「姫様と入れ替わる?!」
「そうです。私が囮になって、神鏡を処分して参ります」
「処分っていったってどうやって…」

「鏡の存在が消えるよう願えば良いのです…」
「そんなもったいない!姫様が手放すのならわしが貰い受ける!」
「妾だって譲ったつもりはない!」

「こうして争いが起こるから問題なんです…この鏡が叶えられる願い事は一つだけ。誰かの願い事を叶えるくらいなら鏡を封印させましょう。そうすれば、争いもなくなります」
「むぅ…確かに」
「でも、どうやって封印させるの?」
「…立花くん、クロツルバミ城から奪い取ってきた巻物はありますか?」
「学園長先生に預けているが…」

「これのことですかな?」
「お借り致します…」
「これは…」
「そう…これには神鏡の使用方法が記されているんです。鏡を発動させるには、雷鳴の丘に聳え立つ御神木を中心に五芒星の結界を張り、術者の血液を与える。そして、祝詞を唱え、神獣を目覚めさせれば願いが叶う…」
「神獣…?」

「神鏡の主…といったところでしょうか。鏡の中に麒麟の魂が眠っているそうです」
「麒麟って…」
「そいつが神力の正体…ということか?」
「そのようです。マツバ城の歴史に、歩き巫女の神話が刻まれていました…」
「歩き巫女…?」

「この神鏡は今から百年前。マツバ城に歩き巫女が訪れ、託したそうです。双子の姉を封じ込めてあるからこの地で清めてほしいと…」
「双子の姉…?」
「歩き巫女の生まれ故郷では妖怪が出没していました。神通力を持っていた双子の姉は妖怪を退治していましたが、神の使いと言われている麒麟には手を出せず…その身を喰われてしまったというのです。双子の妹は村に祀ってあった鏡で麒麟を封印したのですが、村は災害に見舞われ滅んでしまったそうです。それが、姉の神通力と麒麟の神力が衝突している原因だと恐れた双子の妹は歩き巫女となり、浄化を試みたそうです。しかし、双子の妹は姉ほど神通力を備えておらず神力は膨張していく一方。それが、時代を経て願いを叶える神話となったのでしょう。後に歩き巫女がマツバ城に魅入られ、松葉五十鈴を産み落としたことは余談にしかすぎませんが、麒麟と共に眠っている姉の魂が目覚める条件は双子の産声です。私達がこの世に生を授かったあの時から封印が解け、鏡に魂が宿ります。そして、その身を捧げることで願いが届く」
「…覚悟の上じゃ」
「必要ありません…」

「私が変わりに引き受けます…」
「ふ、ふざけるな!これは妾の役目じゃ!お主にできるわけがない!」
「私でも問題ないはずです。だって、私たちは双子なのですから…」
「こんな時ばかり血縁者を言いわけにするな!妾はそんなこと望んでおらぬ!」
「血縁者である前に、私はカキツバタ城のくノ一です。姫様のお命を守る義務があります」

「そんな義務を負うくらいなら解雇すると言ったじゃろう!」
「構いません。これが最後の仕事になりますから…」
「最後じゃと…?!お主だってくノ一の前に一人の娘じゃ!幸せになる義務があろうに!」
「お気持ちは有り難いですが…今の私はカキツバタ城のくノ一です。姫様に拾われたこの命は貴女様の為に使いたい…ただ、それだけです」
「…っ、小鈴の愚か者」


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