05.海鳥は渡り往く
「や、やっと着いた…」移動時間だけで色々あったが、兎も角カーノ達は目的地に到達した。
先頭を歩いていたロイドやジーニアスはその場に座り込もうとするが、その前にやることがあるだろうと強制的に歩かされた。
峠には先に続く道を守る関所と民家が1つだけ存在しており、探し人の姿が見当たらなかったので一行は取り敢えず民家に入り話を聞く事にした。
コレットの話によると、自分達の偽物は総督から騙し取った書物を此処に居る老人に売り飛ばすと言っていたらしく、姿が無い事を考えると既に明け渡してしまった後なのだろうと予想された。
ならばそれをまた奪い返せばいいというのが皆の考えであり、それを実行すべく民家の戸を叩いた。
そこには確かに老人が住んでいて、室内にはガラクタにも見える雑貨の数々が並んでいた。
通行証が欲しいのならと法外な値段を提示する老人に呆れつつ、違うと返して置いてあった紙の束をカーノが指す。
「それは元々こちらの物なんですが……譲っては貰えないでしょうか?」
なるべく気に障らないようにと穏やかな声で言うも、老人は金を出して買ったのだからとそれを拒んだ。
しかしそれでは困るのだとコレットが頼むと、見るだけならいいと譲歩してくれた。更にリフィルにもそれを許可してくれだが優しさはそこまでで、残った男4人は閉め出される。
再生の書は天使言語という特殊な文字で綴られているらしいので、どうせ自分が読んだところで意味もないから良いか、とカーノはコレットが書を読み終えるのを大人しく待った。
書に記された内容は、封印についてのヒントだった。回りくどい言い回しだったので少し解りにくかったが、頭脳明晰なリフィルは充分だとそれを持ち主に返した。
「良かったんですか? 返して」
「内容は解ったのだし、問題ないでしょう」
さ、行きましょうかと家を出るリフィルに頼もしいなと感じつつ外へ出ると、来たときより僅かに多くなった人々が何やらざわついていた。
峠の入り口で立ち往生している人に話しかけると、相手は脅えた様子で言った。
「ディザイアンたちが、パルマコスタへ向かったらしいんです!」
おかげで帰るに帰れないと愚痴る相手に、カーノはワインを売ってくれた女性を思いだし青ざめた。
「このままじゃ、彼処もイセリアみたいになっちまう!」
急いで戻ろう! と迷うことなく町へ引き返すロイドに、カーノも走り出す。
やはりあの彼女の対応はまずかったなと、勇ましく悪人に言い返していた女性の安否を心配する。
が、クラトスに腕を掴まれ、前に傾いていた体は勢いを殺され静止した。
何だと顔だけ動かして相手を見れば、いつもと変わらぬ表情のクラトスと目が合う。
「また寄り道か? 次の封印の場所は判ったのだぞ」
あくまで合理的に動こうとするクラトスに頭で共感しつつも、思い出の中の人とダブらせてしまった彼女をどうしても見捨てる事が出来ず、その手を振り払う。
「……悪い、振り回して」
そして短くそれだけ言うと、カーノは遠ざかる赤い背中を追いかけて行った。
クラトスはその背に「甘いな」と呟きを漏らし、仲間に遅れて自らも駆け出し峠を後にした。