『……あの…っ。』
「申し訳ございませんが、まずは私から。先にお伝えしておきたい事がございますので…エミル殿は、その後よりお願い致します。」
『え…?あ、はい。そちらから、どうぞ…。』
沈黙に堪え兼ねた彼女が、気まずい空気をどうにかしようと口を開いた矢先。
自身の唇に人差し指を当てたアーサーに、自分がこれから話す言葉を静かに聞いておいて欲しい、と遮られてしまった。
出鼻を挫かれたエミルは、素直に頷き、彼の言葉を待った。
ドキドキと高まる鼓動を押さえ、こくり、と小さく喉を鳴らす。
彼が、一つ、深呼吸をした。
気持ちが定まったのか、揺らぎの無い瞳で彼女の方を真っ直ぐに見据える。
「…エミル殿。私はずっと、貴方に伝えたいと思っていた事があります。聞いてくれますか…?」
『っ……!』
静かに切り出された言葉に、何かを感じ取って、声も出せずに頷くエミル。
「私、アーサー・ペンドラゴンは…。一人の女性として、エミル・ロアッソの事が、ずっとずっと好きでした…っ!出逢った時から一目惚れで、いつも貴方を目で追いかけていました。まだまだ未熟で…魔法も使えない、頼りない男かもしれませんが、エミル殿の事が、好きで好きで堪らないのです…!どうか、私と付き合ってください……っっっ!!」
ついに、心の内に溜め込んできた想いを全て伝え切ったアーサー。
恥ずかしさいっぱいではあったが…それ以上に、彼女を想う気持ちの方が勝り、とにかく自分の想いが伝えたくて、届いて欲しくて、思いきり頭を下げた。
全てを吐き出せた興奮で、心臓がうるさいくらいに跳ね回っている。
暫くして、ゆっくりと頭を上げた彼は、その目に飛び込んで来たものに思わず硬直し、瞠目した。
「っっっ……!!?」
そこには、見た事もない程顔を真っ赤に染め、恥ずかしげに服の裾を握り締めて固まるエミルが居た。
心なしか、恥ずかしさのあまり、涙目になっているようにも見える。
事実、彼女は恥ずかしさMAXで、泣きそうになっていたのだった。
しかし、男としては、そんな風に可愛らしい態度を取られてしまっては、絶句しかない。
「あの…エミル殿?大丈夫ですか…?」
『ひぇ…っ!?やっ、その…っ!』
思わず声をかけたアーサー。
すると、照れに照れまくった彼女が、困り眉に潤んだ目で見つめ返してきた。
言葉も上手く出てこなかったのか、あやふやなものだ。
それに、ドキリッ、と反応する彼。
しかし、その視線はすぐに逸らされてしまい、俯かれてしまった。
―このままでは、メリオダス殿の言う通り、何も進展が無いままになってしまう…。
だけど、ここまで来て、終わらせる訳にはいかない。
そう改めて決心したアーサーは、彼女の想いを聞くべく、じっと待ち続ける。
そして、また沈黙が訪れる。
数分後…。
漸く、想いの決まったエミルは顔を上げ、彼と視線を合わせた。
緊張に震える手を握り締め、暴れる鼓動を押さえ付ける。
深く息を吸って、口を開き、震える声で告げた。
『…わ、私も…っ!アーサーの事が、好きでした…っ!!キャメロットの王様だからとか…ただ偉い人だからとかじゃなくて、一人の男性として。アーサー・ペンドラゴンという人柄に、心から惹かれていました…!』
勇気を振り絞って言うエミル。
まだ、伝えなくてはならない言葉がある彼女は、一度呼吸を整えて、再び口を開く。
『私は…皆が思ってるような女の子じゃないし、男勝りだって事は分かってる…。他の子と比べて、明らかに劣ってると思うし、可愛げは無いし。さらに言えば、住んでる世界も違う、異世界の人間だし…。何より、アーサーの相手として、不釣り合いだと思ってた。それでも、こんな私でも良いのなら…っ!!よ…っ、ッッッ!?』
言葉の最後に「喜んで」と言おうと思っていたら。
それを言い切る前に、突然、アーサーに抱き締められたエミル。
『………え!?』
彼女は、暫く呆けた顔で目をぱちくりし、現状が飲み込めないでいた。
混乱して、「今、自分は一体どうなっているんだ…!?」と頭をフル回転させていると、抱き締められていた身体を解放される。
目線を上に上げると、彼の顔がドアップにあった。
思わずその近さに大きく驚いたが、目の前にある彼の表情は、少し照れつつも、とても嬉しそうに笑っていた。
「すみませんっ、突然こんな事をして。何だか嬉しくて、つい…っ!エミル殿が、そんな風に私の事を想ってくださっていたと思うと…、居ても立っても居られなくて。その…っ、ありがとうございます…!貴方の事は、この私が、必ずや幸せにしてみせます!!」
『アーサー…。私こそ、ありがとう。嬉しいよ…!まだ慣れなくて、めちゃくちゃ恥ずかしいけど…っ。これから、よろしくお願いします…!!へへ…っ。』
自然と笑みが込み上げてきて、口許を手で覆っていると、再びアーサーから抱き竦められたエミル。
今度は、先程の強く勢いよく、ではなく、優しく包み込むようにして…である。
すごく擽ったい気持ちになったが、お互いの鼓動が聞こえ、心の奥が不思議な程に温かく感じる。
彼女がふと顔を上げれば、彼と…アーサーと目が合う。
漸く、想いを通じ合わせ、晴れて両想い、恋人となった二人。
初々しく微笑み合う様子は、窓の外から覗く者達に、温かく見守られていたのだった。
END
↓オマケ
二人仲睦まじく抱き合っていると…。
ふと視線を感じて窓の方を見やると、複数の影が瞬間的に隠れた。
「あ、あれは…っ。」
『ッッッ〜…!もう…っ!覗いてるぐらいなら、早く入って来いっての…!!』
見られていたと分かって、互いに恥ずかしそうに離れる二人。
コソコソと隠れて見ていた者達が、出入口のドアからぞろぞろと入って来る。
「ごっめ〜ん♪中に入るの、何だか申し訳なくって…!」
「すみません、外から勝手に覗くような真似をしてしまって…っ。」
「まさか、エミルちゃんとくっつくなんてなぁ〜!!プゴッ!」
「おめでとう二人共。」
「いや〜、吃驚だよね…!オイラ、あのキャメロットの新王がエミルとくっつくなんて、思ってもみなかったよ…っ!」
「俺はなんとなく感じてたぜ…?」
「うんうん…っ!漸く実って良かったな、アーサー、エミル!!」
「メリオダス殿!?何故、そちらから…っ!!?」
『てか、お前も見てたのかよ…っっっ!!』
「いやぁ〜、めでたしめでたし♪これにて、一件落着、っと!!」
皆から祝福される二人。
再び、嬉しさが込み上げてきたアーサーは、堪らずエミルを空中に抱き上げると、感情に任せてくるくると回りだした。
『ふわぁ!!?ア、アアアアーサーッッッ!!?』
「なはは…っ♪これからが楽しみですね、エミル殿っ!!」
『ふぇえっ!?ア…、アーサー!降ろしてぇえええ…っっっ!!』
ポーンッ!と宙に放り投げられたかと思えば、抱きとめられる彼女。
『ぉわあっ!?ぐふ…っ!!』
「す、すみません!大丈夫ですか…!?」
『…い、いや平気、ダイジョブです…っ。私自身、腰痛めてた事すっかり忘れてたしね…っ。』
「なははっ!それじゃあ、私と同じですね…!!」
いつもより眩しく笑うアーサーは、エミルを俗にいうお姫様抱っこで、満足そうに抱えるのであった。
本当にEND!