03.悲しみと引換の活路
「2人はどこだ!」アルベドのホームにティーダの声が木霊する。
ホーム内部ではアルベド族が魔物と戦っていたが、その数に圧されつつあった。
機械は破壊され、あちこちから出火している。
「ケヤック! 誰!? 誰がこんなことしたの!? トホッセチサオマガエ?」
「エボン……グアド……」
「ケヤック!? ケヤック!」
倒れていたアルベド族の男は、リュックの呼びかけにそれだけ答えると静かになった。
リュックが諦めて体から手を離す。
「エボンとアルベドの戦争……?」
「ホフギャメネ! グアドオマネミマ、ショウカンシガ」
「トタギ……」
野太い声と共にやってきた丸刈りの男は、ケヤックの亡骸に黙祷するとティーダ達のほうを向く。
「テメエらリュックのダチか? ちょうどいい、手ぇ貸せ! ホームに入り込んだグアド族を叩き出すぞ!」
「誰?」
さっさと走り出す相手に、ティーダがリュックに尋ねる。
「シド。アルベド族の親分で……あたしのオヤジ」
「行こう」
「うん。ユウナとユノ、助けなくちゃ」
「2人だけじゃないだろ!」
力強いティーダの言葉に、リュックが大きく頷いた。
2人と、そしてアルベド族を助けるために一行は魔物の蔓延る内部へと突入する。
「ユウナ! どこだ!」
「グアドの奴ら、やりすぎだろ、これ」
積み重なる死体、飛散した血、粉々になった機械。
あまりに惨いその有様を見て、ワッカでさえ嫌悪を露にした。
「ひどいよ……」
「ルホッサエ! リューック! チミセウア!? トヤネサヒコヒアシシデノ! ホームムザルアヌウ! マモノゾソ、クッソザヌ!」
「うそぉ!?」
「通訳!」
「とにかく地下に避難!」
「ユノはどこだ?」
「たぶん召喚士の部屋。こっち!」
何を聞いたのかシドの言葉に驚きつつ、リュックは手招きして下へ続く階段を下りる。
そこも状況は同じで、ワッカが半壊状態のホームを見たままの感想を漏らす。
「ここはもうダメだな……」
「そだね……ダメだね……。アルベド族には故郷がなかったんだ、昔住んでたところは、シンにやられちゃったからね。一族はバラバラになって、あちこちで暮らしてた。でも、オヤジが一族を呼び寄せたんだ。力を合わせて新しい故郷を創ろうってね。……上手くいってたんだよ、みんな、頑張ってたんだよ」
うつむくリュックの声が震えて上擦った。それでも涙は見せまいと懸命に歯を食いしばる。
「なのに……どうして、こんなんなっちゃうかなあ……」
「リュック……、チッ! 好き勝手に暴れやがって! グアドは何がしてえんだ!?」
「ねえリュック、召喚士の部屋って何?」
「アルベドは召喚士を保護してるの、死なせたくないから」
「んで、拐ったってワケか」
「うん。分かってもらえないかもしれないけど……」
「理屈は分かるけどよ……」
「オレはイマイチ分かんないんだよな。旅で死ぬかもしれないからって、誘拐はやりすぎじゃないか? だって召喚士が旅をしないとシンは倒せないんだろ? 心配なのは分かるけどガードも付いてるしさ、ガードがしっかり護っとけば召喚士は死なないって! なあ?」
ティーダのその言葉に、頷くものは居なかった。皆暗い面持ちで下を向いたまま黙秘する。
不安になってもう一度聞くが、それに答えてくれるものは居なかった。
長い長い沈黙の後、キマリが動き出す。
他の仲間たちも何も言わずにその後ろをついていく。
ティーダはただ立ち尽くしていた。
「お願い、2人ともここに居て!」
バン! と開け放たれたドアの向こう、薄明かりに照らされた室内に一行が駆け込む。
「ユウナ!」
「ユノ!」
「ここにはいないわ」
部屋の中には戦いの傷跡と、アルベド族の遺体が散らばっていた。
その中に立っていたドナがそう返す。
「久しぶりね。だけど、話は異界送りが済むまで待って」
「彼らは……僕らを護って犠牲になった。せめて僕らの手で送らねば、申し訳が立たない」
室内に居たもう1人の生存者であるイサールが、ドナと共に異界送りを始めた。
亡骸から幻光虫が現れて、ゆっくりと天へ昇っていく。
イサールのガードの少年が、ティーダの足元にやって来た。
「ねえ……イケニエって何? 召喚士はイケニエだって、アルベドの人が言ってたんだ。召喚士は旅をやめなきゃいけないんだって」
「召喚士のことはガードに任せろよ……無理やり旅をやめさせるなんてさあ……」
「やめなきゃダメなんだよ! このまま旅を続けて……ザナルカンドに行って……シンをやっつけても……その時、2人は……!」
リュックが怒声か、はたまた悲鳴に近い大声を上げて抗議する。
ティーダに向かって、辛そうに必死に叫んだ。