ハマの警察


帰りのHRがおわって、友達に『また明日』と言葉を交わしてから教室を出る。出る際、隣の席の二郎に『一郎さんに宜しくね。』と言うと口角を上げて手を振ってくれた。可愛い奴め、自分の兄が関わると笑顔になっちゃうんだよな。



靴箱に到着すると、なんだか騒がしいことに気づく。リュックを背負っていない生徒も結構いて、昇降口に人だかりができているから試しに人と人の隙間から見てみると、パトカーが来ていた。
まじかよ、なんか事件でもあった?まあうちの学校も有名進学校とかでもないし、ああ見えて不良の二郎もいるからワンチャンやばい奴がいてもおかしくない…のか?
ちょっと気になるけど、今日は受けている依頼を進める日にしているから仕事場に行かなきゃいけない。ワラワラと団子みたいになっている人だかりを『通ります通ります』とローファーを持って掻い潜って行く。
昇降口から校門まではそんなにないが、帰宅中の生徒もパトカーを話題にしているようだ。そらそうだわな。ったく誰が問題を…その顔を拝んでやろう、とだんだんパトカーが止まっているであろう校門に近づいていくところで私はあることに気づいた。パトカー、1台しか来てない。それに、あのウィンウィンなるサイレンも光もない。教師も出てきてないし生徒も警察官もいない。
なんかやな予感がする、なんとなくだけど当たってる気がビシバシ。パトカーが止まっていない側の校門の端に方向転換、あと数歩で敷地を出るぞ…という所でそのパトカーのドアが開いた。最悪。やっぱりそうじゃん。
出てきたのはスーツをピシッと着こなして、眼鏡をかけた細身の男。彼の目線は勿論私に向けられていた。
ほんと最悪。知らないフリして帰宅中の流れに乗ろうとするも、長い脚で先を阻まれてしまう。

「こんにちは、苗字名前さん。」
「あはは、警察の方に挨拶されちゃった。お勤めご苦労様です、失礼しま「ご同行願えますか?」ちょっとその言い方やめてくださいホント」

私を見てザワつく生徒、顔を確認しようと歩く方向を変えるヤツまででてきた。クソ!
警察眼鏡に恨みを込めた目で見るとニッコリと微笑まれ、どうぞと後ろのドアを開けられた。嫌いすぎる。嫌い。「さっさと乗った方がいいのでは。」? はい、ウザい。

「困りますこういうの。目立つじゃないですか。」
「いいじゃないですか目立っても。何も悪いことをしているわけじゃあないんですから。」
「じゃあ悪いことしたように見せる演出しないでください。」

ヨコハマ警察の文字が入ったパトカーの後部座席から、運転席の後頭部に舌を出す。「ガキくせえ真似するな。」やべ、バックミラーでバレた。

「だいたいこういうのって遅くて前日に連絡されるものですよね?私にも予定があるんですけど。」
「貴方に時前に提出してもらった予定表に何も書いていなかったじゃないですか。用事が入ったとの連絡もなかったですし。」
「だから暇なんてことはないでしょ。私だってJKですよ、分かります?JK。つまり"じゅーとさんこらしめるぞ"。」
「ハハッ、舐めてんのか?」

とりあえず寂雷さんにヨコハマにいる旨と経緯をメールしといた。今の時間は仕事中だろうし勿論既読はつかない。そしてまた舌出したり小言を言われたりしていると、ヨコハマ警察庁に到着してしまったので車を下りる。喋りすぎて少し喉乾いた、お茶飲みたい。
デカい建物に入ればまず荷物検査があるので、仕事道具を持って学校のリュックはまるごと車の中に置いていく。あんなマネして連れてこられたんだ、帰りも送ってもらうからな。



金属探知機とX線の手荷物検査が終わったので先に終えて出た誘拐犯(またの名は入間銃兎)の元にいき、続いて歩く。

「組織内の技術者が皆出払っていましてね。急な案件なので貴方に来てもらいました。」
「そんなに難しいんですか?」
「ええ、新手のシステムらしくて。」

バタバタと電話をしたり話し合いをしているヨコハマ警察庁の皆さんのデスクをとおりすぎて、端っこの方にあるガラス扉の会議室へ通された。画面の着いたノートパソコンと、押収されたであろう7本の違法マイクがテーブルの上に置かれている。今回の案件は『違法改造マイクの売人の押し入り回収』で、私がやることは回収したやつの内部構造破壊、軽度のものであれば調整して警察用に回す、という感じ。
席に座ってマイクを1本手に取り、とりあえず仕掛けを探る。

「出来そうですか?」
「うーん、今はなんとも。このマイクは同じ場所で回収したやつですか?」
「ええ、売人から。」
「ならワンチャン1本破ればいけるかな…。
その人が仲介人だと時間かかるかもしれません、システム全部違うかもなので。」
「上司には話を通してありますのでここは好きに使っていただいてどうぞ。後で飲み物を持ってきますね。何がいいですか?」
「Dr.Sugar!」
「はい、お茶ですね。」

クソ!