02.すれ違いの邂逅

そうしてコレットと別れて、カーノがそろそろ帰ろうかと2人に言うと、ジーニアスが待ったをかけた。

「ロイド、まだ宿題終わってないでしょ? 出して帰らないと、また姉さんに叱られるよ」

「げ、そーだった!」

「またお前は……」

宿題は家でやるから宿題って言うんだぞ? と言うと、ロイドが悪い悪いと軽い調子で返す。
こんなやり取りは日常茶飯事なので毎回怒る気にもならず、大抵はこんな感じで流す。

まぁ俺が怒らずとも、後々優秀な担任から指導されるのだろうがと、いつもロイドが世話になっている女性教師を思い浮かべて、心の中でその苦労を労った。

「で、どのくらいかかるんだ?」

「結構長くなるんじゃないかな。殆ど白紙だったし」

「だってさ。兄貴どうする?」

暫く考えて、村ですることも思い付かなかったので、一度家に戻ることに決めた。

「じゃあまた後で迎えに来るから、勝手にあちこち行くんじゃないぞ?」

「あのなぁ、俺だってもう子供じゃないんだから……」

「バーカ、まだ子供だよ」

髪のかかっていない剥き出しの額を中指と親指で弾くと、相手は不服そうな顔をして反論した。
それをはいはいと聞き流しながら、強制的に回れ右をさせて学校の方へと向かわせる。
渋々それに従うロイドとジーニアスを見送って、自分はその反対、村の出口へと向かった。





昼間の騒ぎはまだ収まらず、いつもならそろそろ仕事を切り上げ家に帰っている人々も、今日は道のあちこちに小さな円をつくってしきりに話している。
その横を通り過ぎながら帰路を辿っていると、丁度家から出てきたコレットと出くわした。

「あれ、カーノさん」

今日は何だかよく会いますねと言う少女に同意し、足を止め向き直る。
するとコレットは直ぐに辺りをキョロキョロと見回して、いつも一緒に居る人物の姿が見当たらないことに気付いた。

「ロイドは……一緒じゃないんですか?」

「ああ、なんか宿題が終わってないからって、ジーニアスと一緒に学校に残ってるよ。時間かかるみたいだから、一旦帰っとこうと思って」

「そうなんですか」

全くあいつはとぼやくと、コレットはいつもロイド達と居る時のように楽しそうに笑った。
当分この笑顔を見ることが出来なくなると思うと結構寂しいもんだなと、世界の命運を託された小さな少女を名残惜し気に見下ろして、その姿を目に焼き付けた。

すると再び、コレットの家の扉が小さく音を立てて開き、中から誰かが出てきた。
無意識に反応してそちらを見れば、現れたのは記憶に新しい人物で。
まだ居たのか? あぁ、そういえば護衛なんだったなと、数時間前のファイドラの提案によりその任についた男を見た。

クラトスと名乗ったその男は、昼間と変わらぬ格好と表情で、後ろ手にドアを閉めた。
そして二人の存在に気付くと、ゆっくりとその足を踏み出した。

が、その足は何故かカーノ達の元に辿り着く前に、前進を止めてしまった。

「……?」

その行動の意味が解らず、どうしたのかと目で問うと、クラトスは何やら困った、或いは気まずそうな顔を返してきた。
その反応にますます訳がわからなくなったカーノは隣に居るコレットを見た。だが彼女も不思議そうにクラトスを見るだけである。

こうして彼らは2人揃って頭に疑問符を浮かべることとなるのだが、それは今し方足を止めたクラトスとて同じ事だった。
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