「さ、姫様…もう寝ましょう」
「嫌じゃ、お主と離れとうない」
「私もお側にいますから…お休みしましょう」
「善法寺くん、医務室お借りしてよろしいですか」
「六年長屋の空き部屋ですが、姫様には別室をご用意してあります。ご案内しますね」
「お願いします」
「足、大丈夫ですか?」
「ええ、なんとか…」
「怪我してるのか?」
「実は足を痛めてしまって…」
「早よ言え!」
「ほんっとうに鈍臭い奴じゃの!」
「申し訳ございません…」
「やはりお主は忍者に向いておらん!くノ一なんかやめてしまえ!」
「ご冗談を」
「何故そこまでこだわる?!」
「私には忍術しか残っていないんです…」
「…なんじゃと?」
「くノ一になったからこそ巡り会えた縁があります…なかったことにはしたくないんです」
「妾より忍術学園の方が大事だと申すのか」
「姫様…」
「妾だけではない…マツバ城より、忍術学園の方が…」
「私が生きているのは善法寺くんのお陰です…彼がいなかったら、姫様とも再会できませんでした…」
「小鈴さん…」
「善法寺くんには感謝してもしきれません…忍術学園に恩返しをしたいくらいなんです…」
「ならば、神鏡を使えば良い…忍術学園に譲ることを許可する。だから妾が儀式を…」
「なりません」
「何故じゃ!」
「私から神鏡を奪って、姫様が犠牲になるおつもりでしょう?貴女様を利用したくないのです…」
「お主が犠牲になっても意味ないじゃろう!」
「私には意味のあることです…」
「勘違いも甚だしい!」
「勘違いだとしても…くノ一として、姫様をお守りすることができるのですから冥利につきるではありませんか」
「どこまで愚か者なんじゃ…」
「恐縮です」
「褒めておらぬ!」
「保健委員会委員長殿!其方からもなにか申してやれ!この愚か者に!」
「ぼ、僕がですか…?!」
「姫様、善法寺くんを巻き込まないでくださいまし。困っておいでですよ」
「ええっと…とりあえず、部屋に戻りましょうか。外にいると危ないですし…」
「そうですね…さ、姫様…参りますよ」
「こちらです」
「お邪魔します…」
「小鈴さんも気をつけてくださいね…いつクロツルバミ城が狙ってくるか分かりませんから…」
「はい…」
「後で護衛をつけますが、なにかあったらすぐに呼んでください」
「ふぅ…」
「今日は冷えるの…」
「…よかったら私の掛け布団をお使いください」
「いらぬ」
「え…」
「お主がいてくれたらそれでいい」
「姫様…」
「こっちに来い」
「…失礼致します」
「鈴はぬくいのう…」
「姫様…今なんと」
「姫様じゃのうて妾は凛じゃ…姉上でよいぞ」
「いえ、しかし…」
「ほれ」
「うぅ…」
「あね、うえ…」
「うん?」
「あねうえ…」
「なんじゃ?」
「…姉上はいつから私だと気づいていたのですか」
「勿論最初からじゃ。鈴とはじめて出会ったあの時から違和感を感じておった」
「…私もです」
「やはりな」
「もっと早く出会いたかったがな…」
「そうですね…」
「家族として…ちゃんと向き合いたかった」
「家族…」
「すぅ…」
「家族、か…」
「何奴」
「私だ」
「立花くんでしたか…」
「姫様は?」
「ぐっすり眠っています」
「そうか…」
「あの、立花くん…」
「ん?」
「先ほどはすみませんでした。姫様が失礼なことを…」
「ああ…婿がどうのとか言ってたことか?」
「そうです…」
「いや、気にするな…と言いたいところだが」
「え…おわ」
「…利吉さんにはもう返事したのか」
「へ…」
「…この間求婚されてただろう」
「ま、まだですが…」
「…なんて返すつもりだ」
「ゆっくり考えろと言われたのですが…」
「ああ…」
「お断りするつもりです」
「…そうか」
「利吉さんのことは兄上としか見れませんし…」
「じゃあ、私のことは…?」
「え…」
「お前にとって私は…どんな存在だ」
「どんな…って」
「…すまん。追い詰めすぎた」
「あ、あの…今のってどういう…」
「…気にするな。早く寝ろ」
「そ、そう言われましても…」
「おやすみ」
「強制終了…!」
「私にとって、お前は…」
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