雨だから
放課後、友達と学校近くのモールのフードコートで駄べり、時間も時間になってきたので解散。冷蔵庫の中がそろそろ寂しくなってきたことを思い出して、モール内のスーパーによって出たら雨が降っていた。そんなに強くはなかったが弱くもないので、折り畳み傘を出すためにリュックを下ろそうとすると携帯電話の通知がピロンとなる。
通知の来たメッセージアプリを開くと、寂雷さんから連絡が。どうやら急に当直が入ったらしくて帰れないとのこと。謝罪の言葉に"大丈夫ですよ。お疲れ様です!"とお返事をしておく。寝る前にも送っておこう。
さて、寂雷さんがいないとなると夜ご飯を作るのが面倒になってきた。しかも今日結構な量買っちゃったし。さっきの友達とご飯を食べようかなと思っても、買い物時間を考えると彼女はもう電車に乗ってしまっただろう。無念。
うーん、と考えていると、目の前にファミリーカーが止まった。私の横を過ぎて、それを待っていたであろう家族が乗り込んでいく。あっそうだ、久しぶりにあの人達と食べようかな。
「おう、名前。久しぶりだな。」
「久しぶり。いきなりごめん、仕事中だったかな。」
「今ちょうど終わったところだ。で、どうした?」
「今日寂雷さん当直になっちゃってさ、でも買い物も沢山して…それでいま雨じゃん?これで帰るの面倒だし作るのも面倒だし、どうせなら一緒に食べたいなーって。そっちの家で。」
「うちで?」
「そう。」
「俺はいいけどよ…ちゃんと寂雷さんにも言っとけよ。今どこだ?」
「学校の近くのモール。」
「わかった、15分くらいで着く。」
時間通り車は15分でついた。後部座席のドアが開くと、よく見る顔が現れ手を伸ばしてきた。その手に大量の食料品を渡す。
「ありがと二郎、さっきぶり。」
「おう…ってお前これ相当買ったな?!すげえ重いぞ。」
「うん、家にもうだいぶなかったから。」
よいしょ、と乗り込むと次郎を挟んで向こう側に黄色いパーカーの少年が。今日はみんなで仕事だったのか。
「三郎くん久しぶり、元気?」
「こんばんは、名前さん。お陰様で。」
にっこりと笑って挨拶をしてくれる三郎くん。いい子に見えるが実は中々の曲者である。でも有難いことにこの中で曲者ぶりをうけるのは二郎だけなので笑えるもんだ。
後部座席のドアをガチャりとしめて、運転席の知り合いに拳を出すと、相手も拳を作ってコツンと当ててくれる。彼は少し昔から知り合いで、これは出会った当初から続いている決まり事みたいなもの。
「突然だったのにありがとう、一郎さん。」
「いや、俺も久しぶりに会いたかったしな。調子はどうだ?」
「普通だよ。あ、今日買ったやつ余ったらそのまま置いてくから使ってね。」
「お、サンキュな。」
「"置いてく"…?」
「一兄、名前さんは送っていくんじゃないんですか?」
「言うの忘れてたな、晩御飯は名前も一緒だ。」
「えっ」
「う、うちの家で?!」
「ビビりすぎでしょ二郎、毒なんか入れないから安心してよ。」
「そんなこと心配してねえよッ!」
「そういや二郎、お前ちゃんとリビング片しといたか?普段から片付けろって言ってるよな。」
「ハッ!ご、ごめんよ一兄…。」
「いいのにそんなん気にしなくて。」
「フン、一兄だけじゃなくて名前さんにまで迷惑かけるなんて…これだから低脳は。」
「ンだと三郎!」
「ほら二人共喧嘩すんな!」
一郎さんの一喝ですぐ大人しくなる2人。傍から見ると面白いがもう見なれてはいる。その間に寂雷さんに連絡をしておくと"一郎くんによろしくね。"と返ってきた。この2人こそ旧知の仲なのである。それについては長くなるのでまた今度話そう。
◇
山田家に着くと、とりあえず二郎だけ下りて片付けをするために先に車を降り、終わりの合図が出たら中に入ることとなった。何気に初めて家に入るなあ、と思っていると三郎くんに話しかけられる。
「そういえば、名前さんが晩御飯作ってくださるってことなんですか?」
「まあね、押しかけちゃったし。」
「おお、何作ってくれんだ?」
「とんかつとか揚げ物がいいかなと思ってる。寂雷さんとだとあんまり食べないから、どうせならと思って。」
「とんかつ…俺達も久しぶりに食べるなあ、手伝うぜ名前。」
「だめ、一郎さんはたまには休んでて。あ、三郎くんは手伝って貰ってもいい?」
「勿論です!あれ、二郎は…?」
「ダメだよあいつは、宿題やらせよ。」
程なくして二郎が呼びに来た。萬屋ヤマダの看板から雫が落ちている。雨の匂いが鼻をくすぐる。
「さて二郎は何を隠したのかな…。」
「変な事言うな!」
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