05.夢の跡 君は彼方へ

「おーい、ユノーっ!」

穏やかなビサイドの島に、リュックの元気な声が響く。

船に続く桟橋を歩いていたユノは、その声に足を止めた。

「もう行くのー?」

「うん、あんまり長居するのも悪いから」

「そんなの気にしなくていいのに〜」

「お前が言うな!」

続いてやって来たワッカが、リュックの頭を小突く。

「でも、本当に気にしなくていいんだぞ? ゆっくりしていけよ」

「ありがとうございます。でも、大丈夫です。お2人の邪魔は、したくないですから」

「おっ? 言うねぇ〜! ほら、ユノがせっかく気きかせてくれるんだから、頑張りなよワッカ!」

「うるせぇ! ルーには、今日ちゃんと言うっつの!」

「頑張ってくださいね」

「おう! ……お前も、頑張れよ!」

「はい」

「キーリカに帰るのはいいんだけどさ、帰ってどーすんの?」

「えっと、一応、島の復興の手伝いとか、出来たらいいなって……」

「島に帰っちゃったら、大召喚士様だー! って囲まれちゃって、そんなこと出来ないんじゃない?」

「ああ、今のユウナがそれだもんなぁ……」

「ねぇ、やっぱりユノも一緒にスフィアハンターやろうよ〜! 絶対そっちのほうが楽しいって!」

「でも、キーリカの奴らはユノが帰ってくるのを待ってるんじゃねぇか?」

「そんなの関係ないじゃん! ユノがどうしたいかだよ!」

「えっと、俺は……今はやっぱり、島に居たい、かな。ごめんね、リュック」

「むー。まあ、ユノがそうしたいなら、それでいいんだけどさ」

不満げに口を尖らせるリュックに、ユノは有難うと微笑む。
その背後で船の汽笛が上がって、ユノは床に下ろしていた荷物を持ち直した。

「それじゃあ、そろそろ行きます。ユウナとルールーさんとキマリさんに、よろしくお願いします」

「おう! 気をつけてな」

「また遊びに行くからねー!」

手を振る2人にぺこりと会釈して、小走りでキーリカ島行きの船に乗り込む。

船室に荷物を置いて甲板に出ると、潮風が髪を揺らした。
スフィアを太陽に翳すと、まるで鏡のように光を乱反射して輝く。

海は今日も変わらず、ただ静かに目の前に蒼く広がっていて。
こちらの気分などお構いなしに変化のないそれは相変わらず、好きになれそうにはないけれど。

それでもこれは、あの人が護ったうちの1つだから。


「……今度は、俺が護るよ」


貴方が護ったこの世界を

貴方が遺したこの絆を

貴方が作ったこの時間を

貴方が救ってくれたこの命で



「生きる覚悟──ですよね」


悲しさを押し込めたぎこちない笑みで、それでも真っ直ぐに顔を上げて空を見る。

一際強い風が、応えるように吹き抜けた。





これは8人の男女らが見た、淡く儚い明晰夢────












this story is the end,

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