お星様にお願いしましょ



『え、と…っ、わたっ、私の、願い事は…っ、』
「願い事は…?」


恥ずかし過ぎて真っ赤になった顔を見られたくなくて、俯くエミル。

彼は、彼女の言葉を待った。


『私の願いは…、“これからも、七つの大罪の皆と一緒に居られますように。そして、アーサーともずっと一緒に居られますように”です…っ!』


最後は、尻窄みして小さくなっていたが、彼の表情を見る限りでは、ちゃんと届いていたたらしい。

その証拠に…アーサーは、一瞬、目を見開いて固まっていたが、すぐに嬉しそうに笑った。


「あは…っ、エミル殿も、私と同じですね…!ありがとうございますっ!!」
『ぅあ〜、もう…っ!こんな話、恥ずいからお終い…っっっ!!』
「なはは…っ!エミル殿は照れ屋さんで、可愛いですね♪」
『何でそう、サラッと言っちゃうかなぁ…っ!?アーサーって、もうちょっと純粋ピュアな子じゃなかったっけ!?天然さんじゃなかったっけ…!!?』


あまりのストレートな発言に、照れを隠し切れないエミルは、勢いよく捲し立てる。

今までの自身の中でのアーサー・イメージに対し、必死に抗議している。

もはや、決め付けである。


「えっと、私はいつもこんな感じですよ…?」


彼は、照れたように頬を掻くが、相も変わらずマイペースに答える。

その調子が、彼女を翻弄しているとは知らずに…。


「ところで、エミル殿…。先程私が告げた言葉の返事がまだなのですが…?」
『は…?いや、答えたでしょう…?』
「いいえ。私が、貴方に対して“好きである”という意味を込めて言った言葉…告白のお返事は、まだ聞いておりませんよ?」
『っっっ!!?』


恥ずかしげもなくドストレートに言い放ったアーサーに、絶句してしまったエミル。

素敵な笑顔で、さらには、イケメンボイスで言われてしまえば、固まってしまうのも無理はないだろう…。

現に、案の定というか、完全にフリーズしたエミル。

カッチコチに固まってしまった彼女が、何も答えられずに暫く黙り込んでいると、さすがのアーサーも気を急ぎ過ぎたかと不安になり、彼女の顔を覗き込んだ。


「あの、エミル殿…?迷惑だったなら謝りますが…。」
『ッ、ぅわあ…っっっ!!?ご、ごめん…っ、フリーズしてたわ…。』
「えぇえ!?そ、そんなにダメでしたか…!!?」
『え…?いやいや、そういう訳じゃなくてね…。え〜っと、告白されるのとか、初めて…ってか、経験無かったから…状況整理するのに、頭が追い付かなくてさ…。その…、うん…。嫌いでは、ないんだよ…?うん。』
「ほ…っ、本当ですか…!?で、ではっ、あの…!!」
『うぇ〜っとぉ…。これは、ちゃんと応えるべき、だよねぇ…。』


一度、周囲を窺い、他の誰も聞いていない事を確認すると、深呼吸して、先程のアーサーのように真っ直ぐ見据える。


『じ、実は…出逢った時から、アーサーの事が、好きでした…っ!』


ついに言ってしまった…!と、言い切った瞬間、何とも言えぬ熱が込み上げてきて、当然の流れ的に顔を覆い隠そうと腕を上げかけた。

―のだが、突然、目の前を塞がれた景色。

よく瞬きして見ると、目の前にあるのはアーサーの胸板であった。

流石の状況に混乱し、慌てて上を見上げた。

つまりは、彼女はアーサーの腕の中に閉じ込められていたのである。

それも、中途半端な体勢のまま、抱き締められていた。


『うぇええっっっ!?ア、アアアアーサー!!?ままっ、周りに皆、居るから…!は、離れて…っ!!』
「エミル殿、大好きですっっっ!!」
『わ、分かったから…っ!!とりあえず、離して…っ!!』
「なぁ〜にイチャついてんだ、お二人さん…?」
「あ、メリオダス殿…。」


この場を一番見られたくない相手に見付かり、改めて周囲を見渡せば…気付けば、他の皆も集まって此方を見ていたらしく、二人は居た堪れなくなって離れる。

ニヤついた顔で此方を見るメリオダスは、なんだか楽しそうだ。


「何だよお前ら、俺達に内緒で付き合ってたのかぁ〜?」
「えっ!そうだったんですか、エミル様!?初耳です…!」
『え!?いやいや違う違う!!ガチでこれは違う…ッ!!』
「もぉ〜、水くさいなぁ、エミルは…!そういう事なら、ボク達に早く言ってくれたら良かったのに…っ。」
『だから、違うんだってば…っ!!まだ付き合ってないんだって…っっっ!!!』


誤解を解こうと必死に声を張り上げるエミル。

変に勘違いした二人は、そのまま目をキラキラさせて、二人だけの世界に入ってしまっていた。


「…で、どうだったのだアーサー…?返事はもらえたのか?」


意味深な発言をするマーリンが、余裕そうな笑みを浮かべてこちらに歩み寄ってくる。

彼女の言った意味をごく普通に受け入れるアーサーは、至極嬉しそうに言った。


「はいっ!!今しがた、ばっちりと頂きました♪」
『ぇえええーっ!?ちょっ、どういう事ですかマーリンさんんんんんっっっ!?』
「まぁ、そういう事だ。良かったな、エミル…?我が弟子の事…公私共に、宜しく頼んだぞ。」
『はぃいいい…っ!!!?ちょっと、聞いてないんですけどぉぉおおおーっっっ!!!!』


今日皆が集った最初の時から、何やらマーリンとアーサーの間で交わされていた事柄があったようである。

どうやら、一杯食わされたらしい。

ただただ混乱する彼女を他所に、女子達はこれからの二人の事で盛り上がりを見せており、それを聞いて、余計にあわあわとするエミル。

まだ、何にも進んでいないというのに…先に話を進めないで欲しい。


「ほらほら、こんなにも星が綺麗なんだからさっ。皆、もっと楽しまなくていいのかい…?」
「うむ。キングの言う通りだな。せっかくの機会だ。織姫と彦星の、一年に一度の逢瀬を祝いつつ、もう少し感傷に浸るのも良いかもしれないな。キラッ☆」
「ねぇ、ゴウセル…。君って、時々変になるよね…?」
「俺は正直、どーでもいいぜ〜♪」
「バン、お前酒飲み過ぎ。」


そして、皆して夜空を見上げた。

幾つもの流星達が、星の筋の側を駆けていく。

まだぎこちないながらも、寄り添い合うアーサーとエミル。

アーサーがそっと繋いできた手に、自らの指を絡めれば、自然な形で恋人繋ぎになる。

顔を見合わせると、お互いに伝わる想い。

繋いだ掌から伝わる、優しい温もりに…擽ったく思いながらも、織姫や彦星のような、互いを想い合える恋人になれたら良いな、と感じた二人であった。


END