「う…」

ふと目を覚ますと見知らぬ天井が視界に広がった。ゆっくりと体を起こすとずきりと痛む傷口。傷口を見てみると真っ白な包帯が巻かれていたのだ。

「ここは…」

清潔な包帯で、まだそう時間は経っていない。一体誰が手当してくれたのだろうか。そう傷口を押さえながらふらりと立ち上がり、布団を抜け出す。障子に手を伸ばし、外に出ると月が昇っていた。

「何奴…!」

今夜は満月だ。月の光を頼りに辺りを警戒しながら廊下を進んでいると前方から手裏剣が飛んできた。咄嗟に躱し、懐に手を突っ込むが苦無がー…ない。そうはっとした女はいつもの忍び装束でないことに気づいたその時。

「離せ…!」

殺気と共に現れた男に攻撃され、押し倒された。離せともがくと手足を拘束され黙っていろと冷たい金属を首元に突きつけられる。このまま殺されてしまうのだろうかー…。そう目を瞑るとゆっくり流れていく雲。

「お前だったか…」

雲から顔を出した満月の明かりで、娘の顔を確認したのだろうか。男はそっと体を起こし娘を解放した。

「…今、伊作を呼んでくる。お前は先ほどの部屋で待っていろ」

娘の首元に突きつけていた苦無をしまい、そう指示を出した男の顔立ちはまだ若くー…青年のようにも見える。しかし、くるりと背を向けてこの場から立ち去った男の後ろ姿を見つめていた娘は内心、腰が抜けていたらしい。暫く、立ち上がることができなかった。


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