03.償いの旅立ち

「それじゃ、行ってくるわね」

時は流れいよいよ出立の時刻になり、コレットやクラトスと合流し3人となった神子一行は村人に見送られながら村を後にする。

「あの、カーノさん、お願いがあるんですけど……」

結局あいつ間に合わなかったな、とカーノが家で眠る弟の姿を思い浮かべていると、リフィルの後ろを着いていく筈のコレットが歩み寄って来た。

「どうした?」

「これを……ロイドに渡して貰えませんか?」

そう言って、手渡されたのは白い封筒。
受け取って見てみると、それには可愛らしい筆跡でコレットとロイドの名が綴られていた。

それがロイド宛の手紙だと理解したカーノは、中身を確認する事なく懐にしまった。

「分かった、必ず届けるよ」

それを聞いたコレットは、安心したように顔の筋肉を緩め、有難う御座いますと一礼してからリフィルの元へ駆けていった。そしてその後にクラトスが続く。

そうして3人の姿が見えなくなったのを確認してから、カーノは託された手紙を届けるため、また家へと戻った。






目的地に着くと、やっと目を覚ましたらしいロイドが墓の前に立っていた。
その背には何故か荷物が背負われており、声をかけると異様に慌てられたが、それについて言及するより先に、先程少女から預かったものを手渡す。

「何だこれ? 手紙? ……コレットから?」

封筒に書かれた文字を見つけたロイドが首を傾げる。
自分も内容を知らない為、経緯だけを説明。

「……で、それは出ていく直前に渡されたんだが……まさか知らなかったのか?」

説明していた間にどんどん顔色を変えていったロイドに確信に近いものを感じながらも、一応疑問系で締め括ると、相手は肩にかけていた荷物袋を地面に落とした。

それは分かりやすく「知らなかった」と示していて、カーノは内心でロイドに同情しつつ、コレットに少し感謝し、彼女が書いたと思われる手紙の内容を予想した。

そこにはきっとこう書かれているのだろう、宛先と同じ筆跡で、「ごめんなさい」と。

(……道理で起きてこないわけだな)

知らなかったという事は、ロイドはあくまで旅に着いていくつもりだったのだろう。地面に横たわっている荷物がその証拠だ。

そして少女はそんなロイドの性格を知っていて、それでも彼を危険な旅に連れていきたくなかったのだろう。だからこそ真実を告げずに旅立ち、代わりに手紙を残したのだ。

自分で伝える事の出来ない謝罪と、いつも無謀なことばかりする相手が1人で追って来ないように制止させる言葉を文字にして。

「どういうことだよ……コレットは昼に出発って……」

「……とりあえずそれ、読んだらどうだ?」

呆然としながら呟くロイドに、やっぱりなと思いながらカーノはそう促す。

ロイドは言われるがまま封を切って中身を取り出し、その文面に視線を走らせた。
そうして読み終わると、何も言わず手紙を握り締めた。

「ロイドっ、ロイドー!!」

そんな相手にさてどうしようかと考え始めた時、森の中から騒々しくジーニアスが駆け込んできた。ロイドも落としていた視線をそちらに向ける。

「あ、カーノも一緒だったんだ! 2人共早く来て! 大変なんだ!!」

「落ち着け。どうしたんだ?」

尋常ではない相手の慌てように、状況を把握しきれないカーノが訊ねる。
すると小さな口から出てきたのは、全く予測していなかったものだった。

「ディザイアンが村に攻め込んで来たんだ!!」


それを聞いた瞬間、カーノの心臓は大きく跳ねた。


「………ジーニアス、嘘じゃないよな?」

「こんな嘘吐かないよ!!」

普段ならもっと上手く返してくる筈の小さな秀才が、今は最低限の返事だけ返すと後は同じ言葉を繰り返してくる。

「……わかった、すぐ行く」

その有り様に、ジーニアスの言っている事が本当だと判断した彼は、冗談じゃないと心の中で悪態を吐いて直ぐ様走り出した。

何時もならここで、弟の安全を考え家で待機するように指示するのだが、完全に動揺状態だった為にそれも忘れて、カーノはひたすらに足を動かした。
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