやったから、そのまま絶対に落とさぬよう抱えていろ。主、今履き物を履かせてやるから、大人しくしていてくれ」
「静さんもそうだが、君達薙刀〜ズが俺を抱えたところで、簡単に落っことすような事はしないと思うんだけどなぁ」
「万が一でもあったら大変だろう」
「過保護だにゃあ」
「主ぃは人の子故脆い。簡単に傷付いてしまう分、少し過保護なくらいで丁度良いと思うが?」
「刀剣男士って、どうしてこうも定期的に人間の事そんな軟に捉えるかなぁ〜」
「事実だから仕方のない事だな。諦めて、主は我等に囲われておけば良いのだ。何、怖いものなど全て我等が薙ぎ払ってみせようぞ」
「主ぃは安心して俺達に身を委ねていれば良い」
「アッ……君等からの愛も大概重いんだったな」
「俺達は人の想いにより励起された物だからな。当然だろう?」
 対の二振りが口を揃えて唱える。
 まぁ、何方も大概似たような者同士故に、抱く感情が似通うのも当然と言えばそうなるかと納得したところで、ふと静形が至るところに金木犀の花をくっつけている事に遅れて気付いた様子の巴形が首を傾げて問う。
「そういえば、何故お前はそのように沢山の花をくっつけているのだ?」
「うん? 此れは、主ぃが俺に似合うと言って手ずから摘んだ金木犀の花を降らせた結果こうなっただけだが」
「成程。主は偶に気紛れを起こしてよく分からない行動に出るからな。その結果だったか」
「元々秋カラーっぽい見た目の様相したところに、更なる秋の彩りを盛った静さんも良かろう?」
「うむ。見事なまでの映えだな」
「ふふふっ。主ぃの祝福付きだぞ。羨ましかろう」
「正直羨ましい事この上ない」
「巴さんにも同じ事やってやろうか?」
「主さえ良ければ俺にもやって欲しい」
「なっ……!? 此れは俺だけのものだろう!! 主ぃは良くても、俺は譲らんぞ!! 巴形は、既に主ぃの初薙刀という地位を得ている癖にまだ欲張るつもりか!?」
「何だ、別に良いではないか。俺は確かに主の初薙刀であり、主の為に在ると誓った薙刀だ。だがしかし、其れだけの枠に収まっているというつもりは全くないぞ。主から与えられるものなら何だって欲しいと思うのは、主の物たる者として当然の話だろう? 欲を出して何が悪い?」
「初薙刀という時点で羨ましい事この上ないのに、それ以上を求めるとは俺に喧嘩を売っているのか!? 典礼用の癖に、戦闘用の俺に敵うとでも!? 手合せを望むのなら何時いつだって相手してやるぞ……っ!!」
 自分だけに施された事を他の者達にもされるのは嫌なのか、断固拒否の姿勢で威嚇モードを発揮し、抱きかかえた審神者の存在を巴形から引き離さそうと遠ざけた。巴形は、尚も此方にも構ってくれと言わんばかりに両手を伸ばしてくる。恐らく、審神者を抱っこするという役目も交代してくれと言いたいのだろう。
 分かりやすく目の前でバチバチと火花を散らせる双方の様子に、審神者は保護者目線で「あらあら、まぁまぁ」と受け止めながらも、このままでは本気で喧嘩勃発しかねないと捉え、それぞれをなだめる為に口を開いた。
「ありゃ。静さんがヤキモチ妬いちゃった。まぁ、金木犀が似合うのは静さんで、巴さんには別の花のが似合うと思うから、またの機会という事で勘弁してちょ。じゃないと、静さん拗ねちゃうし、拗ねたデカイ子相手にすんの一苦労なのよ。俺、短刀や脇差ん子等とあんま見た目変わんないから」
「分かった。主がそう言うのであれば、その機会が来るまで楽しみに待っていよう」
「全く、油断も隙もない……っ。槍共ならばこの場で直ぐ様刃を交えているところだが、お前は俺と同じ薙刀同士……。且つ、今は主ぃが居る手前だ。この件については、後程改めて道場にて一つ手合せするという事で収めてやる。異論は無いな?」
「無論。主の側仕えポジションは俺が勝ち取る。長谷部にも譲る気は無いと、本気で相手してやろう」
「ふんッ。さて……何方が勝つか見物だなぁ?」
「頼むから……道場を壊すような事だけはせんでくれよ〜。あと、分かっているとは思うが、敵と交戦する時を除いて、真剣を用いての手合せは御法度だからな?」
「勿論分かっているとも」
「承知の上だ」
「いや、コレ、ホンマに大丈夫か……?? 本気で心配になってきたわ……」
 ただ審神者の気紛れの戯れで起こした奇行が、結果としてこんな事になるとは思わず。刀剣男士達独特の思考回路は分からんと半ば考える事を放棄して苦笑を浮かべていたらば、道場までそのまま運ばれる流れとなってしまった。何で、どうして、と問うのは今更である。こうなったら成るように成るに任せるが吉と学んでいる審神者は、幼子の如く静形に抱えられたまま大人しく地に降ろされるまでを待つ事にするのであった。
 ――嗚呼、金木犀の香りが秋の到来を知らせてくれているなぁ。
 軽く現実逃避をするように胸いっぱいに金木犀の香りを吸い込めば、秋の匂いで満たされて心地良い気分になった。
 そういえば、結局頭から至るところにまでくっつけた花は取らぬままであったが、其れは良かったのだろうか。なんて思うのも野暮かとすぐに思い直した審神者は、静形の髪からぽとり、落ちてきた小さな黄金色の花を受け止めて小さく微笑むのだった。


執筆日:2024.12.01
加筆修正日:2024.12.02
公開日:2024.12.11

【後書き】
支部開催の小説企画『秋色時間』へ投稿出来るよう合わせて書いたお話になります。
今回のテーマは『秋の色や秋の植物』です。
参加タグは『autumntime2024』となっております。
静さにネタ。単体では初書きとなります。静形薙刀お相手夢です。終盤、対となる巴さんも友情出演致します。
図体デカくて審神者に友好的とか、可愛い以外の何物でもないよね。“でっかわ”という言葉はこの為にあるものと言っても過言ではないでしょう。
元々秋カラーな装いをした静さんですが、秋ついでに更に秋の彩りを持っちゃいましょうね。可愛い子には、躊躇無くどんどん愛情注いじゃいましょうね。
所謂“でっかわ”な静さんにちっちゃい花の組み合わせって最高だと思いませんか??
まぁ、極後は頭に装飾の一部としてお花付けてますけど、更に盛ったって良くないですか??
だって、ウチの子、可愛い。ウチの子が一番可愛いし、ウチの子しか勝たんというのは、どの本丸でも言える事でしょう?( ・´ー・`)ドヤァ…ッ。
後書きを締め括るにあたりまして、素敵な企画を用意してくださったpixiv様には大変感謝致します。
この場をお借りして、改めて御礼申し上げたいと思います。
この度は、素晴らしき企画にて私の稚作な作品を並べてくださり、誠に有難うございました。