03.償いの旅立ち
そうして辿り着いた村の様子は悲惨なものだった。あちこちの家からは炎が上がり、ついさっきまで笑い合っていた人々は悲鳴を上げ逃げ惑う。
逆らう者は居なかったようで、死傷者が居ない事は不幸中の幸いだったが、村はもはや壊滅寸前だった。
その光景にしばらく愕然としていたが、家から追い出された女性の叫び声に反応し、3人は素早くその救出に向かう。
暴行を加えようとしていたディザイアンをロイドが斬り倒し、カーノとジーニアスは女性に駆け寄る。
その腕には赤ん坊が抱かれており、泣き叫ぶそれを見て歯を軋ませた。
そのまま親子を背に庇いながら村の中心へ向かうと、ディザイアンに連れてこられた村人達が集まっていた。
先頭には村長が、その向かいには敵側のリーダーと思われる男が仁王立ちをしており、カーノ達が現れると皆の視線が一斉に突き刺さった。
「……貴様がロイド=アーヴィングか?」
早速名指しで弟を呼ばれ、驚き後ろに居る人物を振り返る。
なんでディザイアンがロイドの名を知ってるんだ。
「我が名はフォシテス! ディザイアンが五聖刃の1人! 優良種たるハーフエルフとして、愚劣な人間共を培養するファームの主!」
相手の沈黙を肯定と受け取ったフォシテスが声を轟かせる。
狙いがロイドだと解ったカーノは、半歩前に出て相手と対峙した。
「こいつに何の用だ」
「誰だ貴様は? 我らが目的はそこに居る小僧1人だ。関係の無い者は下がっていろ!」
語調を強くしてフォシテスが手を前に出すと、背後から巨大な怪物が出現する。
渋い緑色の体に長い腕、その先にある手には牙のように鋭い爪。
顔と思われる場所には大きな目のようなものが1つだけ付いていた。
「…………っ!!」
その姿に動揺していたカーノは、降り下ろされた掌をギリギリで躱して間合いを図る。
周りに居る村人に攻撃が当たらないよう配慮しながら、次々と繰り出される攻撃を避け始めた。
「兄貴っ!」
「来るなロイド!」
それを見ていたロイドは加勢しようと剣に手をかけたが、兄に制止され動きを止める。
敵の狙いがロイドである以上、この場からなるべく離れさせておきたいというのが兄の思いだった。
もういっそのこと逃げて貰いたいくらいだが、言ったところで従いはしないだろうなと口に出すこと無く敵に向き直る。
(さて、どうする……)
暴れまわる怪物を目で追い、ある程度の距離を保ちながら、事態を収束させる為にカーノは頭を働かせる。
相手は巨体の為か動きが鈍く、攻撃を見極めるのは容易かったが、その分リーチが長く避けづらくもあった。
しかも疲労を知らないのか、先程から動きが全く鈍っていない。自分も今はまだ余裕があるが、長引けば不利になるのは此方だろう。
ならば早々に片付けるしかないと、彼は反撃に移るべく背中に手を伸ばした。
そこにはいつも愛用、という程連日使っている訳ではないが、危機を何度も救ってくれた相棒とも言える銃が背負われている筈だった。
だがその手は、何にも触れる事無く虚しく空を切った。