ディナーの準備に取り掛かる前に、短冊の作業を終えたので、そちらの後片付けをしていると…。
ふと、アーサーから話しかけられた彼女。
『あれ…?どったの…?』
「いえ…。先程、短冊へ願い事を書いていらっしゃる時、何だか楽しそうにしていたので…。何と書かれたのか、気になってしまってっ!」
『えぇ〜…。それ、訊いちゃう…?』
「ダメ元だと分かってはいますが…宜しければ、私に教えてはくださいませんか…?」
『う〜ん…。それはぁ、内緒…!』
「えぇ…っ!?」
『ふっふっふ…。これは乙女の秘密なのですよ、アーサーくん?にゃので、教える事は出来ないのですな♪』
どうしても気になっていた彼は、てっきり彼女なら教えてもらえると思っていたのだろう。
しかし、思いの外、内緒と言われてしまい、結果しょんぼりと項垂れる事になったアーサー。
一方彼女は、そんな彼の反応を楽しみながら、後片付けを終わらせ、さっさか皆の元へと戻っていった。
―陽も暮れて、すっかり夜の訪れた空の下…。
七つの大罪達は、待ちに待ったディナータイムに入っていた。
今夜は、ちょっぴり張り切って、パーティー並に豪勢だ。
色取り取りのたくさんの料理が、食卓に並んでいる。
全て、バンお手製の美味しい料理達である。
その中に、一部、女子組が頑張って協力して作ったポテトサラダ(ちゃんと食べれるよ!)などもある。
七夕に因んで、星型にくりぬかれた人参が乗っかっていたりと、可愛らしい見た目だ。
皆で一斉に手を合わせると、団長の一声に合わせ、「頂きます!!」と復唱する。
楽しい食事会の開催である。
「んぅ〜…っ!おっいしぃ〜♪」
「本当、バン様のお料理は、いつ食べても美味しいです…っ!」
「しかし、まぁ…っ!たまには、こうやって星空の下で食うってのも、なかなかイイもんだなっ!!サンキューな、エミル!」
『え…っ、べ、別にそこまで感謝される事じゃないよ…?』
「いえっ!エミル殿が提案して下さらなければ、こんなに素敵な時間は過ごせませんでした。ありがとうございます…っ!!」
『うぇ…!?ア、アーサー!!?か、顔、顔上げてくれ…!なんだか申し訳なくなってくるからっ!!』
皆に感謝の言葉を述べられ、さらには、アーサーに頭を下げられたエミルはあわあわとし、慌てて頭を上げさせた。
『私は…単に、皆が時たまの休息を楽しんでくれたらって思って言っただけだし。浴衣を着て欲しいって言ったのも、下心があった上だったし…。』
「そう、だったんですか…?」
『浴衣姿の皆を見てみたいな〜とか、着たらすっごく似合うだろうなぁ〜とか。個人的な趣味で頼みました。ごめんなしゃい…。』
内心思っていた事を小声で吐露し、どこか遠い目で語ったエミル。
たぶん引かれるだろうなぁ…と思っていた彼女は、あからさまにアーサーから視線を逸らした。
すると、彼の隣に座っていたマーリンが、ワインの入ったグラスを回しながら口にした。
「それでも…キングや団長殿達は、楽しんでいるようだぞ?」
『あー…。まぁ、あの二人は…ある意味ツボるだろうなぁ、とは思ってたし。』
「私やアーサーも、それなりに楽しませてもらっている。そう卑下する事もないさっ。」
『マーリン…。』
「そうですよ、エミル殿!私、初めて浴衣を着ましたが…なかなか涼しくて、快適ですよ!それに、エミル殿の住んでいた世界の事をまた一つ知る事が出来ましたからねっ!!ゴウセル殿なんて、不思議なポーズを取ったりして楽しまれていたんですよ?心配しなくても、大丈夫です。」
『何やってんだアイツ…。』
自分が知らない所であった話を聞いて、ゴウセルに呆れた視線を向けた。
視線に気付いたゴウセルが、何故か乙女ポーズで返してきた為、胡乱気な視線を投げかけ、再びアーサーの方へと視線を戻す。
見ると、彼は相変わらず優しげに微笑んでいたので、此方も素直に微笑み返した。
ふと、空を見上げると、天の川に似た星の筋が浮かんでいた。
天候が良かった為、星や月がよく輝いている。
あまりの美しさに感動したエミルは、思わず声を漏らしてしまった。
『ふわぁ〜っ、綺麗…っ!』
「え…?ぅわぁっ!本当に綺麗ですね…!!」
二人して夜空を見上げていると、他のメンバー達も気付き、同じように空を見上げ、歓声を上げた。
食事もそこそこに終え、皆で星空を眺める事にしたメンバー達。
適当に好きな者同士で固まり、それぞれ好きなように、星や天の川もどきを眺める。
彼女は、たまたま隣で座っていたアーサーと二人で星を眺めていた。
「とても美しいですね…。」
『うん。これで、流れ星とか流れたら最高なのになぁ〜…!』
「なはは…!確かにそうですが、そう簡単にはいかないのでは…。」
『あっ!?流れ星!アーサー…っ!!』
噂をすれば何とやら、ではないが…。
本当に流れていった流星を、慌てて目で追う二人。
予想もしていなかった事に、互いに顔を見合わせ驚き、途端に吹き出した。
小さく笑い声を上げつつ、アーサーは彼女に向き直る。
「エミル殿の言った通りになりましたねっ!」
『うんっ、私も、まさか本当になるとは思ってなかったから…吃驚しちゃった!』
「今夜は、素敵な夜になりそうですね…!」
『そうだね〜…って、もうなってるよ、アーサー?』
そう言って、再び夜空を見上げる二人。
だが、彼はまた此方を見て、話しかけてきた。
「そういえば…。短冊の後片付けをしていた時、私が書いた願い事の事、言ってませんでしたね…。」
『あぁー、そう言えばそうだね?』
「と、いう訳で!私が何をお願いしたか…当ててみて下さいっ!!」
『ぇえっ!?当てるの…!?う〜ん…アーサーの願い事、ねぇ〜。そうだなぁ…。無難に、“キャメロットがもっと栄えますように!”とか…?若しくは、“立派な王様になれますように!”とか…。あ、二つ目に挙げた方は、既にそうかっ。』
エミルがうんうん唸りながら答えを絞り出す様子を、微笑みながら見つめるアーサー。
その瞳はとても優しげで、愛おしそうに細められている。
「私の願い事、知りたいですか…?」
『その言い方は、気になっちゃうでしょ?』
「では、お教えしますね。私の願い事は…。」
一呼吸挟み、ゆっくりと答えを告げる。
彼女の手の上に、そっと自分の手を添えて、真っ直ぐに見据える。
「―私の願い事は、“エミル殿の側に、ずっと居られますように”です。」
気付けば、両手は彼の手の中に包まれていたエミル。
言われた言葉の意味がすぐに理解出来なかったのか、ぱちくりと目を瞬かせ、見つめ返す彼女。
彼が言った言葉を頭の中で反芻し…数秒後。
漸く言葉の意味を理解したエミルは、徐々に顔を赤くさせた。
双眸を見開き、唇を戦慄かせている。
しかし、彼はまだ何かあるのか、首を傾げて、何か言いたげな表情で待つ。
「エミル殿は…?」
『ふぇ?』
「私の願い事の内容は話しました。今度は、エミル殿の番ですっ。貴方が、短冊にどんな願い事を書いたのか、教えてくれますか…?」
『え…っ!?うぅ…っ。アーサーって、何気にズルいんだな…。』
まんまと彼の策にハマった彼女は、あちこちに目を逸らしながら、口をモゴモゴさせ、この場を逃れようと考える。
その間も、彼女の両手は彼に包まれたままで、離される気配はない。
むしろ、離す気がないらしい。
試しに引いてみたが、意外とがっちりと掴まれており、合った視線は「逃がしませんよ?」と伝えていた。
逃げ口が見付からず、逃げられないと観念したのか。
意を決したように、深く息を吐くとアーサーの様子をちらりと見たエミル。