『兄上…』
『どこにおられますか』
『兄上ー…』

「う…」
「あ…気がつきましたか?」
「ここは…」
「医務室です!」
「具合はどうですか?」

「なんとか大丈夫です…」
「よかった…」
「それより、巻物は…」
「これのことですか?」
「中は見てないので安心してください」

「ありがとうございます…」
「よかったら、これに着替えてください」
「ずっとドクタケ忍者のままだと気分悪いでしょう?」

「そうですね…」
「私達、伊作先輩のところに行ってきますね」
「小鈴さんが目を覚ましたこと伝えなくちゃ!」

「ふぅ…」

『違う…お前の本名は松葉鈴…マツバ城城主、松葉秋嗣様の娘だ』

「父上…」

「小鈴…!」
「り、利吉さん?どうして…」
「乱太郎達から聞いてな…体調は?」
「…もう大丈夫です」
「青白い顔してよく言う…」

「…なに見てたんだ?」
「マツバ城の家系図です…父上が…蓮之介さんが譲ってくださいました」
「マツバ城か…」
「利吉さんはどこから知っていたんですか…」
「…お前が蓮之介さんに連れられてきたあの日からかな。お前が実の妹じゃないことも理解してた…」

「なぜ、私の名前は変わってしまったのでしょうか…」
「…これは父上の推測だが、マツバ城がカキツバタ城に攻め込まれたあの日。蓮之介さんが小鈴の護衛をしていたのではと仰っていた。そして、追手から逃れるためにうちまで来て、お前の名前を改ざんしたんだ…音無小鈴とな」
「山田家に頼るくらいなら、カキツバタ城に明け渡してしまえばよかったのに…」

「小鈴、蓮之介さんの気持ちを無駄にするな」
「…っ」
「お前を命懸けで守ったのに…否定されては浮かばれない」
「…ごめんなさい。でも…」
「正直、蓮之介さんがどんな思いでお前を救い出したのかは分からないが…父を頼ったことは確かだ」

「後悔しているか?くノ一になったこと…」
「…いいえ、後悔してません。私に忍術を教えてくださったのは伝蔵さんです。生きる術を与えてくださって感謝しています」
「ならいいじゃないか…」
「…でも、山田家にまで迷惑をかけるくらいなら…!…放っておいてほしかった…」
「迷惑だなんて思っちゃいないさ…ただ、勝手に出ていくなと言っただけで…」

「私も父上も…母上だって、お前を家族のように思っていたよ」
「赤の他人なのに…?!血が繋がっていないのに、よく家族だなんて…」
「…そんなに拗ねるなら、本当の家族になればいいじゃないか」
「本当の…」
「母上だってそのつもりで、私とお前を引き合わせようとしたんじゃないかな」

「でも…それはおばさまのご意向ですよね…利吉さんの気持ちを踏み躙っています」
「私は構わないって言ってるだろう?」
「それはおばさまに言われたからでしょう?」
「違う」
「え…」

「母上は関係ない…これは私の意思だ」
「…うそだ」
「今までは妹としてしか見れなかったが、漸く気づいたんだ」
「そんな…」
「もう一度、お前の笑顔が見たいと…私が一番守り通したい存在だったのだと」

「うそです」
「…お前がいなくなって、思い知ったんだ。小鈴…」
「う」
「私と、めおとになってくれないか…お前が落ち着いたらでいいから…」
「うそだって言ってください…」

「本当だって言ったらどうする?」
「うぅ…でも、私には姫様が」
「勿論、姫様を見届けたらでいいから…逃げないでくれ…な?」

「…ところで。いつまでそこにいるのかな、立花くん」
「えっ…」
「…申し訳ありません。小鈴の護衛を任されたもので」
「ぼ、僕は診察に…」
「私達は付き添いに…」

「も、もしかして今の…」
「み、見てません!なにも見てません!利吉さんが小鈴さんを押し倒してたところなんて!」
「…そうか。それじゃ、後はよろしく頼むよ」

「小鈴…」
「は、はい…」
「さっきの返事は今度でいいから…ゆっくり考えてくれ」

「立花くん…相手が君で良かったよ」
「…」
「安心して任せられる」


戻る 次へ
トップページに戻る