その他
ルアウ

2022/10/30 21:54

(ド酷イデ♂)
27歳、男性、180p
一人称:僕、私
二人称:君

料理評論家兼料理研究家。自信家で食の事しか考えていない変人。
いつかこの世で1番素晴らしいフルコースを作って食べるのが夢。
美しい筆致で書かれた料理の評論は絶大な人気を誇り、色んな雑誌から引っ張りだこである。彼が評論で褒めたレストランは次の日から長蛇の列が出来る。

もう潰えたとある貴族の出。だがそれは自身のプロフィールには記載していない。
彼の生まれた家には兄弟が多く、それもその筈で色好きの父と複数の妻の間には10人以上の子供たちがいた。代々強い者が家を継ぐというその系譜に則り、兄弟たちは皆後継者として選ばれる為に必死になった。それでも晩餐だけは家族揃って食べるのがルールで、そこで後継者争いの駒を一つ潰そうと、兄弟の一人が盛った毒入りの食事をルアウは食べてしまった。
何日も生死を彷徨い、その末に命からがら復活したが、兄弟への疑心と食事へのトラウマから食事を摂らず部屋に籠る日々が続いた。
目を覚ましたのに家族揃って食事を摂る一家の掟を守れない奴は要らないと罵られ、どうにか食事を摂ろうとするが、それでもまた毒が食事に入っていたらと思うとどうしても拒絶してしまう。ルアウは後継争いから降り、遠縁の養子になる事を志願した。家や家族を捨て身の安全を取ったのだった。
義両親は実家のような裕福さは無いものの、ルアウの骨だけの身体を心配してくれた。血の繋がらないがルアウに愛情をもって接してくれた。
そんな平穏な生活の中でどうにかスープなどの液体物は喉を通るようになった。それから、徐々に固形物が増え始めてようやく体重が増加し始めた。しかし食事の味は分からないし、生家の苦しい過去が事あるごとにフラッシュバックしては吐いた。
その生活が続いて何年か後…義両親から実家が潰えた、と聞いた。お互いを憎み合い毒を仕掛けあった兄弟たちはそれらで自滅した。跡継ぎのいなくなった生家は貴族の称号を剥奪され、無いものとされた。
もう自分を苦しめる兄弟はこの世に居ない。自分に無関心な両親も。それだけを思った。
ルアウ曰く、その日の食事は今まで食べてきた食事の中で一番美味しかったという。
それから、ルアウは食にのめり込む。彼の食への原動力は兄弟たちへの反骨心からだった。
美味しい食事を摂る度に、お前らとは違う。僕は生き延びた。ざまあみろと思った。
その日から貴族としての名を捨て、ルアウと名乗り、より美味しい物を求め旅に出ることにした。
貴族として良い教育を受けた事が幸いしてか、上品で整頓された筆致の文章で書かれた評論が人気を博し、彼はその方面で生きていくことにした。

そんな折、オーナーの依頼を受け訪れた寂れたレストラン。寂れてはいるものの掃除は行き届き料理も申し分無い。オーナーの娘だという女性の料理の説明も光るものがある。
実はレストランの評論の依頼とは別に娘を預かってくれないかとオーナーから打診を受けていた。何でも娘は母を亡くしてから病気がちなオーナーに献身的に看病をし、寝る間を叩いて料理の勉強をしていたのだという。レストランのいち手伝いではなく、ルアウの側で世界の料理を勉強させて欲しいのだという。
それを断るつもりでいたルアウは彼女を見るや気が変わった。
アラオナを秘書として雇い入れ、自身と一緒に食事の席へ同席させ、料理のありとあらゆる知識を彼女へ教えることにした。
ー全ては彼の夢のために。

元々貴族でいた事や、養子の際、あまりに痩せぎすで何もせずに身の回りのことをしてもらっていた為、生活力が無い。しかも自分の部屋に見知らぬ人が入るのを嫌う。
食器類やマイ箸ならぬマイクローシュ(料理に被せるやつ)を常に持参しているが、これは無意識に毒を恐れている為、毒に反応するカトラリーを持っているのである。自身は過去を吹っ切ったつもりであるが、未だその闇は根深い。自信家であるのも過去からの反動。


「いつか君を食べさせてね」

彼女を見た時、心が動いた。それはクリスマスの日にご馳走を目の前にした子供の目の輝きに似ていた。
アラオナは小さい頃から空気の澄んだ穏やかな南国の自然と共に生きてきた。また食事も実家であるレストランのよい食事を毎日摂ってきたのであろう。ここから更に世界中の美味しい食事を摂り続けたら彼女こそ、この世で一番の美味になるのではないか?美食を食べ続けた人間の肉は一体どんな味なのだろうか?
だから、天気の話でもする様に何事も無く彼女にそう告げた。


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