「あっちぃ」
「溶ける」
「もう無理」
「クーラー壊れてるとか……俺らなんのために三門市守ってんだ?」
「クーラー壊れたくらいでそんな」
「じゃあ佐鳥アイス買ってこい」
「すみません無理です」

学校の教室クーラーがないのは学校がケチなんだと思う。
まあ、ないものは文句の言いようもない。
補習を受けた後、速攻で唯一クーラーのある図書室に来たものの。
図書室のクーラーが壊れているという事態。
とてつもなく暑い。
普段なら生徒でいっぱいになっている自習室がすっからかんなわけだ。

「あ、そうだ。プール行きませんか!」
「プール?」
「プールねぇ」
「ボーダーにあるじゃないですか!」
「あそこはプールじゃない。訓練施設」
「げ、じゃあ市営のプールでも行きます?」
「仕方ねーな」
「奈良坂と古寺も誘おうぜ」

と出水が言うと

「奈良坂と古寺は今日は午後からも補習らしい」
「えっ、アイツらって頭いいよな」
「槍バカ、進学校ははむしろ、頭いい奴が補習に行くんだよ」

と、何故か出水がドヤ顔で言う。
でも、さすが進学校。
意識高いぜ。

「まじかよ」
「あ、じゃあ辻誘う?アイツ補習行かないって言ってた」
「市営プールに女の子もいるけど」
「まあ見なきゃセーフじゃない?」
「じゃあ誘っとくわ」

と米屋が言ったので、辻のことは米屋に丸投げする。
さっきの出水の発言は私が女にカウントされてないような気がするのは何故だろうか。

「みんな水着持って市営プール前に集合な」
「「うぃ〜」」

返事が緩いのは夏のせいだ。

「あ、辻来たんだ?」
「米屋が煩かった」
「分かる」
「え、朔ちゃんは大丈夫なの!?」

三輪も少なからず驚いているみたいで、目を見開いている。
辻が女の子苦手なのは割と有名だもんな。

「如月は……うん、まあそうだな」
「歯切れ悪いな。正直に言えよ」
「出水たちといるところ見すぎて女子に見えない」
「よーし歯を食いしばれ。とりあえず殴らせろ」

コイツは俺がやらないといけない…!
馬鹿にした奴に手を出しても正当防衛程度ならセーフだってばっちゃが言ってた。

「朔、着替え終わったら更衣室の前で待ってろよ」
「なんで?」
「お前1人だと大変だからだよ」
「おっけー……?」

とりあえず着替え終わったら先に佐鳥が着替え終わっていた。

「朔さん超可愛い!!」
「ありがと。佐鳥も似合ってんじゃん」
「そうですか〜?」

圧倒的チャラさにも関わらず、犬飼さんみたいにウザくはないのはなんでだろう。

「朔ちゃんが女の子してる」
「おい」
「この胸元フリルはまさか」
「言うなよ」
「本当に朔ちゃんはそこだけが残念だ!!」
「うるせえ」

米屋煩い。
ぺたんこなのを気にしてることを知って、人見さんが選んでくれたんだぞ。
悲しきかな、本当に役に立ってるよ。
人見さんの見立ては正しかったってことだな!!

「でも、フリルとかついてて女の子っぽくないですか?」
「佐鳥分かってねーな」
「?」
「布の面積少ない方がプロポーション的には最高なんだぜ……!」
「殴るぞ」
「俺は朔さんみたいな水着好きですよ!」
「佐鳥に今度ジュース奢るわ」
「わーい」

後輩に気を使われた……つら。
いいですよーだ。
どうせ私はボーダー女子の佐鳥ですよー。

「あの人たちかっこいい〜」
「彼女と来てるのかな〜?」
「声かけてきなよ〜」

周りの女子がザワザワし出した。

「あ、秀次たち来た」

視線を集めてる方を見ると出水と辻、三輪がいた。

「あの3人、出てきただけで騒がれてるな」
「顔だけならあの人たち、広報でもおかしくありませんからね」

佐鳥が言うと余計悲しくなるな。

「さすがうちの学年イケメンランキングトップ2と、進学校の王子様」
「えっ、なにそれ」
「非公式だけど、新聞部で調査したら出水と三輪がトップ2独占してた。あと、辻は私の中学の同級生に王子様って呼ばれてる」
「マジか」

出水は戦闘狂、辻は女子と喋れない、三輪は周りの雰囲気が重いっていうデメリットもあるけどな!

「米屋は何位か聞きたい?」
「うん」
「15位」
「微妙!!」
「まあ、そんなもんですよね」
「佐鳥は3枚目ランキング1位だった」
「それは嬉しくないです」

よっ、永遠の2.9枚目!!


2017/3/14加筆修正
辻くんが進学校だったことを忘れていて修正するのが遅れましたこと、深くお詫び申し上げます。




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