※当作品の夢主は、ノンバイナリーの俺っ娘設定となっております。
※尚、後付け設定となりますが、たぶん萩原と同期、且つ萩原姉に対して一方的に崇拝じみた感情を持っています。
※所謂何でも許せる方向けです。
※この時点で少しでも苦手意識を持たれた方は、自己回避願います。自衛は大事。無理な閲覧はお控えくださいね。
※全て自己責任です。読むも否も貴方次第です。
※以上を踏まえた上で閲覧どうぞ。


 とある日の出来事である。
 死んだ友人の幽霊が天使みたいな見た目で、突如目の前へと現れた。マジで何の前触れも無く突然過ぎて、一瞬思考がフリーズしかけたのは言うまでもなく。今日もお勤めご苦労様でした、と定時退勤後、帰路の途中で寄ったコンビニで買った今晩の夕飯セットが入ったビニール袋が、無意識に手から離れてドシャリッ、と静かな一人暮らしのワンルームに地味に派手な音を立てて落ちた。
 呆然と立ち竦む中、死んだ筈の彼はベランダの窓越しに透けた体で頭を掻きながら苦笑いを浮かべて言った。
『驚いてるところ悪いんだけど……中、入らせてもらっても良いかなぁ? 今の俺、変なところで不便でさ。招いてもらえねぇと家に上がったりとか出来ねぇのよ。だから、鍵開けて“どうぞ”って言ってくれない? 一生のお願い……っ!』
 変なところで律儀というか何というか、幽霊になったからといって建物や壁すり抜けの不法侵入し放題が出来る訳ではないらしい。微妙なところで現実的なのが何とも言えないが……一先ず、何で自分の目の前へ現れたんだとか色々訊きたい事があったので、素直に言う通りにした。
 カラリ、とベランダの窓を人一人分通れるくらい開けて、一言「どうぞ」と口にする。そしたら、透けた体の彼は律儀にも「お邪魔しま〜す」と言って敷居を跨いだ。彼が部屋に入り切るなり鍵を閉めれば、複雑そうな顔で次のように言われた。
『此処まであっさり簡単に信用して俺の事家に上げちゃうの見ると、元警察官としては複雑だなぁ……っ。俺が言うのもアレだけどさぁ……もうちょい警戒心ってモン持った方が良いよ? 何かちょっと不安になってくるわ……』
「研ちゃんが中に入れろって言ったんじゃん?」
『うん、其れはそうなんだけどね……っ。まぁ、今はこの話置いておく事にしよっか。他に説明しなきゃなんない事色々あるし』
「そういえばさ、何で研ちゃん今更天使みたいな見た目になってまで俺に会いに来たの?」
『其れを今から話そうと思ってたのよ』
 そう言って、彼は口火を切って語り始めた。
『琥珀ちゃんが知ってる通り、俺はあの日、自分が招いた油断の所為で、解除したと思った爆弾の再起動からの爆発に巻き込まれて、爆死……。陣平ちゃんにも散々釘刺されてたにも関わらず、軽装備で解体作業してたのが仇となったって訳。早い話が自業自得で死んじまったのってのが、我ながらクソダサ過ぎる終わり方でしょうよ……。まぁ、その後、何が因果となったかは不明なんだが、こうして幽霊という身になって彷徨う羽目になっちたって訳。あぁ……ちなみに、死んで幽霊になってすぐの頃に陣平ちゃんも俺と同様に爆弾解体中に爆発に巻き込まれて死んだって事は知ってる……。生憎、陣平ちゃんとは会えてないから彼奴のその後は知らねぇけど、でも、たぶんちゃんと成仏してあの世に逝ったんだと思うぜ? 俺は何でか知らないけど、上手く成仏出来なかったみたいで、成仏する切っ掛けを探す為に、こうして幽霊やりつつ知ってる奴の近くを彷徨ってたって訳。んで、偶々名無しちゃんの事見付けて、話が出来るなら話しかけてみようと思った、今ココね!』
「いや、思ってた以上にそこそこ重てぇ経緯の割ん癖して態度が軽いっつーか、だいぶフランクな幽霊も居たモンだなぁ……」
『いや、受け入れ早くない?? 普通に考えたら、まず自分の正気疑うでしょうよ??』
「残念ながら、俺の頭は非科学的現象が起こってもナチュラルに受け入れる程順応性に長けた作りをしておりますんで。ほら、ウチの実家、地方のド田舎で且つオンボロな築百年単位の家に住んでたからさ。何か棲み着いてても可笑しくねぇなレベルに考えてて、実際家鳴りとかしょっちゅうだったし、ポルターガイストじみた事も度々起こってたしなぁ。おまけに、俺、低レベルだけど霊感有るから、波長さえ合っちゃえば視えちゃうタイプなんだなぁ〜コレが。あっ、一応言っとくと、仮に視えても本来は目を合わせない方が良いとだけ言っとくね。最悪連れて行かれかねないから。人為らざる者と化した化生とか、変に視ようとすると碌な事にならんもん」
『じゃあ、尚更、何で俺の事信用してくれたのさ?』
「何でって……相手が研ちゃんだったからに決まってんじゃん」
『警察官としてあるまじきガバ判定有難う御座いま〜すっ。まぁ、そのお陰様でこうして会話成立してる事には感謝してるけどもね……。でも、もうちょい危機感とか警戒心というものを大事にしよっか? 琥珀ちゃん、危機管理って言葉の意味知ってる??』
「馬鹿にしとんのか、貴様?? んな口利く奴は追い出すぞ、良いんか??」
『良くないです、すみません、御免なさい、許して、この通りだから……っ!』
 生前に何度か見た平謝りモードでの土下座姿に呆れて何も言えなくなったのは、黙っておこう。死んで幽霊になってまで友人に土下座するとか、行動パターンが慣れ過ぎでは?
 生前と違って天使の輪っか越しに見える旋毛を見下ろして、溜め息混じりに頭を上げるように促した。すると、彼は情けない顔をして、やっぱり苦笑を浮かべて笑った。困った風に眉を下げて気まずそうに頬を掻きながら笑う仕草は、生前の頃と変わりないようで、不思議と安堵する。死んでも知ってる人物像に変わりがなくて、良かった。
「何が原因でそんな事なってんのかは取り敢えず分かったけど……研ちゃんと天使の羽の組み合わせ、似っ合わねぇな〜」
『今の流れで話の着地点ソコなの?? もっとツッコむところいっぱいあったでしょうが……っ』
「だって、マジで似合ってねぇんだもん。ガタイの良い大柄な男に天使の輪っかと羽って組み合わせが、あまりにミスマッチ過ぎて草生えるわ」
『琥珀ちゃんらしいっちゃらしい反応だけども……もうちょい何か無かったの?』
「いや、無茶言うなし。こちとら思った事そんまま言っただけなんだわ」
『ははは……相変わらずだなぁ〜名無しちゃんは。死んで幽霊になった俺に対しても変わらずそのテンションで貫き通すとか、どんなメンタルしてんのよ……っ』
「どんなメンタルと言われましても、こんなメンタルとしか言い様がありませんが?」
『そうだったわ……この子、元からこういう子だったわ……。っはぁ〜、何でこの子まだ独身なのかねぇ? こんな子放っとくとか、世の中どうなってんのよ? 俺心配で仕方ないわ〜』
「もしかして、研ちゃんが成仏出来ずに居るのって、俺の事が未練で……ってパターンだったりする?」
『……ワンチャン有り得るかも』
「マジか。そいつァ悪かったんだぜ」
『いや、受け入れ早ェって! もうちょいワンクッション挟もうぜ!?』
「と、言われましても……相手研ちゃんだし」
『うん……そういう素直なところ、昔から好きだったよ……』
「その話、初耳なんですが??」
『今、初めて言ったから当たり前じゃん……』
 死して初めての告白を受けるとか、マジかと信じられない気持ちが一瞬過ったけど、相手が相手だった所為か、思ったよりもすんなりストンッと納得してしまった。
 取り敢えず、成仏出来ないでいる一見天使な見た目の幽霊である彼を受け入れる方向性で話を進めていく。
「えっと……じゃあ、とりま、成仏するまでの仮宿としてウチに居る? 流石に、寒空の下、野宿させんのは可哀想だし……つって、幽霊に体感温度云々の概念有るか知らんけども」
『取り敢えずのていで俺を家に置いてくれる優しさは嬉しいけど、其れは其れとして、好きな子からそんな呆気無く無警戒に受け入れられると複雑な男心発揮しそうで困る……』
「研ちゃんぐらいにしかしないって」
『いや、仮に訪ねたのが陣平ちゃんでもオッケーしたでしょ、今の流れ??』
「………………」
『沈黙は肯定の意として受け取りまーっす』
「すんませんっした、気心知れた友人相手だからこそ限定の態度なんです、許して……っ」
『うーん……さっきと逆の立場になっちまったのはお笑い種だけど、仕方ねぇから許してあげますかぁ! 俺の心が寛大で良かったねぇ、琥珀ちゃん?』
「うん。研ちゃんが昔と変わんなくて安心した」
 そう言うと、彼は切なそうな顔をした後、仕方ないなって風に笑って頭を撫でてきた。幽霊だから、当然透けてるし、温度なんて有る訳ないんだけれども、何故か僅かに触れた感触と少しの体温を感じた気がした。変なの。
「何かよく分からんが、研ちゃんが天使の見た目で幽霊になって帰ってきたって事で、この話は一旦終了にして飯にしよ。俺、今超絶腹ペコで仕方ねぇし、集中力も切れて話半分にしか頭入って来ねぇし。飯だ、飯ィ〜!」
『やっぱ天使云々の見た目のトコ引っ張るのね……って、俺、今結構大事な話してたところじゃねぇ? もしかして、俺の事飯以下な扱い!? こんな時まで花や恋より食い気取んのかよ!? そんなトコまで姉ちゃんに似なくても良くねぇ!?』
「腹ペコなのは事実なんだからしょうがないじゃん。俺、仕事帰りよ? 研ちゃんと違って俺まだ生きてるんだから、先に飯入れさせて。あと、“風の女神様”こと千速姉様を悪く言う奴はボコるぞ」
『ハイハイ、我が儘お嬢様の仰せのままに』
「俺、お嬢様って柄じゃないの、一人称からして分かると思うんだけど?」
『良いじゃないのよ、偶にはさっ? 好きな子に死んでから告白してオッケーされて舞い上がっちゃってるところなんだから、ちょっとくらい甘やかさせてよ』
「そうやって数多という女の子泣かせてきたんだな? この色男め」
『はははっ! 本気の口説き文句は琥珀ちゃんにだけだって』
「ふふっ、どうだかにゃあ〜」
『あっ、信じてないなぁ? 酷ェ。コレでも一世一代の告白だったってぇーのによぉ』
「それなら、キスの一つでも寄越してご覧なさいよ? どうせ出来ないだろうけども」
 揶揄からかいのつもりで言い放った一言だった。けれども、本気で己の事を好いていたらしい男を焚き付け煽るには十分だったらしく。驚いた拍子に床へと落として放置してしまっていたコンビニ袋を拾い上げようと踵を返したところで、視界の両端に透けた彼の両手が映り込んできた事に、まだ何かあるのかと振り返りかけた瞬間、彼との距離が零距離となった。唇が触れ合った感触はほんの一瞬だけ。だけども、其れだけで十分だった。
 少しばかり背を丸めるように腰を屈めて顔を覗き込む姿勢の彼が至近距離で呟く。
『おっ? 遣れば出来んじゃん、俺……!』
「何で普通にキス出来てんの、この人……。てか、今のファーストキスなんですけど、軽率に奪ってくれるとか俺の情緒どうしてくれる??」
『あはっ! 琥珀ちゃんのファーストキス、俺が奪っちゃった!』
「まさか、俺も、幽霊に人生初の初キス奪われるとか思っても見ねーわ、コンチクショウ」
『あれ、照れてんの? それとも怒ってる……?』
「研ちゃんみてぇなイケメンに不意打ちで初キス奪われて動揺しない女とかこの世に居ねぇんだわ……」
『照れ方が斜め上過ぎるでしょうよ』
「うるせぇやい! 気が済んだなら飯にさせろ!!」
『ハイハイ、俺が悪かったから機嫌直してよ、ねっ?』
 あざとくも上目遣いのウインク付きで御免ねポーズをかましてきた故人な友人には、取り敢えず一発鳩尾へと華麗なるストレートをお見舞いして差し上げた。まぁ、当然ながら幽霊なので腕が貫通するだけに終わったが、気持ち上何でか痛覚は生きていた模様で、生前同様に痛がる様子を見せて床へ撃沈したのにはちょっと笑った。
「ちょっと、研ちゃんってば、何で死んでも痛覚というか感覚の概念あんの?? 普通幽霊て感覚死んでるモンじゃねぇーのかよ」
『いや……俺もよく分かんないんだけど、琥珀ちゃんに殴られたという事実に心が痛んだ、という事だけは確かだわ……ッ』
「マジかよ。研ちゃん、意外にも繊細な幽霊さんだったんだな? 面白ェ〜」
『無駄にキレの良いストレートぶちかましてきた奴が言う台詞じゃねぇんだわ……っ。俺の友人兼好きな子が変に逞し過ぎる上に酷い。流石の俺ちゃんも泣いちゃうよ?』
「しょうがないなぁ〜。慰めに俺からほっぺチューしてあげるから、元気お出し」
『マジで!?』
「秒で元気になるとか現金かよ」
『好きな子からほっぺチューしてもらえるなんて、どんだけ徳積んだんだよ、生前の俺〜っ!』
「逆に言わせてもらうと、幽霊になって化けて出てからでなきゃキスされるの叶わんとか悲しくならんのか??」
『終わり良ければ全て良しってね!』
「単純かよ」
『男ってのは大概こんなモンよ?』
 ほっぺチューを出すなり、ケロッとした顔で元気になった彼は、何処まで行っても変わりなかった。
 言い出したからには遣らねばならんだろうと、人差し指でトントンと差し出された片頬に向けて、軽く触れるだけのほっぺチューを送ってやった。此方としては、感覚的に微妙なので、何とも言えない気持ちになるのだが、された側の本人は満足そうにしているので良しとしよう。
 それにしても……。
「やっぱ似合わねぇな、天使の輪っかと羽……」
『まだ言うかね、ソレ……っ』
「だって、マジで似合ってねぇんだもん……。本当、何で死んじゃったかねぇ〜研ちゃんのお馬鹿」
『はははは……っ、その点については本当に御免て』
「今度、ゼロに会ったら言い付けてやろ。研ちゃんのお馬鹿が、死んで天使みたいな見た目した幽霊になって突然目の前に現れたかと思いきや、他人ひとの初キス奪いやがったって」
『ははっ、果たして信じてもらえるのかねぇ?』
「さてな。ゼロに会ったら云々は一先ず置いておいて、今度こそ飯にしよ」
『ちなみに、今晩の献立の程は?』
「コンビニで買った、レンジで温めるだけでお手軽に出来ちゃう、お一人様用の炒飯と餃子。デザートは、レアチーズスフレプリンです」
『わぁ〜、諸伏ちゃんが聞いたら嘆きそうなラインナップ〜!』
「一人暮らしの社会人なんざ、大概こんなモンよ。飯食える元気が残ってるだけマシと思え。あと、馬鹿にしちゃならんのが、レンチンするだけも立派なお料理です」
『アッハイ……』
「……でも、偶には誰かが作ったお手製の料理を無性に食べてみたくなるのも、また事実……。独り身の悲しさよ……。あー、今度休みの日のランチにポアロにでも行くかぁー……。運良くタイミングがゼロのシフトと被ればワンチャン食えるな、噂のハムサンド。後で久し振りにゼロに連絡取ってみるかぁ〜」
 天使の羽を生やした幽霊の彼を背中にくっつけたまま、仕事着から着替えるのも忘れて夕飯の準備に取り掛かる己の順応力の高さに、我ながら笑えた。普通、そんな簡単に受け入れ切れる事ではないだろうに。あっさり受け入れた己は、果たしてイカれてしまっているのだろうか。
 死んだ友人の幽霊は、死した後も己の側で元気にやっている。訳が分からないかもしれないが、大丈夫、此方も結局根本的な理解まではしていないから一緒だ。何を言っているか意味不明かもしれないが、故人である筈の友人が天使みたいな見た目の幽霊で帰ってきて、生まれてこの方彼氏居ない歴イコール年齢の喪女に対して今更な告白をぶちかました後、ファーストキスを奪うという所業に出たのである。本当マジで信じ難い話だけれども。
 幽霊でも何でも再び出会えたのなら、その再会自体には感謝するしかない。大切な友人であり、今や恋人と化した相手なのだから。


執筆日:2025.04.21
加筆修正日:2025.05.03
公開日:2025.05.10

【後書き】
支部の4月投稿企画『Your Wings』へ参加及び投稿した作品になります。
テーマは『羽、翼』。参加タグは『yourwings』です。
DC夢で読み切り一話完結物で、萩原研二お相手夢のお話です。
ぶっちゃけ、探せばどっかに有りそうな何番煎じネタなのは大目に見てくださいまし。
内容はタイトルまんまです。
夢主の設定は、完全に俺得山盛りハッピーセットな設定にしたけど、後悔はしてないです!
再熱した勢いだけで夢ネタ一本出来ちゃうとか、萩原研二、何て罪深き男……。でも、爆処沼に落ちた時点で悲しき運命を背負う事になるの、地味に辛たん。誕生日の代わりに推しの命日を追悼するヲタクの仲間入りなんだぜ……ケセセッ!
後書きを締め括るにあたりまして、素敵な企画を用意してくださったpixiv様には大変感謝致します。
この場をお借りして、改めて御礼申し上げたいと思います。
この度は、素晴らしき企画にて私の稚作な作品を並べてくださり、誠に有難うございました。