いじける。




…番長の居るフードコート一角。


―ズウゥゥン…ッ。


どこか淀んだ空気の立ち込めた一角…。


鳴上悠が、テーブルに突っ伏し、ぶつぶつと何かを呟いているようだ。



「…あっ、帰ってきた!おーいっ!花村ぁ、夢衣ちゃーん!!コレ、どうにかしてよーっ!!」

『千枝〜!やほーっ、どったの〜?』

「いや、“どったの〜?”じゃないわよ…。アレ見てよ!?」

『ん…?うわぁーぉ。完全に塞ぎ込んじゃってるね!』

「怖くて近寄れないよ…!」

「鳴上くん…。菜々子ちゃんに会えなくて、すごく寂しいみたい…。」

「いやいや、それにしてもアレは異常だって!!」

「だから、急遽コイツを連れてきたんだろうが…。」

「あー…夢衣ちゃんなら、この状況どうにか出来るかも…?」

『どゆこと…?』

「先生ェー!しっかりするクマーっ!!」



わたわたと周りで心配そうに回るクマ。


だがしかし、番長からは何も反応は無い!


ただの抜け殻のようだ…っ!



「菜々子に会えない…。夢衣にも会えない。俺なんか、必要とされてないのか…。同じワイルドと言えど、湊の方が絶対良いよな…?俺よりアイツの方が……。」

「先生ェーッッッ!!」

『鳴上くーん…っ?番長ぉ〜。おーいっ、生きてるかー?』



無遠慮に彼の頭の上をぺちぺちと叩く夢衣。



「夢衣は俺より、湊の方が選ぶんだ…。」

『え、何で…?』

「湊の方が、俺より優れてるもんな…。そりゃ、あっちの方に行くよな。俺なんか、どうでも良い奴だよな……。」

『番長、大丈夫か…?』

「…大丈夫じゃないよ。」

『うん、みたいね…おぅふっ。』



試しに彼女が話しかけてみるも、様子は変わらないようだ。


あまり反応は良くない。


番長は、まだ落ち込んだ状態のままである。


いっそ、殴るか蹴るで、理性を戻そうか。



「暴力はダメェ…ッ!!」

『いや、さすがに番長相手に顔面パンチなんて入れないよ…。うーん…。でも、これじゃ、あたしでも無理ぽー?』

「嘘だろ…!?お前しか頼めねぇんだぞ!?」

『と、言われてもーん…っ!』

「クマァ〜っ!クマはどうする事も出来ないクマかぁ〜?(泣)」

『あぁっ!クマ、泣かないで…っ!!』

「何でクマに反応すんだよ!!」

『だって、クマが泣いちゃってるから…。』

「どうせ俺はクマ以下…。」

「ああ、ほらっ!!さらに相棒が死んでくぅぅぅ…っっっ!!!」



天然ジゴロなど、もはや影は無し。


ネガティブモードに落ち込んだ番長は、さらに負のオーラを…。



「もうっ!お前、さらに悪くしてどうすんだよ!?」

『えぇ…っ!?あたしのせい!?』

「ムイチャン、先生を元の元気な姿に戻して欲しいクマァ〜ッ!!」

『おぉぅ…っ、ど、どないすりゃええの!?』

「関西弁…!ぷぷ…っ。」

「雪子、笑うとこじゃない…。」



周囲で騒ぐP4チーム。


さすがの夢衣もパニくっている。



「あーどうすりゃいいかーっ!!……はっ!?」

『何!?花村、何かあるの!?』

「おうよ!ワイルド通じのお前にしか出来ない事だ…!」

「ワイルド…?それが、何スか…?」

「いいか、率直に答えろよ?本音だぞ…!?」

『え?あ、うん…。』



名案を思い付いたのか、彼女の後ろへ回ると、その背中を押し、鳴上の隣へ座らせた。


そして、彼女の横隣りに座る彼へよく聞こえるように大きな声で言う。



「ワイルド同士でどっちもイケてる2人だが、リーダーとしても含めて、お前はどっちが好きだ…っ!?」



バンッ、とテーブルに手を付いて、彼女の目の前に身を乗り出して強めに問う花村。


少し驚いた表情で固まる夢衣は、彼からの唐突なその問いに戸惑いの表情を浮かべた。



『え、えと…番長と湊のどっちが好きか、だっけ…?』

「率直にだぞ!?」

『え、う、うん。…ワイルドでしょ?』

「おぅっ!!」

『…番長かな?』

「本当だな!?嘘、偽り無いな…!!?」

『うぇ!?そ、そーですけど……?』



あまりの念の押しの強さに、引き気味になる夢衣。


花村の顔が、真剣過ぎて…逆に怖い。



「……夢衣が…俺の事、好き…?」



ぼそり、と小さく呟いた番長。


どうやら、漸く反応を見せたようだ。



「おっしゃ!キタかぁ…!?」

「…夢衣は……俺の事が…好き…?」

『え……?うん…好き、だけど……。』



ゆっくりと顔を上げる番長。


額には、微かにテーブルにくっ付けていた跡が。



『番長、テーブルの跡付いてる。』



こんな状況下であっても、さすさすと撫でる彼女は天然である。



「夢衣…夢衣は、俺の事…必要としてくれる…?」

『必要だよ…!番長居なかったら、私等どーすんのさ?』

「本当に本当の事…?」

『本当だよ!?』

「本当の本当に…?嘘じゃない…?」

『嘘じゃないって。番長の事、嫌いになったりしないし、むしろ好きだし。番長居ないと、私、寂しいよ…?番長は今、菜々子ちゃん居なくて寂しいだろうけど、番長居ないと、私だって寂しいよ?』



必死に元の元気な彼に戻そうと励ましていると、その気持ちが伝わったのか、番長が動いた。


そっと彼女の手を取ると、ぎゅっと握り締め、真っ直ぐに見つめてきた。


―ぱぁあああ…っっっ!!!



『………え?』



先程と打って変わって、今度は、めちゃくちゃ嬉しそうな明るい表情になった番長。


心なしか、彼の周りで花が飛んでいるオーラが見える…。



「夢衣…ありがとうっ。俺、これからも頑張るよ!菜々子に会えないのは、やっぱりすごく寂しいけど…。でも、皆に必要とされるなら、サブリーダーとしても…夢衣の為にも、力を尽くすよ…っ!!」



目にはちょっぴり涙が浮かんでいるが、どうやら元気になったようだ。



『…まぁ、えーっと…元気になって良かったね!』

「うん、夢衣のおかげかな。」

「先生ェ〜っっっ!!良かったクマァ〜…!!」

「はぁ〜…。これで、心おきなく休めるよ…。」

「それよか、迷宮内、探索しなくていいんスか…?」

「それは後でで良いと思う。」

「夢衣、大好き…っ!!」

『ぅおっ!?ば、番長…!?』

「よし、これから一時、相棒はお前に任せた!」

『はぁ…っ!!?ぅえっ、ちょ!ま…っ!?』

「相棒の事、よろしくなぁ〜っ!」

『おいっ!待て、花村ぁああーっっっ!!?』



事が解決したと同時に、抱き付いてきた番長のお世話をする事になった夢衣であった。


そして、忘れ去られたP3チームの存在…お疲れ様でした。(笑)



順「そりゃないでしょっ!?俺っち、いっこも出番ナシ…!?」

湊「どうでもいい…。」

荒「くだらねー茶番だったな…。」

ア「使えねー、であります。」



END

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